第1005話。へっぽこ軍団の終末世界旅行…6…あり得ない世界線。
本日2話目の投稿です。
【ポスト・アポカリプティック・ワールド】……改め【ドゥーム】の【ロヴィーナ】勢力圏にある【渓谷の町の遺構】。
ソフィアはバイパー小隊と邂逅を果たしました。
そして、この地が現地人種から【ドゥーム】と呼ばれている世界だと知らされたのです。
ソフィアは、バイパー小隊の隊長オックスフォード中尉から【ドゥーム】の基本的な情報を得ました。
【ドゥーム】は【終末後の世界】というコンセプトの【隠しマップ】です。
【ドゥーム】の人種は災厄と呼ばれる環境破壊と、その後に起きた人種同士の世界最終戦争によって人口が激減していました。
現在は【ロヴィーナ】、【カラミータ】、【ディストゥルツィオーネ】と呼ばれる3つのシェルターが半ば都市国家として残るだけの滅亡しかけた文明だったのです。
災厄とは何なのか?また何故起きたのか?は、オックスフォード中尉達や一般市民達は良く知らないのだとか。
大昔に何らかの異変が起きて砂漠化と自然界の水が消失してしまった事は知っていますが、それ以上の事は指導部と呼ばれる王家を中心とした者達でなければ教えてもらえないのだそうです。
それを調べる為にも、また【ロヴィーナ】の指導部と会談して【秘跡】クリアの為の協力を得る為にも、ソフィアは【ロヴィーナ】に向かう事にしました。
現在地の【渓谷の町の遺構】から【強化外骨格】の【リフリジレイター】による巡航速度で丸3日の距離に【ロヴィーナ】はあるそうです。
ソフィアは速やかに現在地上空にあった【スパイ・ドローン】の【キー・ホール】をオックスフォード中尉から聞いた【ロヴィーナ】の座標に飛ばしました。
【キー・ホール】のスピードなら今日中に【ロヴィーナ】の上空に到着する筈。
【キー・ホール】が【ロヴィーナ】に到着したら、改めてソフィアの【転移】でバイパー小隊ごと【ロヴィーナ】に向かう事にしました。
そのソフィアの意向はバイパー小隊から既に【ロヴィーナ】司令部に報告され、【ロヴィーナ】の王家と指導部から……【ロヴィーナ】の王家及び全国民が畏ってお迎え致します……との返答をもらっています。
ソフィアの戦闘力を目の当たりにしたオックスフォード中尉から……ソフィア様は異界の最高神たる【神竜】様であると思われる。ソフィア様は数十頭の【サンド・ワーム】の群に加えて【超位級】の【古代竜】である【砂漠竜】の番までを全滅させてしまわれた……との情報が映像付きで報告されたので【ロヴィーナ】側の対応は、とても丁重でした。
【砂漠竜】の番は、ソフィアが【サンド・ワーム】を殲滅した後に少し離れた場所で見付けて、ついでに倒したのです。
2頭の【古代竜】でさえ歯牙にも掛けず瞬殺してしまうソフィアに、バイパー小隊は唖然としていました。
ソフィアは拠点のティアに指示して、現在地から東北東、拠点から見て北にあるという【カラミータ】と呼ばれるシェルターと、東の果てにあるという【ディストゥルツィオーネ】と呼ばれるシェルターに向けて【キー・ホール】を飛ばしています。
正確な位置座標はオックスフォード中尉から聞きました。
今夜か明朝には東の果ての【ディストゥルツィオーネ】まで、明日の昼前には【カラミータ】まで、それぞれ【キー・ホール】が到着する予定です。
拠点からの距離的には東の果ての【ディストゥルツィオーネ】の方が遠いのですが、ソフィアは昨日の段階で真東に向かって【キー・ホール】を1機飛ばしていたので、到着は【ディストゥルツィオーネ】の方が早くなりました。
ソフィアの第一の目標は、現在文明の滅亡の淵に立たされている【ドゥーム】で生き延びている3つの人種コミュニティの力を糾合・結集して問題解決に当たる事です。
それが運営から発給された【秘跡】のクリア条件である……【ポスト・アポカリプティック・ワールド】(【ドゥーム】)を救え……を最も早く達成出来ると思われるからでした。
