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第070話 ~責任と願い事~


「ルエルさん、さっぱりしたよ! ありがとう! 」


「ルエ姉も早く入ったらどうですか? 」


愛もイリッシュも薄いワンピースの寝間着に着替えてる。

しっとりとした女の子っていつでも可愛く見えるのはなぜだろう?


「私も入るけど、その前にユーキを尋問しないとね」


「そうだった! すっかり忘れていた! 」


「そうですね。大切な事ですからね」


「でもその前に、二人とも髪を乾かしてね。風邪をひいてしまうわ」


「はーい。イリッシュちゃん先に乾かしてあげる」


「ありがとうございます」


イリッシュが椅子に座り、その後ろに愛が立つ。

コームで髪を乾かしている姿はまるで姉妹のようだ。

イリッシュには耳があるがな。


「二人とも、髪を乾かしながらでいいから聞いてほしいの」


「ん? どうしたのルエルさん。何かあったの? 」


「さっきユーキから聞いたけど、娼婦ギルドともめたんですって? 」


愛とイリッシュの目が俺に向く。

目線が痛い! 特に愛。そんなに睨まないで! 不可抗力だったのよ!


「お兄ぃ。説明してもらえるかな? 」


愛の目はニコニコしているが、口が引きつっている。

イリッシュもニコニコしているが、若干目線が冷たい。


「口を切った理由を話せと。濁そうとしたが濁せなかった。すまん」


「詳しい事は聞いていないけど、三人とも危険な事はしないで。私は家族を失いたくないのよ」


「ごめんなさい! 私が悪いの! 私がお兄ぃの前から逃げたから! 」


「私にも責任はあります! アイ姉を見つけたのに、すぐに戻らなかったから! 」


「いや、一番の責任は俺にある。二人を見失った。事の原因も俺だ。申し訳ない」


愛もイリッシュもみんな自分が悪いと。


でも、俺が弱いから。俺がみんなより弱いからダメなんだ。俺の責任なんだよ。

決して弱くはないが、皆を守れるくらいの強さが必要だな。


「三人とも。誰が悪いとか、責任はとかではないの。みんな無事でよかったわ。本当に」


ルエルはほっとした表情で愛とイリッシュを見る。



「愛もイリッシュも俺の事で戦おうとはしないでほしい。さっきも見た通り、自分の事は自分でできる」


「でも、お兄ぃが傷つくの嫌だよ」


「私も、アイ姉と同じです。ユーキ兄が傷つくなら私が先に戦います」


「あら、私も同じ意見ね。ユーキが戦うなら先に私が手を出すわね」


三人とも目を合わせ、微笑んでいる。


「だ、か、ら! 俺の事で心配するな。三人とも女の子なんだから、男に守らせろ! 俺が負けそうになったら遠慮なく助けてと叫ぶから! 」


三人とも俺を見る。さっきより雰囲気はいい感じだ。


「わかったよ。そこまで言うなら先に手は出さない。お兄ぃが負けそうになったら助ける」


「そうですね。私も先に手は出しません。少し待ちます」


「しょうがないわね。男の子だし、譲ってあげるわ」


凄く負けた気分だ。負け犬の遠吠えな感じがする。


「すまないな。俺も男なんで、いつまでも守ってもらう訳にはいかないからな」


これでこの件は終わりだな。


剣とかナイフとか魔法の特訓しないと!


「話もひと段落ついたわね。ここからが本題よ」


いつの間にか愛もイリッシュも髪を乾かし終わり、椅子に座っている。

俺の正面にはルエルが。左前には愛が。右前にはイリッシュが。


何この布陣。三対一じゃないか。



「これから尋問よ、ユーキ。なぜフィルを誘ったの? 」


「そうだよ! フィルは女の子なのに何で! 」


「ユーキ兄は女の子と沐浴したかったんですか! 」


あー、やっぱりそうなるか。予想はしていたが三対一だ。


「その前にみんなに聞きたい。フィルが女の子だって知っていたのか? 」


「フィルとの付き合いは長いの。私は初めから知っていたわ」


「わ、私も知っていたよ! うん。初めから」


愛の目が泳いでいる。嘘だな。


「ごめんなさい。私はルエ姉から聞いて知りました。初めは男の子だと思っていました」


イリッシュは正直者だな。


「俺は一緒に入るまで男だと思っていた。一人称がボク。ややまな板。美少年だと思ったさ」


「ユーキは美少年とお風呂に入りたかったの?」


おっふ。そう来るか。違うよルエルさん。


「俺の国には一緒に風呂に入って、交流を深める文化がある。なぁ、愛そうだろ? 」


愛。ここは同意するよな? 日本の文化あるよね? 銭湯とか知ってるよね?


「た、確かに一緒に入る文化はあるけど。お兄ぃはフィルをずっと狙っていたの? 」


「狙うか! せっかく一緒に暮らすんだ。交流深めようとして何が悪い! 」


「話はわかったわ。交流を深めようとして、誘って、結果二人で肌かで揉み合ったのね? 」


ちょっとニュアンスが違うけど、おおむねあっている所が怖い。


「まぁ、そんなところかな? 俺は揉んでもらってないけど。俺だけ揉んだ」




シュッッッ!




ルエルの右手からナイフが飛んでくる。


俺はとっさによけたが、右頬に一筋の切り傷を残し後ろにナイフが飛んでいく。



あ、危ない! ルエル本気か!



「ごめんなさい。ちょっと手が滑ったわ」


「ルエルさん、惜しい」


「ルエ姉、もう少し右です」


「あ、危ないじゃないか! あとちょっとで刺さったぞ! 」


「大丈夫よ。少し刺さってもイシッリュが治すわ」


「私、今魔力無いので治すのは明日の朝になりそうですが」


「だったら私がビンタで治してあげるよ。お兄ぃビンタ好きでしょ? 」


おーい。三人ともひどいね。もう少し優しくしてくれてもいいんじゃ?


「で、ユーキ。これからどうするの? 」


三人が俺をにらむ。


「と、申しますと? 」


「状況はどうあれ、ユーキは女の子と裸で触れ合ったのよ。しかも一方的に」


「お兄ぃ! ひどい! 浮気者! 」


ちょっと待て! 俺はフリーなのに浮気者ってなんで?


「ユーキ兄。あんまりです。私、悲しいです! 」


イリッシュはちょっと涙目だ。本気で悲しんでいるようだ。


「三人とも、俺にどうしろと?」


「そうね。私達三人とフィル、合わせて四人にそれぞれ一つ。何でもでも言う事を聞いてもらうわ」


「拒否権は? 」


「あると思うの? 」



ですよねー。いったいどんな依頼をされるのか。



大した内容じゃなければいいのだけど……



「無茶なお願いはするなよ」


「ユーキの態度次第ね。二人とも、同時にお願いしないようにね」


「はーい! お兄ぃ! すっごいことお願いするから! 」


「私も! ユーキ兄。 期待してくださいね! 」



イリッシュ、どう期待しろと?



「話はまとまったわね。アイ、フィルを呼んできてもらえるかしら? 」



「オッケー。今、呼んでくるね! 」



愛は階段を駆け上がり、二階へ行く。


今夜が峠だな! 生きて帰れますように!





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