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第098話 ~転移箱とスポポーン~


 店舗のテーブルでルエルの読んでいたレポートを開く。

廊下へと続く扉の向こうからは少女たちの声が聞こえてくる。


 集中しなければ……。


 まだ朝早い時間帯の為、通りには通行人がまばらだ。

この世界には色々な人がいるな。人間に獣人、エルフにまだ会ったことのない種族。


 それに魔法。科学があまり発展していない変わりに魔法がある。

もともといた世界ではそれなりに科学は進んでいると思うが、空間移転の技術は確立されていない。

某猫型ロボットの道具もいつが実現する日が来るのだろうか。


 このレポートに元の世界に帰るヒント、もしくは答えがあるはずだ。

確か黄色の付箋だったな。早速内容を読んでみる。


ピロリロリーン 翻訳メガネー


 メガネを装備すると何となく賢くなった気がするのは俺だけじゃないはず。

どれどれ、ルエルはどこまで読んだのかな?



――トレイにある消滅箱を調べてみた。

水、照明、消滅箱は一般ギルドではなく、王宮直轄、教会などが直接管理している。

他の魔道具に関しては問題ないのに、この魔道具だけは別扱いになっているのは違和感がある。

多少危険を犯しても調べる必要があると私は思い、貴族の協力者を経由し、消滅箱について調べた。


 現在はこの消滅箱を新たに作り出す事は不可能らしい。

太古の時代、もともとあったブラックボックス(当時の名称)を魔法の力でそのまま複製している。

元となるアイテムの原理や法則など理解できなくても複製だけはできる。


 ただし、どのような効果があり、最終的にどうなるかなどの詳細は現在でも不明。

分かっているのは


――生物は箱にいれられない

――中に入った物質は恐らくどこかに移転する


 消滅箱と命名したのは市民に普及させるためであり、実際は恐らく移転箱が正しい。

私の調査ではここまでが限界だった。

協力者の貴族が王宮から目を付けられ、調査を打ち切りにしなければならなかった。



 その後、私は実験を続けた。

魔力の通った魔道具に魔力を込め、箱に入れたところその場から消えた。

しかし、消えたはずの魔道具はエルフの国から発見されたのだ。間違いなく同一アイテムだった。

エルフ国から持参した、世界でただ一つの翡翠の腕輪。エルフの国でしか作られない私専用の魔道具だ。


 もしかしたら、魔道具に込められた魔力や属性、色々な要素が移転先を決めるのではないかと思い始めた。


 私は数人の協力者を集め、最終実験を行う。

店の倉庫へつながる転移ゲートの魔道具を作る。消滅箱に入るサイズなので錠前の形にする。

作った錠前を異空間に飛ばせるように、複数の魔石、キー、素材を選ぶ。

絶対に破壊されないように強度を最高に上げる。


 協力者全員で魔力を最大限に流し込み、魔石が耐えられるギリギリのところで消滅箱に入れた。

錠前とキーが入った箱は七色の光に包まれて消えた。


 それからしばらくしても転移したと思われる箱はどの国からも発見されていない。

もしかしたら実験は失敗だったのか……。



――これ以上の時間と費用は捻出できない。実験は失敗に終わったのだ。

実験は凍結させる。このレポートもここまでだ。


 次の世代につなげるしかない。

ごめんなルエル、父さんはここまでだ。




――ある日、店の倉庫から物音がした。

 賊かと思い、倉庫に行く。見知らぬ裸の男がいた。

見た目は人間だが、言葉が全く通じない。髪は金色。瞳は青。


 男も混乱しているようで、落ち着かせるのに時間がかかった。

翻訳の指輪を渡し、初めて言葉を交わせるようになる。



 何しに来た? と聞くと、気が付いたらここに居たと。


 どうして来た? と聞くと、拾った錠前を納屋のカギと交換したら扉に飲み込まれたと。


 どこから来た? と聞くと、イギリスと答えた。私の知っている国ではない。


 これは、異世界からの訪問者なのか?

幸い家には誰もいない。服を与え、部屋に移動し、詳しく話を聞く。

間違いない、異世界へのゲートができたのだ。

しかし、向こうからこちらに来る方法はわかったが、戻る方法がわからない。


 私はしばらくこの異世界人と戻る為の方法を探さなかればならなくなった。



 このレポートはここまでとする。次号に期待してね!








チーン




 ル、ルエル父! ヒントないじゃん! その先が知りたいんだよ!

とりあえず、転移してしまった原因はわかったが、もとの世界に帰れないじゃないか!

なんで、最重要ポイントが書かれていないんだ! 

次のレポートか? この次のレポートに書いてあるよね!


 ……ふぅ。なんだよ、期待したじゃないか。

途中まですごくいい感じのレポートだったのに! 何かだまされた気分だ!


 しかし、転移は魔法でできるんだよね? だったら転移魔法で元の世界に戻れるんじゃないか?

お、俺の頭さえてるかもしれない! とりあえず、レポートは読み終わったし、まだ誰も戻ってきていないから実験でもするか。


 ダメもとで、転移魔法の実験をしてみよう。



 魔法はイメージ。イメージで恐らくなんでもできると思う。

大気中の魔素と自分の中の魔力を融合させ、知っている所へ移転するイメージ。


 確か某日本のアニメで瞬間移動するシーンがあったな。おでこに指を当てて、相手の魔力を感じ取る。

俺には相手の魔力を感じ取れないので、そこは得意のイメージ力でカバーですな。


 俺は立ち上がり、自然体で体全体を魔力で包み込むようなイメージをする。

目を閉じ、集中する。俺自身、体ごと移動するイメージだ。

移動先のイメージはそうだな、トイレでいいか。さっきまでいたトイレだ。


 イメージしろ。体全身を魔力で覆い、全身を移動させるイメージだ。

トイレのイメージを強くする。さっきまでいたトイレだ。簡単な事だ。



 ……。さっきは暑かったな。ムシムシしてたけど、ルエルのポヨンは良かった。

密着していたが、あれはあれでちょっと良かったかも。




ふっと体が軽くなった気がした。



 さっきまで聞こえていた少女たちの声が聞こえなくなっている。

そのかわりに水の流れる音がする。


 恐る恐る目を開ける。


 そこにはスポポーンな少女四人。

おっふ。実験は成功だが、大失敗だ!



「「「きゃぁーーーー!」」」



「お、お兄ぃ! な、何しているの!」

と、愛に叫ばられ。


「ユ、ユーキ、どうしてここにいるの!」

と、ルエルに物申され。


「ユーキ兄! 最低です! もっとうまく覗いてください!」

と、イリッシュに叱咤され。


「……ユーキ。後でゆっくり話がしたい」

と、フィルにほっぺをつねられる。



 色々な意味で申し訳ありません。

でも、俺って魔法の才能あるのかもしれないですね。


「いよぅ。みんな元気だったか? じゃ、俺は店で待ってるぜ!」


 四人の叫び声を背中に、俺は風のように風呂場を後にする。

後が怖いが、あの場に残るよりまだましだ。


 転移魔法は使用に要注意だな。

さて、体を流す前に開店準備でもするか!



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