この【強制秘跡】を、あと3か月あまりのデッド・ラインまでにクリア出来ないと、この【秘跡・マップ】の【ポスト・アポカリプティック・ワールド】(【ドゥーム】)の世界そのものが崩壊して、【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】全員に死亡判定が出てしまいます。
そうなると【復活】や【バック・アップ】による復元が可能なメンバー以外……つまり生身の人種であるティアは確実に死んでしまいました。
何としても、それは避けなければいけません。
ソフィアとしては、自分の庇護管轄下にはない【ドゥーム】を救う義理はありませんが、今回は身内のティアの生命が掛かっているので、ソフィアは形振り構わず【ドゥーム】を救うつもりです。
この【秘跡】はソフィアにとって、もはや遊びなどではありません。
オックスフォード中尉らとの会談や、通信による【ロヴィーナ】との仮会談を終えたソフィアは現在、放置したままだった無数の【サンド・ワーム】の死体を回収して回っていました。
「【宝物庫】が一杯になってしまったのじゃ……。う〜む、致し方あるまい」
ソフィアは呟きます。
昨日【大平地】という【領域】で大暴れしたソフィアは、膨大な数の魔物を狩っていました。
【低位】や【中位】の魔物の死体は、その場に打ち捨てて来ましたが、価値が高い魔物は出来るだけ【宝物庫】に回収したのです。
ソフィアは……お金は幾らあっても困らない……という存外に、がめついタイプでした。
ソフィアは他者から金品を騙し盗ってやろうなどという考えは全くありませんが、自分が権利を主張出来るモノに関しては、それを無視したりはしません。
ソフィアは、沢山お金を稼いで趣味や道楽や遊興に存分に使いたいのです。
その余剰で時々行う慈善活動などにも資金が必要でした。
ソフィアが昨日狩って回収した魔物は……。
【高位級】の【サンド・ワーム】や【砂竜】や【魔蟲】などなど。
【超位級】の【砂漠・ワーム】や【砂漠竜】などなど。
その数が通常では考えられない多さだったのです。
ソフィアは魔物が濃い理由を……【秘跡】の難易度が高いからだ……と考えていました。
もちろん、それもありますが、ソフィア達【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】が【再配置】された初期エントリー地点の周辺に魔物が異常に濃かった理由は、別の意味もあったのです。
【ポスト・アポカリプティック・ワールド】の【秘跡】が初見プレイのソフィアは、それを知りません。
ソフィアは今日も大量の【サンド・ワーム】を倒して死体を回収しました。
ソフィアの手持ちの【宝物庫】は空っぽの状態でストックされていたモノも含めて全て満杯になってしまったのです。
オラクル、ヴィクトーリア……どちらか空の【宝物庫】を持って来てはくれぬか?
ソフィアは【念話】で頼みました。
私が参ります。
オラクルが【念話】で応じます。
直ぐにオラクルが【転移】して来て、ソフィアに空の【宝物庫】を3つ渡しました。
「オラクルよ。オックスフォードらは我が【転移】で【ロヴィーナ】に送る事にした故、【キー・ホール】が【ロヴィーナ】上空に着くまで、これと言ってやる事もないのじゃ。じゃから昼には、まだ随分と早いが【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】も全員合流してオックスフォードらと食事会でもしようと思うのじゃが?」
ソフィアはオラクルに相談します。
しかし、【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】の拠点にオックスフォード達を連れて行くつもりはない……狭い【避難小屋】にオックスフォード達まで入るとなると誰も座れなくなりそうじゃ……それに、ないとは思うが、我らの拠点の場所が知られると【ロヴィーナ】軍から攻撃を受ける万が一の可能性があるやもしれぬ……かと言って、こちらに合流しても、結局のところ【避難小屋】が狭い状況は変わらぬ。この地は魔物が異様に濃い。【避難小屋】の外でテーブル・セットを組んでも魔物共が頻繁にチョッカイを出して来るのでは落ち着いて食事も出来ぬ……どうしたら良いじゃろうか?
