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クウェーサー・ホリック!  作者: 星花 紫苑
プロローグ 入学までの一年
3/6

勉強会~国の知識とエトセトラ~

仕様のつもりとはいえ、説明不足感が否めない...できれば感想教えてください。

「さてと、じゃあおさらいするよ、シュヴィちゃん。この国の名前と首都の名前は?」

「国の名前が『クレッセン』、首都の名前が『クレータ』」


「そうそう、じゃあこの国の最大の特産品は?」

「ええと...周りの国と比べて魔法石の取得量が多い...でしたっけ?」


「正解! そのおかげで魔力を持たない人たちも魔術具を動かせるから生活水準は他国と比べても高いほうだと思うよ。じゃあ、この魔法石をゲットする方法は?」

「炭鉱所で採掘するか魔物から剥ぎ取るかです」


「正解、まあこれは万国共通かな。もっとも、山だけじゃなくて海底とか森林とか色々な所から取れるらしいけどね」

「取った場所によって魔法石の属性も変わるんですか?」

「うーん、実はそうでもないんだよね。確かに場所によっては魔法石の中に属性が混入されていることもあるけれどそれはごく稀に起こることで、ほとんどの魔法石はただの魔力の塊なんだよ。

 そうだなあ...コンロとか冷凍庫とかあるじゃない? あれには必ず何処かに魔方陣が刻まれていてそこに魔法石から魔力を流し込むことによって魔方陣に登録してある魔法が起動して魔術具は動いてるの。属性の有無は石の色で大体判断できるから」


「赤が火、黄色が土、緑が風、青が水...」

「それと橙色の陽と真っ黒な陰、そして真っ白な無、まあ大雑把に分けるとこの七つかな。複雑な魔方陣は属性がたくさん混ざってたりするんだけど、入学試験のときには使わない知識だから今は覚えなくてもいいわ」


「はい、分かりました」

「それにしても珍しいね、いつも来るのは夕暮れが近くなってからなのに。なんかバルルとやらかした?」

「いえ、王国の騎士団からおじさまに会いに来た人がいるんです」

「え、王国の騎士団って『アステリスク』から?」

「...あすてりすく?」

「王国騎士団の正式名称のことだよ。ふーむ...そっかあ」


私、シュヴィは今現在おじさまの言葉通り村の中心で薬屋を開いているメブさんという女性に勉強を教えてもらっている。


真っ白でしわのない肌と滑らかな金色の髪をもつ可愛らしい人形のような見た目は二十代にしか見えないのだけれど、おじさまと同い年...大体六十代ほどである...らしい。

なぜこんなにもおじさまとは見た目が違うのか聞いてみると「ヒミツ」と可愛らしく言っただけで教えてくれなかった。


薬屋は普段あまりお客さんは来ないが急患があったりするので、お客さんが来たらすぐに気づけるようにカウンターの奥にある小部屋で教科書や歴史書を開いて勉強している。ちなみに教科書や歴史書はおじさまのものだ。


メブさんは教え方が上手い。この国のことを何も知らなかった私に何度も繰り返し説明してくれるのだ。

他にも怪我をしたときの応急処置の方法や食べられる野草、毒を持つ植物とその対処法など、私の将来に必要になるであろう知識を沢山教えてくれる、とても賢くて、優しい人だ。


