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第084話 ~実験と手料理~


 実験室の扉を開ける。カーテンは開いたままで街灯の光と星の光が部屋を照らしている。

本棚はぎっしりと本で埋まっており、隣の棚には瓶が外からの光を反射し輝いている。



 さて、明かりをつけるか。あと、カーテンも閉めないとな。


 俺は明かりをつけ、カーテンを閉める。ルエルのおかげて、部屋はきれいに片づけられている。

机も使えるようなっており、テーブルもすっきりだ。


 さすがルエル、掃除が上手いな。フィルとは大違いだ。


 俺はテーブルにバックと短剣を置く。懐から巾着袋と財布も出し、テーブルに並べる。


 巾着袋は三つあり、一つにはさっき大量に生産してしまった弾が。

もう一つには長からもらった魔石と何かのアクセサリーがまとめて入っている。

そして、ギルドで買った大量の極小の魔石入り袋。


 今夜の実験はどこまで使うか。あまり遅くなるのも嫌だしな……。


 ギルドで買った極小魔石数個。魔石で作った弾数個。

これ以外はしばらく使わないからバックに入れておくか。

俺はバックをカバーを開け、少しだけひもを緩める。



 巾着一つ手に持ち、バックに入れる。



――にゅるん



 何となく生暖かいような、ゼリーのような、水のような。

この感触がすごく微妙だ。

にゅるにゅるするのに、バックから手を抜くと、何もなかったかのようにさっぱりしている。

ベタベタもなければ濡れてもいない。何なんだろうこの感触は。


 もう一つの巾着を手に、再度バックに手を入れる。



――にゅるん



 にゅるん、にゅるん、にゅるん。手を入れて、かき混ぜてみる。

にゅる、にゅる、にゅるん。


 手を勢いよく抜いてみた。


じゅっぽ!



 しかし、手には何もついてない。

不思議だ。仕組みが全く分からない。これこそ本当のマジックアイテムだな。



 でも、にゅるんとか、じゅぽじゅぽとか、この手に伝わる感触が何とも……。





 さて、次だ次。


 この短剣どうしよう。手元にあった紙を一枚切ってみる。

するとスパっと綺麗に切れる。


おぉ、普通にきれいに切れた。


 次に自分の指先をちょっとだけき切ってみる。

が、どんなに力を入れても指先がへこむだけで切れない。

思い切って腕を切ってみる。

こちらも何ともない。不思議だ。本当に調理位しか使えないのでは?


 とりあえず、見た目は短剣なので威嚇(いかく)位には使えるかな?

一応装備品として持っておこう。



 テーブルから机に移動し、椅子に着く。

さっき残した極小魔石と弾。さて、上手くいくかな……。




 俺は部屋を見渡し試験管のような透明のガラス瓶を見つけた。

これで試してみるか。





 番組を見ているみんな!こんにちわ!

ん? 声が小さいな! もう一度! こんにちわ!


はーい、みんな元気だね!


今日の実験はこれ!


風の魔法で飛ばしてみよう! 空気圧の実験!


今日集まってくれたお友達は、空気圧って知ってるかな?


そう、未来の猫型ロボットのあの道具と同じだね。


空気をたっくさん閉じ込めて、一気に解放すると空気の球みたいのが飛んでいくね!


今日の実験ではこの空気圧を魔石で作れないか、実験するよ!


とっっても危ないから、良いこのみんなはお友達に向けて実験しないでね!


おねーさんとのお約束だよ!




 さて、まずは魔石を一つ準備して、エンチャントする。

手のひらに乗せ、握りながらイメージする。

空気を出す、圧縮し、開放する。エアーコンプレッサと同じだな。


魔石にイメージを流す……。


 エアーコンプレッサ―、それも一軒家位の大きさ。

イメージの中で窓から空気を取り込み、家の中で空気が圧縮されていくイメージ。

ドンドン圧縮し、そして玄関のドアを開ける。


バフゥゥゥ! と玄関から空気が勢いよく飛び出すイメージ。


その風で通学中の女子高生や通勤中のオフィスレディのスカートがヒャホーと捲れていくイメージ。




 春一番 強風吹きつつ テント張る


 勇樹、心の俳句。


いい俳句ができてしまった……。



 魔石の色が薄らと緑色になる。エンチャントできたかな?

試験管に魔石を入れ、軽い紙で蓋をし、外側から魔石に魔力を流してみる。


あれ? 反応がない。失敗か?


魔力を流すのをやめた瞬間、蓋にした紙がふさっと飛んだ。



 なるほど、魔力を流しているときは圧縮し、やめたら解放になるのか。

とりあえず、大体イメージ通りの形に仕上がった。


 同じ魔石を何個か作る。エアーコンプレッサの魔石。

略してエアプレだな。エアプレの魔石。



 よし、出来た。とりあえず、今日はこの辺で終わりにするか。





コンコン





誰だこんな時間に?






「誰だ?」



「私です。イリッシュです」


「入っていいぞ」


 イリッシュは扉を開け、入ってくる。

寝間着のままで、少しポヤっとした表情だ。


トレイを持っており、何かが乗っている



「ごめんなさい、こんな時間に」


「どうした? 何かあったのか?」


「あの、良かったらこれ、お夜食にと思って。作ってきました」


 トレイの上にはスープとパン。あと何か煮たやつ?が乗っている。


「イリッシュが作ってくれたのか?」


「はい。初めて調理をしてみました」


 女の子の初めてはいいよね。イリッシュの初めて、いただきます!

夜食だよ? だから、いただきますだよ。普通にあっているよね?



「ありがとう、少しお腹が減っていたんだ。助かるよ」


イリッシュはテーブルにトレイを置く。


「お口に合うといいのですが……」


「大丈夫! おいしくいただくよ。もう部屋に戻るか? 少しここにいるか?」


 イリッシュに聞いてみると、少し顔が赤くなった。


「そ、そうですね。少しだけお邪魔していいですか?」


「いいぞ、そのベッドにでも座ってくれ」


「べ、ベッドに座るんですか!」


「え? 椅子より柔らかいから、いいかと思ったんだが。まぁ適当なところに座ってくれ」


イリッシュは結局近くにあったベッドに座る。



「おいしそうだね。早速食べていいか?」


「どうぞ! ゆっくり食べてくださいね」


俺は、一口スープを飲む。





……。





バフゥゥ! ゲホゲホ! 



「ど、どうしたんですか?」


「な、なんでもない! 気管に入ってむせただけだ!」


「そ、そうですか。大丈夫ですか?」


むせる俺の背かなをイリッシュがさすってくれる。






俺は一つ嘘をついた。





気管などには入っていない。







味だ。このスープの味だ。


今だ味わったことのない、殺人的レヴェルの味がする。

何だこの味? どうしたらこの味になる?


 

「イリッシュ。料理が初めてといったが、今まで一回も作ったことはないのか?」


「はい。自宅では料理人の方がいたので、今回が初めてです。見よう見まねで作ったのですが、おいしくなかったですか?」




 何でも器用にこなす、スーパーガールイリッシュ。まさか、料理が殺人的だとは。




どうする、正直に話すか、隠すか……。



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