ソフィアは【念話】で訊ねました。
「ソフィア様。【神の遺物】の【装甲兵員輸送艦】をお使いになれば如何でしょうか?【装甲兵員輸送艦】の後部格納区画は、そこそに広く真ん中にテーブル・セットを固定すれば、食事会も行えましょう。【装甲兵員輸送艦】なら上空を飛ばせておけば、少なくとも飛べない魔物から襲われる事はありません」
オラクルは提案します。
「なるほど。その案を採用じゃ」
ソフィアは頷きました。
【装甲兵員輸送艦】とは、ソフィアがミネルヴァから永久貸与された【神の遺物】です。
その名の通り戦場で兵員を輸送する用途の軍用艦なので、クルー3人の他にフル装備状態の兵員がゆったり座って25人程を収容可能です。
ソフィアがミネルヴァから永久貸与(ソフィアは不老不死で不死身なので実質貰ったのと同じ)されたアイテムは【装甲兵員輸送艦】1隻の他に……。
【輸送機】1隻。
輸送力は【装甲兵員輸送艦】より少なくクルー3人の他に5人程。
ただし【装甲兵員輸送艦】より高速で搭載兵器が強力、尚且つ救急艦としても運用可能なので、座席を完全に倒して応急処置用ベッドに可変出来ます。
試作型(攻撃力ナーフ版)【スパイ・ドローン・キー・ホール】10機。
現在4機が【ドゥーム】で運用中で、残り6機は【竜城】やソフィアの会社関連の用途で使用中です。
【避難小屋】1軒。
ソフィアは合計3軒を保有していて、現在持ち歩いているのは2軒で、残りの1軒は【ドラゴニーア】の大神官アルフォンシーナ・ロマリアに貸与されていました。
【神位魔導装甲】の【ドラゴニオン】1着。
【自動人形】・シグニチャー・エディション10体。
ただしディエチは貸与品ではなく、ソフィアの所有物です。
【オリハルコン・ゴーレム】一個小隊(10機)。
……などなどがあります。
ソフィアは、それらを当初は人気子供番組……秘密戦隊スパイ・ガールズ……に倣って……スパイ七つ道具……と呼んでいましたが、番組改編期でスパイ・ガールズが終了してしまったので、ソフィアのスパイ・ガールズ・ブームも終わり、今は同じ放送枠で始まった新番組……魔女っ子パティ……がソフィアの新たなお気に入りに変わりました。
人気番組で日曜の朝早い時間帯ながら高視聴率を叩き出し15年以上も続いた秘密戦隊スパイ・ガールズが放送終了する事は、世界中の子供達(と、一部大きなお友達)に衝撃を与えましたが、スパイ・ガールズ製作サイドからすると致し方ない事情もあったのです。
何しろスパイ・ガールズは15年以上も続いた長寿番組でした。
そしてアニメではなく、実写の戦隊モノなのです。
主演陣のスパイ・ガールズ5人姉妹(もちろん劇中設定)達も、第一話では初々しいデビューしたての新人女優やアイドル達でしたが、現在では皆中堅からベテランの域に差し掛かろうかという芸歴になりました。
さすがにガールズは少し無理がある年齢になって来たのです。
スパイ・ガールズのリーダーにして5人姉妹の長女役でもあるスパイ・レッドなどは、もう四十路でした。
彼女は番組プロデューサーに……もうヒラヒラのミニスカ衣装は堪忍して下さい……と泣き付いたのです。
その気持ちは他の4人のスパイ・ガールズ達も同じでした。
番組プロデューサーは新番組……魔女っ子パティ……の第一話にスパイ・ガールズの5人姉妹を登場させ、スパイ・ガールズからパティへの正義のヒロインのバトン・タッチを行い、製作が決まった劇場版……秘密戦隊スパイ・ガールズ&魔女っ子パティ……で共演する事を条件に、スパイ・ガールズ達の卒業という名の降板を認めたのです。
……などという話は、ど〜でも良い蛇足でした。
閑話休題。
ソフィアは【宝物庫】に全ての【サンド・ワーム】の死体を回収してしまいます。
バイパー小隊のメンバーが苦笑いのような微妙な表情をしていました。
どうやらソフィアに自分達が倒した【サンド・ワーム】を盗られてしまうのではないか?と心配しているようです。
しかし、ソフィアの圧倒的な強さを目の当たりにした上に、結果的に生命も助けられていたので……返してくれ……と抗議もし難いという様子でした。
「心配せずとも良い。其方らが狩った【サンド・ワーム】は【ロヴィーナ】に着いたら必ず返すのじゃ。我が【宝物庫】に入れて運んだ方が、其方らも輸送の手間が省けるじゃろう?第一、我は、あのように弾丸が撃ち込まれてボロボロになった魔物は買取り査定が低くなるから要らぬ」
ソフィアは言います。
「ありがとうございます」
オックスフォード中尉は安心したように礼を言いました。
「オックスフォード。我は拠点から仲間を連れて来るのじゃ。すぐ戻る」
「ははっ」
ソフィアは【転移】します。
・・・
【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】拠点。
「お帰り〜」
ウルスラが言いました。
「ただいまなのじゃ。ん?何だか暗いな?」
