表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/142

第053話 ~火魔法と制服~



「やっぱりそうか。目的はなんだ?」



イリッシュは一歩一歩俺に近寄ってくる。

ゆっくりだ。両手には何も持っていない。手を広げ、俺を見ながら歩み寄ってくる。



そして、イリッシュは俺の目の前まできて、抱きついてくる。

頭を俺の胸に押し付けて、両手で俺の腰をギュッとする。



「私、ルエ姉を助けたいの。このままじゃこのお店なくなっちゃうから」



おっと、意外な展開。

てっきりルエルと敵対するかと思いきや、逆に助けたいと。



「ルエルの事、店の状況は知っているのか?」


「はい。昔から知っていました。そして今の状況も。ルエ姉を助けたいの。お願い、ユーキ兄もいっしょ」


俺はイリッシュが話し終わる前に声を出してしまう。


「大丈夫だ。俺も愛もいる。それにイリッシュもいるんだ。絶対大丈夫だろ?」


「はい。そうですね。大丈夫です」



イリッシュの目から涙が少しだけ流れる。

俺はイリッシュの流れた涙を指でぬぐい、手で拭いてやる。



「ごめんなさい。悪気はなかったんです」


「意図的にこの店に来れるように仕組んだのか?」


「意図的?どういうことですか?」


「イリッシュが売られた事や奴隷商人から俺が買った事とか」


「いえ、特に何もしていませんよ。奴隷商人に売られ、移動中に私は逃げて、あっさり捕まって、ユーキ兄に買われました」



あれ?意図的ではなく偶然なのか。

たまたまなのか?



「もし、あの場で俺がイリッシュを買わなかったら?」


「そのまま奴隷ギルドで販売されていると思いますよ」


「ルエルの店に来たのは偶然?」


「はい。偶然です。でもルエ姉の事は知っていますし、助けてあげたいです」


あぶね!セーフ!即決で購入して正解!グッジョブ俺。

そうか、たまたまか。



「そうか、この店に来れて良かったな」


「はい。良かったです」


「今度、時間があるときにでも、詳しく話を聞かせてもらえるか?」


「はい。ユーキ兄には話しておきたいことがあります」



イリッシュは俺に抱き着いて、上目遣いのまま俺を見てる。

いやん。可愛い。ケモ耳がピコピコしている。

しかし、イリッシュもなかなかの美人だな。


そんな目で見られていると、俺もドキドキしちゃうじゃないか。

顔、赤くなっていないかな?





「たっだいまーーー!今戻ったよ!お待たせ!」


「遅くなってごめんなさい。待ったでしょ?」




このタイミングで来るか!



「お兄ぃ!なんで抱き合ってるの!!」


「ユーキ、説明してもらえるわよね?」




愛がこっちに向かってくる。あ、右手に力を溜め始めた。


「イリッシュちゃん!ちょっとだけお兄ぃからはなれてね!」


「アイ姉!ちょっと待って!ユーキ兄は悪くないの!」


「イリッシュ。この状況では全てユーキが悪いの。イリッシュは心配しないで」



愛は軽くダッシュしながら俺につかずいてくる。

躱すか、避けるか、我慢して一発もらうか。



「お兄ぃ!覚悟!イリッシュちゃん直伝!火の魔法!『火炎拳(かえんけん)』」


叫んだ愛の右手は炎に包まれる。あの状態で手は熱くないのであろうか?


っと、相変わらずストレートパンチのみだな。



「愛。その拳はすごいと思ったが、攻撃が単調だぞ」


思わず避けてしまった。だって熱そうなんですもの。



「避けるな!動かないでね!」



愛は俺のあごを狙ってくるが、俺は上半身のばねのみで躱す。

ルエルのナイフ捌きの方が早いね。愛は攻撃が単調だ。



「はぁはぁ、動かないでって言ったのに!」


「もういいだろ。何で愛は魔法使えるんだ?」


「さっき、ミシンを動かす時にイリッシュちゃんに魔法の基礎を習ったの。自分の属性魔法を練習したらこれができた!」


「まぁ、魔法はイメージらしいからな。でも、すごいな。その炎って自分は熱くないのか?」


「自分は大丈夫みたい。それで!なんで抱き着かれていたの!!」


「そうね。そこが重要ね」



どう説明したらいいのか。

ナイフで模擬戦やったら抱き着かれたと話すか?



「ルエ姉、さっき怖いお客さんが来て、ナイフを出されたんです。ユーキ兄が助けてくれて。お客さんは帰ったんだけど、私怖くてユーキ兄が慰めてくれたんです」


「え!ナイフ出されたの!イリッシュちゃん大丈夫だった?」


「そんなことがあったの。二人ともけがはない?」


「あぁ、問題ない。商品もしっかりと買ってもらったしな」


「そうか!じゃぁ、今回は大目に見てあげる!」



本当にイリッシュはハイスペックだな。

できないことって何もないんじゃないか??



「さて、みんな揃ったし仕事の話をしてもいいか?」


みんなでさっきまで座っていたテーブルに戻り、話を進める。


「仕入れ品が届いたので商品の入れ替えと、店のディスプレイ、カーテンの取り付けなどしていこうと思う」


「賛成!早くやろう!」


「カーテンはしっかりとできました。準備できています」


「検品も、在庫集計も終わってるわね」


「だが!その前に一つ皆に決定事項を伝える!」


「何かしら?」


「なんですか?」


「何が決まったの!」


「フェアリーグリーンの制服を決めた!これだ!!」



俺は袋から じゃじゃーーん と制服取り出し、皆に見せる。


今日からみんなこれを着てもらうぞ!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当作品の評価&感想は最新話の最下部より可能です!
是非よろしくお願いいたします。


↓小説家になろう 勝手 にランキング参加中!是非清き一票を↓
清き一票をクリックで投票する
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