9、りりかVSしおん!
どんっ!っと、私、前田莉々花、思わず、手が出ました・・・。
「なっ、何すんのよ!しおんの白い服、汚れちゃった・・・」
「・・・あ・・・」
「ひ、ひどいよりりかちゃん・・・ヒック、いくら、しおんのこと嫌いだからって・・・くすん」
え?
な、泣いてる・・・・?
「どうしたの⁉」
「ぐすん・・・し、しおんのこと、いじめてきたの・・・しおん、何にもしてないのに・・・」
「え?そ、そんなの、うそだよ!」
「え・・・何の理由もなく、いじめたの?」
「りりかちゃんて、おとなしいと思ってたけど・・・ひどい子なんだね」
「ち・・・ちがっ・・・」
泣かないって決めてたのに、泣きそうになる。ひどい。みんな、しおんちゃんの言うことに騙されちゃうの――――?
「うわぁ、りりかちゃん、ひっどーい」
「サイテー」
「くすん・・・りりかちゃん、って・・・ひどい・・・」
ちがう。ちがうのに。
どうしたら分かってくれるの―――・・・?
「・・・そんなのうそ!」
声が響いた。
「え・・・夢ちゃん?何が?」
「りりかちゃんは、しおんちゃんがときちゃんから奪った時計を取り返すためにしおんちゃんに話をしてたんだよ」
夢ちゃん・・・
夢ちゃん、助けに来てくれたんだ・・・!
「え・・・夢ちゃんまで、そんなこと言って・・・ひどい、嫌い・・・ね、みんなもそう思うで――――」しおんちゃんの言葉は・・・
「あ、そのうわさ、聞いたことある」
「うんうん。マジだったんだ・・・」
「そっか、りりかちゃん、ときちゃんと仲いいもんね。取り返そうとしてたんだ・・・ごめんね、勝手なこと言って責めちゃって」
・・・そういうみんなの声にかき消された。
「え・・・そんなのウソだよ、みんなっ!しおんのこと信じてよぉ!」
「・・・しおんちゃん」
私はしおんちゃんの前に立った。
「私、悪いことしてたんだから、今こうしてすごい反省してるの。だから、しおんちゃんにも反省してほしい」
「し、しおんが反省することなんて、何もないでしょ。だって、やったのはりりかちゃんで・・・」
「確かにそうだね。でも、しおんちゃんには、反省することいっぱいあるんじゃないの?今までときにやってきたこと、全部全部」
「・・・しおんはね、ときのことが大っ嫌いだったの」
しおんちゃんの言葉に、みんなが耳をかたむける。
「ほんとにほんとに。だってね、魔法を使えるんだよ。そんなの不公平だよね。魔法使えたら、そりゃあ、みんなから大好きって、言われるに決まってるじゃん」
「しおんちゃん・・・」
「そんなときが憎かった。ほんとに、きらいで。もういやだった」
「そんなの、しおんちゃんの勝手な思い込みでしょ‼」
私が叫んで、みんながびっくりしたようにこっちを見た。
「ときが人気なのは、魔法を使えるからじゃない。みんながときの近くによって行くのは、魔法を持ってるって気づいたからじゃない。みんな、ときの優しくて明るい、あの性格が大好きだから!」
「・・・」
「困ったときは助けてくれて。励ましてくれて。ちょっぴり天然で面白くて。明るくて、元気で、勉強も運動も何でもできて、しかもかわいくて。絵も上手、ちょっとおさいほうはニガテだけど、みんなみんな、あのときが好きなの」
「・・・」
「私も好き。・・・でもしおんちゃん、嫌いなんだって。私・・・許したくないけど」
「・・・あ・・・」
「ときのことをどう思うかは、自由。でも、もうときが嫌がることしないで」
「・・・分かったよぉ・・・」
しおんちゃんが立ち去っていくと、みんなは、私のところにやってきた。
「りりかちゃん、かっこよかった!」
「すごいね。あのしおんを倒しちゃうなんて」
「えへへ・・・ありがとう」
あ、そういえば。私結局、時計を返してもらってない!
って思ったけど、ちゃんとありました。
その辺の地面に、落っこちていて・・・
「時計・・・ときに返さなきゃ。ごめんなさいって、言わなきゃ・・・」
「がんばって、りりかちゃん」
夢ちゃんが声をかけてくれた。
「ありがとう・・・さっきも。今も・・・」
私はときの時計を握りしめました。
・・・まさか、ときが見ているとは、思わなかったけれど。