「...そっか......よし、じゃあシュヴィちゃん、この紙に教科書の問題を写して解いてくれるかな?」


そう言って片面に数字の羅列が並んだ紙を私に差し出すメブさん。

私はその紙の裏面に教科書の問題を写し、片っ端から解いていく。

問題はクレッセンの隣国についての問題だ。

国の名前と首都、代表者や国王の名前を覚えるだけなのでそこまで難しい問題ではなかった。


五分ほどで指定された範囲を終わらせる。メブさんは私の解いた問題を採点し終えると満面の笑みを浮かべて私を誉めてくれた。


「うん、満点だね! ここまでこればもう大丈夫、試験のときに落ち着いて解ければ絶対に合格できるから頑張ってね!」

「はい、本当にありがとうございました、メブさん」

「問題ないわよ、私もシュヴィちゃんに勉強を教えるのは楽しかったし...あら、もう昼食の時間になってる」


部屋に掛けられた時計を見てみると昼食の時間である十二時から三十分ほど過ぎていた。


「じゃあメブさん、私そろそろ」

「待って待って! 折角だから一緒にご飯食べようよ!」

「え...いや、でも」

「もう、私が一緒に食べたいだけなんだから、気にしないで!」

「...分かりました、ご馳走になります」


それを聞いたメブさんは満面の笑みを浮かべながら勉強部屋を後にする。

その間に机の上の勉強道具を鞄のなかにしまっていく。


片付けが一段落終わると、メブさんがいくつかのパンと湯気が立ち上っている琥珀色のスープ二人分を引き連れながら戻ってきた。


引き連れてというのは比喩でもなんでもない。食べ物を入れた食器がふわふわと空中に浮いているのだ。

おそらくはメブさんの魔法の力なんだろうけども、その、なんというか、とても可愛らしい使い方だった。

メブさんがホクホク顔だったから余計にそう感じた。


「お待たせシュヴィちゃん、じゃあとっとと食べちゃおっか!」

「そうですね、お腹がペコペコです」

「ふふ、私もよ」


メブさんが机を指差すと空中に浮かんでいた食器たちが円を描きながらゆっくりと机の上に降り立った。

生き物のように振る舞う食器たちに目を丸くしているとメブさんが席についてすぐさまパンに手をつけ始めた。

私も食事前のあいさつを済ませてから昼食を食べ始める。


「うーん、やっぱり村の料理はいいね、まさに自然を食しているって感じ!」

「私にはあまり分からない感覚です」

「前に言ったっけ? 貴族の料理っておいしいっちゃおいしいんだけど調味料バンバン使いまくっててさ、素朴な味がたまらなく恋しくなっちゃうんだよね~」

「...貴族の料理を食べたことがあるんですか?」

「たくさんあるよー、これでも私は有名人だからね」


そういいながら美味しそうにスープを飲むメブさん。

おじさまといいメブさんといい...なかなかグルメな人達だと思う。私はというと味の違いなんてそれほど気にしたことはない。


「私はシュヴィちゃんもあると思ってるんだけど」

「なにをですか?」

「料理だよ、シュヴィちゃんも食べたことあるでしょ、貴族料理」

「...ええ、まあ、一応は」

「シュヴィちゃんっていかにもお嬢様って感じだからさー、あんまり詳しいことは知らないんだけどね」

「お母様、貴族だったんですよ。それで食事のマナーは徹底的に叩き込まれてきました」

「そっか...それで貴族の料理はどうだったの?」

「おいしくなかったですよ、まったく」

「あ、シュヴィちゃんもそう思う?」


同意を得られたのが嬉しかったのか浮かべていた笑顔をさらに弾けさせるメブさん。

その笑顔に癒されながら私は昼食を終えた。









「あ~、美味しかった! 村の人たちに感謝だね」

「メブさんが村の人たちに薬を売っているおかげですよ」

「いい人ばかりだからね、この村は。できることはなんでもやってあげたくなっちゃうんだ~」

「......はい、本当に...いい人ばかりです」


「...ねえ、シュヴィちゃん」

「なんでしょうか、メブさん?」

「村に...残る気はない?」

「ありません」

「あはは、即答だね」

「すみません...お母様と約束したことがあるので」

「えー、どんな約束?」

「メブさんの若さの秘密を教えてくれるなら」

「だめー、絶対に教えません」

「残念無念です。あ、昼食ご馳走さまでした」


私は鞄を背負って、席を立つ。


「それじゃあ、メブさん」

「シュヴィちゃん」


また今度、そう言おうとした私の言葉をメブさんが遮った。

メブさんはいつも通り笑顔を浮かべていたけど、その笑顔は嬉しさを弾けさせた笑顔ではなく、つつくと崩れてしまいそうな不安定な笑顔だった。


「ええと、そのね...たぶんシュヴィちゃんとは今日でお別れになっちゃうと思う」

「............え?」


その言葉に私は凍りつく。聞き間違いだろうかとおめでたいことを考えたが、メブさんの表情を見てその考えは粉々に打ち砕かれてしまう。


「お別れって...どうして」

「多分...バルルは王国のお誘いを断れないから」

「......」

「一年間、バルルと暮らすって決めたんでしょ?」

「......はい」

「多分バルルは...あなたを連れて王国に行くわ」

「王国に...私が?」

「バルルったらシュヴィちゃんにぞっこんなのよ? 死ぬまで面倒見る、なんて言っちゃてさー。 私は村に残るから...シュヴィちゃんとはここでお別れ」

「...確かにそれだともう会えませんね」


おじさまがお誘いを蹴る可能性もあるけど...多分それはないかな。

お人好しすぎるし、これを見越して今まで準備してきた感じはしてたし。


なにより......無自覚な戦闘狂のおじさまのことだ、死に場所に相応しい、なんて変なことを考えてそうだ。


「と言うわけで、明日から私村長になります!」

「急ですね」

「本当は一年後の予定だったんだけどね。ま、そのぐらい誤差だよ、誤差。バルルに伝えといて、適当に誤魔化しておいてあげるって」

「...最後までお世話になります」

「いえいえ、それほどでも...あ、そうだ、目、閉じて」

「え?」

「ほら、早く早く」


言われた通りに私は目を閉じる。

すると、首に何かがこすれる感触があり、一瞬、くすぐったさを覚える。


「......ほい、目開けていいよー」


目を開け、最初に飛び込んできたのはメブさんの繕った顔。

その表情が気になって、メブさんの視線を辿る。

そこにあったのは私の首もとで淡く光っている深紅色の小さな魔法石だった。


「...似合いませんか?」

「へ!? いや、凄く似合ってるよ! シュヴィちゃんの黒髪とすっごくマッチしてる!」

「それはよかったです...でも、これ貴重な物じゃ...」

「いいのいいの、魔法石はたくさん持ってるし、きっとシュヴィちゃんが持ってた方が役に立つから!」


そう言ってメブさんはまた笑みを浮かべた。咲き誇るという言葉がぴったりな眩しい笑顔。

私はこの笑顔にめっぽう弱い。


「ありがとうございます、大切にします」

「うん!」

「...それじゃあメブさん、改めて、ありがとうございました」

「どういたしまして、じゃ、またね!!」


ドアを開け、メブさんの薬屋をあとにする。

後ろを振り返ってみると、メブさんが両手いっぱいを使って手を振ってくれていた。

私はそれを視界に収めるのを最後に後ろを振り返るのをやめた。


...よくよく考えてみれば、メブさんとの付き合いはたったの三ヶ月しかなかった。

それでも、別れるのが嫌になるのは...たくさん、私に優しくしてくれたからだろうか?

結局、もらえるだけもらって、何も返すことができなかった。


......まあ、もう会えないというわけでもないし、メブさんと再会するその日まで。

その間は他の誰かに優しくしよう。




『............たくさんの人を......助けること、それがあなたができる、最高の恩返しよ』



......私は駆け足でおじさまのもとへと向かった。




メブさんやおじさまとの村での交流はプロローグ終了後に描きたいと思います。

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