第081話 ~ダブルバインと戦闘力~
サーニアは俺の方を真っ直ぐに見つめる。その瞳に俺は吸い込まれそうだ。
しかし、黒のスリットが入った服装は色っぽい。大人の色香を感じる居この頃、皆様いかがお過ごしでしょうか?
……いやいや、今はそんな事を考えている場合じゃない。
「サーニア。俺は仕事を斡旋できない。ギルドを当たったらどうだ?」
俺だってルエルに雇われている身だ。この世界の状況はわからないが、ギルドに行けば仕事の斡旋位してもらえるだろ。
もしくは、普通に冒険者になって、ダンジョンでも行けばいいのでは?
「私ね、持病があってなかなか仕事に付けないの。長時間の激しい運動はできないし、力もないし」
サーニアの方ががっくし落ちている。
「え? 持病持ってって、何故俺と戦闘なんかできたんだ?」
ついさっき、俺達戦闘していたよね? あれって激しい運動なんでは?
「あのくらいの短時間は大丈夫よ。もっと長期戦になったら発作が出てしまうの」
「そうか、短時間なら動けるんだな。しかし、サーニアの握力はある方だと思うが、力はないのか?」
「この腕見てよ。この細い腕で重いもの運べると思う?」
確かに腕は細いと思う。華奢な細腕は白く、美しさも感じる。
胸はドカーンなのに。なのに。なのに。
「そんなに力がないのか?」
「試してみる?」
サーニアは俺を持ち上げようと、真正面から抱き着いてきた。
ちょ、急に抱き着くな! そ、それよりも、こ、これは! なんという力だ!
サーニアのダブルバイーンが俺のお腹辺りではじけそうだ!
この胸の圧力! ぱねーっす!
サーニア自身の力は、まったく大したことがない。
愛の方が力はあるな。うん。
ま、まずい……。これは非常にまずい。
サーニアは目を閉じ、頑張って俺を持ち上げようとしている。
だがしかし、このままでは俺のマグナムが火を噴いてしまう。
は、早く何とかしなければ。
「サーニア、良くわかった。もう十分だ、腕をほどいてくれ」
「こ、こんなに力を入れているのに、ユウ一人持ち上げられないの。わかってくれたかしら?」
サーニアはやっと俺を解放した。このままでは俺の体力と理性が持たないからな!
ああ、わかったさ。サーニアのダブルバイーンの破壊力がな。
こいつは、相当な戦闘力だ。戦闘力を計る機械があれば『ボンッ』と、壊れていただろう。
「なんでそんなに力がないんだ? 病気のせいか?」
「そう、持病のせいで大した力も出ない。軽いものだったら普通に持てるの、ナイフとかね。持病のせいで冒険者にもなれない、ギルドでも仕事が見つからない」
「この世界では仕事見つけにくいだろうな」
「やっと用心棒の仕事に付けたのに。住み込みで三食付。なかなか条件は良かったわ。ユウひどいわね」
「その言葉そっくり返そう。俺は殺されるところだったんだぞ? 俺を殺そうとした相手を、何故助けねばならん」
そう。どんなに目の前の女性が、美しく、スレンダーで、ドキッとする服装で、ダブルバイーンで、なんでも言う事を一個聞いてくれるとしても……。
ちょっとだけなら、いいかな?
嫌、ダメだ! また命を狙われる可能性がある。何より、フェアリーグリーンで雇う事はできない!
「とりあえず、今日の今日では何もできん。明日の朝、出直してくれ。今夜はもう遅い」
街はそろそろ闇に包まれる。少しの灯りを残し、街全体が眠りにつく。
すっかり人通りも少なくなり、周りには数人の酔っ払いがフラフラ歩いているだけだ。
「冷たいのね。さっきギルドを追い出されたばかりなのに……」
「そんな事は知らん。この近くの宿屋にでも泊まればいいだろ?」
「まぁ、いいわ。当初の目的も果たせたし。そろそろ宿を探しに行かないと」
「ああ、そうしてくれ」
「宿が決まったら教えに来るわ。私に夜這いかけてもいいのよ?」
な、ん、だ、と? 夜這い。
男のロマン。男女の駆け引き。嫌よ嫌よも好きのうち。アーレ―お代官様―。
深夜に隠密行動を行い、女性の部屋に侵入し、あっはうふふな行為。
俺に隠密のスキルはないが、夜這いならいけるかも!
でも、こいつは元用心棒。怖いなー、逆に喰われそう。
「嫌、遠慮しておこう」
何となく俺は違和感を感じ、断った。
「あら、意外と紳士なのね。せっかく既成事実を作って養ってもらおうと思ったのに」
やっぱりな。こいつの考えは侮れない。
「これで、話は終わりだな。今度こそ俺は帰るぞ」
「ええ。私も話は終わったわ。こんな時間にごめんなさいね」
俺が帰ろうとした時、ふっと頬に柔らかい感触が伝わる。
サーニアから頬にキスを貰ってしまった。
「な、な、何しとんねん!」
「殺そうとしたお詫びと、取ってくれたお礼。断ったもいいのに、ユウは取ってくれたわ。ありがとうね。やっぱりあなたは紳士ね」
サーニアは笑顔で俺に話す。街灯の灯りと星の輝きがサーニアを照らし、サーニアの美しさを引き立てている。
この子の笑顔は相当な破壊力がある。それだけに、もったいない! 非常にもったいない!
「じゃ、じゃあな」
俺はそそくさと通りに戻り、店の入り口に歩いていく。
サーニアも通りに出て、俺と反対方向に歩いていく。
数歩歩き、ちょっとだけ気になって振り返ってみる。
サーニアは消えていた。あれ? もう見えなくなった。 走って行ったのかな?
無駄に時間を使ってしまった気がする。
あ! お願い一個話すの忘れた! 何てことだ!
あんなことも、こんなことも、きゃっはうふふな事でも、なんでもお願いできたのに!
今度会ったら聞いてもらわなければ!
夜も更けた。俺は店に入り鍵をかける。椅子に座り、天井を見上げる。
みんなそれぞれの部屋で寝床についている。店は静かだ。
もう少しだけ、やる事やったら俺も寝るか。今日はいろいろあって疲れた……。




