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第004話 ~魔法と鍋の蓋~

HE・N・TA・I  ヘンタイ  変態



俺は恐らくヘンタイではない。ちょっとエッチなところもあるが、決してアブノーマルではない。



「いいや、俺は紳士だ。決してヘンタイではない」


「説得力に欠ける発言ね。その格好で紳士だなんて」



裸にお盆。確かに不審者っぽいな!いやいや『ぽい』ではない、まるで不審者だ。


「確かに、今はこんな格好だが、さっきまで服は着ていたぞ」


「あなたの言葉をそのまま信じる訳にはいかないわね。そうね、いくつか質問をさせて」


「あぁ、いいぞ。答える代りに、俺にも質問をさせてほしい」


「いいわよ。交互に質問と回答をしましょう。ただし、あなたがちょっとでも怪しいと思ったら、こうなるわ」



また、耳鳴りがする。さっきからなんだこの耳鳴りは・・・。



『風の聖霊よ。 我に力を与えん。  ウインドクロウ!』



彼女の右手に何かが集まっていくように見える。嫌な予感がする。俺はとっさに手元にあった鍋の蓋を楯のように構える。


次の瞬間、構えた鍋の蓋に衝撃が走った。大きな音はないが、何かに切り付けられた衝撃だ。鍋の蓋を恐る恐る見ると、何かに削られた跡がついている。今のは何だったんだ?


「驚いた。まさか防がれるとは思わなかったわ。あなた、反射神経いいのね」


「こっちも驚きだ。今のはなんだ?何を飛ばした?」


「秘密。いずれ知る事になるわ。あなた、名前は?」


「俺は勇樹。木下勇樹きのした ゆうきだ」


「そう、ユーキは貴族かしら?」


「貴族?いや、俺は一般市民だ。いまどき貴族はいないだろ」


「ここに、何を求めてきたの?」


「ここに、というか、用具箱からバケツと雑巾を取ろうとしたら・・・」


「うちの用具箱から、バケツと雑巾を盗ろうとしたのね?」


「そしたら、なぜか裸でここに立っていた。本当に、気が付いたらいたんだ」


「裸でソコが立っていた・・・。気が付いたらイったのね?」




次の瞬間、彼女の右手から一本のナイフが俺に向かって飛んできた。


ちょーーーーー!!!!!


危機一髪、まだ手に持っていた鍋の蓋で何とかナイフを防ぐ。ナイフを見ると綺麗な銀色。きっとシルバーだな!  って、そんな事考えている場合ではない!下手したら刺さってるぞ!俺に!



「お、落ち着け!いきなり刃物を投げるな!なぜ今の説明で攻撃するんだ!」


「今の説明だから、攻撃したのよ。あなた、危険だわ」


「俺の話も聞いてくれ!それからでもいいだろう!」


「聞く気はないわ。無駄ですもの」


「こっちは命かかってるんだ!話を聞いてくれ!」


嫌な汗をかく。ここまで命が危ないと感じたのは初めてだ。しかも、その選択は相手に握られている。こっちは丸腰だ。きっと、彼女はまだ武器を持っているはず。


額から汗が垂れてくる。鍋の蓋を置き、その隣にあった白い布で、額の汗を拭く。


「はぁ、はぁ、まったく、お互い落ち着いて話そう。ふぅー」



次の瞬間、再度彼女の右手からナイフが数本飛んで着る。鍋の蓋はない。


まずい! 防げない!!


俺はとっさに某映画で見た後ろにのけぞるような格好で全てのナイフを避ける。


危なかった!あの映画見ていて良かった!



「ユーキ。だったかしら?あなたの名前は」


「そうだ。勇樹であっている」


「その右手の白い布を今すぐ返して。今すぐよ」


「これか、勝手に汗ふいて悪かったな」



白い布を丸めて、彼女に投げる。すると空中で白い布が広がる・・・。




あ、下着だ。




そりゃ怒るよな。うん、多分俺が悪かった。



「すまん。下着とは知らなかった。申し訳ない」


顔を真っ赤にした彼女は白い布を手に持って、扉の外に出て行ってしまった。



俺、まだ彼女の名前も聞いていないんだよな。

この後、俺はどうなるんだ?とりあえず、彼女が戻って来るまでおとなしくここにいるか・・・。



しばらくすると彼女が戻ってきた。



「ユーキ。とりあえず、これを」


彼女は俺に布を渡してきた。なんだこれは?服か?


「これは?」


「昔、うちに泊めた旅人の忘れ物。男物の服。うちに男物はそれしかないの」


「そうか、助かる。いつまでも裸だと君も目のやり場に困るしな!」



顔を赤くして、下を向いている。しかし、さっきと態度が違うな。何かあったのか?



「よし! ありがとう。服、ぴったりだよ。ところで、今さらだけど君の名前を聞いてもいいか?」



「私の名前はエルフ族のルエル。ユーキは人間族でいいのかしら?」



「ルエルか、かわいい名前だね。俺は人間だけど、人間族かはわからないな」



「自分の種族がわからない人、初めて見たわ。ユーキはいったい何者?本当はここに何をしにきたの?」


「さっきも言ったが、自宅の掃除用具箱からバケツを取ろうとしたら、ここにいたんだ。ここはいったいどこなんだ?」


「えっと、ここはレイゾン王国の南地区にある、私のお店。もっと正確に言うとお店の倉庫。あなたの後ろにあるのは、私のお店の掃除用具入れよ」



父さん。俺、異世界に来てしまったかも。今度手紙、書くね・・・。


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