ソフィアは訊ねます。
「砂嵐が近付いて来ているんだよ。相当大きいヤツが……」
「なるほどのう。ならば丁度良かったのじゃ。一時移動するのじゃ」
ソフィアは【避難小屋】を撤収して、探索から【転移】で戻って来たメンバーも含めて【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】全員で【渓谷の町の遺構】に戻りました。
・・・
【渓谷の町の遺構】。
ソフィアは、バイパー小隊が装備していた【強化外骨格】の【リフリジレイター】と、バイパー小隊に頼まれて彼らが先程地下で発見した【乗り物】などの物資も片端から【宝物庫】に回収します。
そして全員で【装甲兵員輸送艦】の後部格納区画に乗り込みました。
ソフィアは【収納】から【自動人形】・シグニチャー・エディションを3体取り出すと【装甲兵員輸送艦】のクルーとして操縦させます。
【装甲兵員輸送艦】は離陸して高高度上空に大きな弧を描いて旋回・巡航し始めました。
ディエチの給仕で【ラ・スクアドラ・ディ・ソフィア】とバイパー小隊の食事会が始まります。
メニューは、おにぎりやハンバーガーやフライド・チキンや鯖サンドや出来合いの惣菜など調理せずに簡単に食べられるモノ。
バイパー小隊の面々は日頃ロクな食事を口にしていないのか、物凄い勢いで食事を食べていました。
この時【秘跡】のシナリオは過去にない分岐が生じ始めていたのです。
元のシナリオでは今頃バイパー小隊は先程ソフィアが倒した【砂漠竜】の番に襲われて全滅している筈でした。
ユーザーが【ポスト・アポカリプティック・ワールド】に挑む場合、2日目の早い段階で現在地の【渓谷の町の遺構】までやって来る例はありませんでした。
何故ならユーザーが、この【ポスト・アポカリプティック・ワールド】に挑む場合、初期エントリー地点は、いきなり魔物の大群による【襲撃】を受けてしまうからです。
初見殺し。
プレイヤーが最初の挑戦で魔物の大群による【襲撃】を生き延びるのは困難でした。
2回目以降の挑戦では【襲撃】対策をしても、結局は勝ち切るまでのパーティは少なく比較的安全な岩場まで撤退戦をする事になります。
足下が固い岩盤なら地中から【サンド・ワーム】に襲われません。
上空から攻撃して来る【砂漠竜】や【砂竜】からの攻撃を捌いて耐えていれば、丁度今頃初期エントリー地点周辺で発生している巨大な砂嵐に紛れて撤退する事が出来るのです。
つまり現時点で【渓谷の町の遺構】に到達出来るプレイヤーは、ほぼいません。
なので、ほぼ全ての【ポスト・アポカリプティック・ワールド】のシナリオで、バイパー小隊は全滅していて、プレイヤー達が【ロヴィーナ】を訪れた際に……既に全滅したバイパー小隊……の話を聞く事になるのです。
しかし、今日ソフィアに出会った事でシナリオが分岐して……バイパー小隊生存ルート……という未知のシナリオが始まりました。
もちろん、これはゲーム時代のシナリオにおけるルート分岐の話であり、当時からバイパー小隊という名前はありましたが、死亡した小隊のメンバーは固有名がないモブだったのです。
ナカノヒト達の異世界転移以降、ゲームの現実化によりゲーム時代のモブ・キャラも全員個性を持つようになりました。
それに何度チャレンジしても同じシナリオが繰り返されるというゲームの仕様も、現在では矛盾を抱えています。
何故なら、人種NPCは不老不死でも不死身でもありません。
仮に【ポスト・アポカリプティック・ワールド】を2回目にチャレンジしたら、1回目に死亡した人種NPCは復活するのでしょうか?
また人種NPCは1回目の記憶を2回目に引き継ぐのでしょうか?
この問題提起に対してミネルヴァが出した結論は、……何度チャレンジしても同じシナリオが繰り返されるタイプの【秘跡】は、その【マップ】内で死んだ人種NPCは【再配置】されずに永遠の死を迎える。1回目に生存した人種NPCは記憶を2回目に引き継ぐが、いずれ彼らも寿命で死ぬ……というモノ。
なので、あらゆる出来事がゲーム時代の既存シナリオと全く同様に推移するとは限らず、ナカノヒトやミネルヴァでさえ全くわからない事が起こり得るのが、現在の世界【ストーリア】でした。
お読み頂き、ありがとうございます。
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活動報告、登場人物紹介&設定集もご確認下さると幸いでございます。
・・・
【お願い】
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心より感謝申し上げます。
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ご意見ご質問などは、ご感想の方にお寄せ下さいませ。
何卒よろしくお願い申し上げます。




