8、時計を取り返せ!
こんにちは。前田莉々花です。
私のせいで、いつメンはバラバラになった。
だから、いつメンを元に戻すのも、私がするべきことだと思うんです。
まずは、しおんちゃんに言わなきゃ。私のしたこととしおんちゃんのしてることは間違ってるって。そして、時計を返してもらうんだ。
時計を持って、いつメンのところに帰るんです。
それで「ごめんなさい」って言いながら、時計を返して、仲直りするんだもん・・・。
「・・・あのっ」
「あれ?えーと・・・りりかちゃん!6-3組の」
出てきたのは、ものしずかな女の子、夢ちゃんだった。
「あ、うん。あの、しおんちゃんいるかな?いたら呼んでくれる?」
「え・・・」
夢ちゃんはちょっと驚いた様子だった。
「わざわざ他のクラスから、しおんちゃん呼びに来るなんて、初めてだよ」
「え?どういうこと?」
夢ちゃんは私に耳うちした。
「あ、あの・・・こんなこと言いたくないんだけどね。あの子、ちょっと時間操れるからって、いつもいばっててね、みんな仲良くしてるけど、ほんとは嫌っちゃってるの」
「あ・・・」
「しかもね。これは、あくまで噂って前提で聞いてね。・・・しおんちゃん、ときちゃんって子から、ムリヤリ時計奪ったらしいよ・・・」
「・・・!」
私のことは出てない。けど、全部私が悪いの・・・。
「あの、あのね。・・・ごめんなさい。私なの」
「え?何が?」
「私が、ときって子から時計を奪うのに協力しちゃったの」
「えぇっ!!」
「うん・・・今、私のしたことが原因で、ときとときの友達と、ケンカしちゃって・・・当たり前だけど。とき今学校来てなくて・・・家にも帰ってないみたいなの」
「え・・・大丈夫かな?」
私は泣きそうになったけど、一生懸命我慢しました。仲直りするまでは泣かないって、決めたんだもん。
「絶対、絶対絶対、私がその子たちを元通りにするの。・・・ほんとは、私もそのグループ入ってたけど、こんな私、入れてくれるわけがない。だからせめて、その子たちだけでも、仲直りさせるんだもん」
「りりかちゃん・・・」
夢ちゃんは黙ってしまった。
ああ、こうして私の友達は、減ってっちゃうのかな・・・
「仲直りできるよ!」
夢ちゃんは叫んだ。
「そんなに強く強く、ときちゃんやほかのお友達のこと思ってて、すごいよ。みんな、きっとそれをわかってくれるよ。りりかちゃんもまた、そのグループ、入れる!絶対!」
「夢・・・ちゃ・・・」
ダメダメ。うれしくていっぱいいっぱいだけど、泣いたらだめだもん。
「うん、ありがとう。・・・しおんちゃんを呼んでくれる?時計・・・取り返す」
「分かった。・・・何かあったら、私に言ってね」
・・・ニコッと笑ったけど、ごめん。頼るつもりはないんだ。
だってこれは、私がやることだから。
夢ちゃんは、何も悪くない。時計を取り返すのは、私の仕事だから―――――――・・・。
「話って何よ?」
「しおんちゃん。時計を返して」
「・・・え?今なんて言ったの?絶対いや。しおん、もうりりかちゃんのために時計の力使わないって、約束したじゃーん。もう忘れちゃった?」
へ?時計の力?何の話?
「だって、りりかちゃん、かわいそうに。ときともケンカするわ、おまけに、あんなに大好きなナオくんにフラれちゃったんでしょ。・・・でももう、時間は戻さないよ?」
「時間なんて戻さなくていい。・・・ときに時計を返したいの。ただそれだけ」
「・・・きれいごと言わなくていいのに。ほんとは、ちがうくせに」
「ちがくないよ。今までわたしがやったことは、すごくすごく悪いことだって気づいたの。ほんとなら、時計でもう一回戻したいくらい、後悔してるよ。自分のやったことに」
「何よ、じゃあ素直に言えばいいのに。でも、貸さないことには変わりがないけど――・・・ね」
しおんちゃんがクスリと笑う。
「ときと仲直りするんだもん。時計を返してよ!」
「うるさいわね」
「だってしおんちゃん、ときのこと好きなんじゃないの⁉」
「・・・んなわけないじゃない」
フッと、声を漏らした。
「私がときと仲良くしてたのは、何か秘密を持ってるって分かったから。秘密って、まさかそんなにすごいことだとは思わなかったけど。私、そんなときが気に入らなかったの」
「・・・は?」
「きっとみんなは、秘密を勘付いてて、仲良くしてて。私と同じ人がいっぱいいるんだなぁって思ったの。・・・魔法使えるってことだけで、あんなにちやほやされて、ムカついて」
「・・・」
「だから、ときが嫌がることたくさんした。秘密をばらしたら、意外にも、みんな変な子だって思って、離れて行って。一人になって。そこから時計奪おうとしたけど、逃げてって」
「・・・」
「こっちに来てみたら、また仲良くやってた。またちやほやされてる。でも、りりかちゃんって存在が、私にとってすごく便利な「モノ」で―――――――」
・・・どんっ!
私のスイッチが、プッツンときれた。




