2、転校生の正体は・・・
「・・・げっ」
私は声が出なくなっていた。
「とき、どした?」
「大丈夫・・・?」
「ううん、大丈夫じゃない・・・うっうっ!」
大丈夫じゃないよ、全然!見てわかってよ!
「あの転校生、けっこーかわいかったよな」
「なー。うちのクラス入ってほしかったよな」
男子ぃぃぃぃぃぃ!
うちのクラス入んなかったのが、せめてもの救いなんだよ⁉
私のこの世の終わりが近くなったその原因は・・・今日入ってきた転校生のせい!
転校していきなりこんなこと言われるのも嫌だろうけど!言うよ!
「入ってこないでーーーーーーーー!」
「・・・それで。親友だって、誰にも言わないからって、いったのに!授業参観の時、大声で!叫んだの!私の秘密を!」
私、小日向時、一気にしゃべりつくしています。
「ずっと我慢してきた。けどもう無理!そう思って、転校までしたのに・・・どうして⁉もうやだーーーーーっ!」
「うーん、そんな悪い子には、見えなかったけど・・・」
「ゆいかっ!もう、しおんのことそーゆーふーに言うの禁止!」
「ご、ごめん」
今日転校してきた女の子、城島詩音。
その子は、私の小学校生活を長い間脅かしてくれた、ものっっっすごい悪知恵を持った子!
「元気だして。明日から、修学旅行なんだよ?」
「そうだよ。せっかくの修学旅行、ずっとそんな顔で終わらせたらもったいないでしょ?」
のあがにこっと笑いかけてくれる。
「・・・みんなぁ~~!」
・・・そう。明日から私たち6年は、2泊3日の修学旅行。まあ、ここは、2人、ひなとのあの言う通りだよね。しおんのことなんか忘れて、めいっぱい楽しむ!それが1番いい選択だよね。
「パジャマどんなの?」
「えっ、・・・見てのお楽しみ~♪」
「ときのと、りりかのが気になるー!絶対高級じゃーん」
「そっ、そんなことないよ!」
「ときん家も、なんだかんだ言っておっきいよね。金持ちはまぶしいなあ~」
「さらってば。変なこと言わないでよ」
・・・しおんのことなんていつのまにか忘れちゃってた。
やっぱり、持つべきものは心友だね。
そして、次の日・・・私たちは宿舎に到着!
――――――――――――――「はい、みんな、静かに!」
パンっ!先生が手をたたいて、みんなが集中し始めた。
「この宿舎の方にあいさつを・・・・・。・・・・・続いて、校長先生の話です・・・」
長ったらしい校長先生の話が始まる。早く自由時間にならないかな・・・
「では、自分の部屋番号を探して、移動してください。ここからは自由時間です!5時30分になったら、食堂に集まってください。言わなくてもわかると思いますが、室長を中心に並ぶこと!」
先生が言い終わると同時に、みんなはそれぞれの班メンバーで集まった。
「とーきっ」
「うわっ、ビックリした!ひなかぁ」
ひなは私の腕をぐいぐい引っ張っていく。
「わ、分かった!自分で行くから!・・・私より、のあをひっぱってくれば?」
「それもそうだね。のあーーーっ」
・・・ふぅ。ひなが素直でよかったよかった。ごめんのあ。
そして、部屋で遊んでいると―――――――――ふいにさらが言った。
「なんでときは、時間をもどさなかったの?」
「へ?」
「だから、そのしおんにいじめられたとき。時間戻せば、それをふせげたかもしれないのに」
「・・・あー・・・うん。その時は私、素直だったから」
「・・・?」
私は肩をすくめた。
「お母さんに言われてた。だれに頼まれても、力使うなって、言われてた。今ではもう、使っていいようになったけどね!」
「・・・じゃあ」
りりかが顔を上げた。
「修学旅行を、のばしちゃうって、どう?」
「えっ」
「あ・・・ごめん、だめだよね。ううん、なんでもない、今のことは忘れ・・・」
「だめじゃない!」
私は、ふいにさけんだ。
「もどろう!もどって、最高の思い出を増やすの!」
私の言ったことに、みんながぱぁぁぁぁっと笑顔になっていく。
「うん!」
――――――――そして、2日後。
「さあ、やってみよう!」
「でもいいの?ってか、うちらだけ?」
「あたりまえだよ。このこと知ってるのは、みんなだけなんだよ」
「あと、しおん」
私ににらまれて、「ごめん」とさら。
私は時計とストップウォッチを取り出した。
時計の針を、4時半に合わせる。たしか、自由時間の始まりの時間、4時半だった気がするんだけど?
ストップウォッチは、1日目の年月、日にちに合わせた。
「行くよっ」
パッ!
私はこの光景、もう慣れちゃった。
ざわざわ・・・
「えっ⁉ほんとに、今・・・自由時間だ」
「もどったんだ!すごい」
えっへん、とちょっと胸を張る私。
「じゃああそぼっ!」
『うん!』
――――――で、くりかえしはこれで5回目となった。え、いくらなんでも、やりすぎだって?この際気にしない気にしない。
「じゃあ、行くよ――――」
「へえ、どこに?」
ビクッとした。この声・・・きいたことある!
「し、しおん・・・」
「もしかして、もどってるの?時間。だったら、私も連れてってよ!」
「何で知ってるのよ」
「だって、1日目から、一緒に戻ってたもん。しおん、触る杖を持ってって、触ってたんだ!」
・・うう、たしかに、戻る人だけは、杖で触っておくんだよ。(進むときも、止める時も)ああ、昔の自分。どうしてそんな細かいことまで教えたんですかーーっ!
「一緒に連れてってくれないなら、しおん、みんなに言っちゃお。―――――みんなー、ときはねーーーーーっ」
「わあああああ!」
あわててもどった。
しおん、ほんとにいやなやつーっ!




