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第048話 ~メガネとイヤーフック~


「この服かわいくなーい?」


「いいじゃん、かわいいじゃん。こっちもかわいくなーい?」


「かわいーいー。向こうにも色違いあるよ」


「お、見てみようよー」


売り場には女性のお客さんが多い。というか、男性は俺だけだ。

キャミみたいな薄い布の服に、下着まで売っている。


ルエルさん。ちょっと俺、店出ていいかな?



ヒソヒソ


「(男がいるわ。いやねー)」


「(あれでしょ。ああ見えて女性もの着たり、履いたりしてるのよ)」


「うそー。それって超ヘンタイじゃーん」


「(っし!声が大きい!ほら見て、あの目つき。いやらしい)」


「(本当だ。早く買い物して帰りましょう。きゃっ!こっち見た!いやらしい!)」



ルエルさん。帰っていい?

今直ぐにこの店出たいのですが。

あそこのお客さん、俺の事ヘンタイって絶対に言ってたよ!



「ユーキ。気にしないで。お店の為よ。さぁ、好きなだけジロジロ見ていいわ。お客さんにはあまり見ないでね。ヘンタイ扱いされるかもしれないから」


「直ぐ見て、すぐ出るぞ。俺が思っていた店とはちょっと違う」



俺はそんなに広くない店を一通り見る。服、雑貨、アクセ、装備回り。

こうしてよく見ると激可愛!のアイテムはなく、花や星、動物や木などをモチーフにしたアイテムが多いな。

服はピンク系が多いい。自然とお客さんも同じような感じの人が多くなるのか。どの世界にもいるんだな。


お、メガネあるのか。この世界では初めて見た。

フレームの所に魔石がある。魔道具なんだなこいつ。

何となく、メガネを手に取りかけてみる。鏡が欲しい。


どこかに鏡はないかな?お、あったあった。意外といけてるな。俺ってメガネ似合うかも!

でも、視力は両目と1.5ある。俺にはメガネは不要だな。



「いらっしゃいませ。メガネをお探しですか?」



店員が声をかけてきた。



おふっーー。白とピンクをベースにしたメイド服みたいだ。これでもか!と胸が強調されている。

目のやり場に困ります店員さん!!



「いや、何となくかけてみただけだ。これは魔道具なのか?」


「そうです。翻訳メガネといって、この国の文字を認識できるようになります」


「ほ、本当ですか!!」


俺はつい店員さんの両肩を鷲づかみにし、叫んでしまった。

甘カワロリッ子スタッフ(俺が命名)は、頭をガクガクさせている。


ま、まさかこんな所にあるとは!欲しい!これは欲しいぞ!!


「お、お客様、あ、落ち着いてく、ください。わ、私のあ、頭が、まず」


っは!


「すいません。ちょっと取り乱してしまった。大丈夫ですか?」


「大丈夫です。普段からちょっとふらふらしているので」


それは貧血気味って事か?


「このメガネはどこにでも売っているのか?」


「多分売ってるとは思いますが、この店以外の店舗では見たこと無いですね」


「貴重品なのか?」


「この国に住んでいる住人は、この国の文字を習い、読み書きできるようになるので、正直あまり売れないのですよ」


「文字を学ばないものやほかの国の人だったらほしいのでは?」


「まず、文字を知らないと翻訳されません。それに他の国からこの国に訪れる方はこの店にあまり来ないようなので」


確かに外国行ったら、少なくとも俺はこの店には入らないな。

たとえ入ってもすぐに出る。


「そうか。若干不良在庫に近いアイテムなんだな」


「お客様はこのメガネがとても良くお似合いですね!」


「やっぱりそう思うか!似合ってるよな!これ」


「一つ五万ジェニですが、今回特別に一万ジェニでいいですよ。おまけも付けます!」


安い!この国の文字が読めて、俺に似合うメガネが一万!これは買いでしょ!!



「ちょっと待ってくれ。連れがいるので、聞いてくる」


俺は奥の方で何かを見ているルエルに声をかける



「ルエル、ちょっといいか」


「ひゃい!あ、ユーキ。どうしたの?あら、そのメガネいいわね」


何をびっくりしてるんだ?

あ、ルエルの手には白や水色の三角布が。失礼しました。



「えっと、このメガネこの国の文字を翻訳してくれるらしいだ。買ってもいいか?」


「翻訳メガネね。ある事は知っていたけど、初めて見たわ。普通の眼鏡とあまり変わらないわね」


俺は中指でメガネのフレーム中央部を上にクイっと上に上げながら話す。


「普段は5万ジェニなのを、今回1万ジェニにしてくれ、さらにオマケモつけてくれるって」


「魔道具で1万はかなり安いわね。多分そのメガネの仕入れ値ねだと思うわ」


「借金の身であまり言えないんだが、これはぜひ欲しい」


「いいわよ。お金だったらまだユーキも持っているわよね?そのお金はユーキの稼いだお金なので、自由にしていいわよ」


「悪いな。会計してくる」



俺はさっきの店員さんに会計を頼む。



「ありがとうございます!いやー、助かりました。もう一年も売れていなくて。こちらがおまけです。よかったら今登録します?」


箱を空けるとイヤーフックが二つ入っている。

シンプルなシルバーのイヤーフックだ。

これも魔石がついている。


「これはなんだ?」


「これはコールイヤーフックと言って、耳に着けて使います」


この魔道具は二つで一組の魔道具で、耳に付けて使う物らしい。

お互いの魔力を記録して、コール音を決める。

そうすると、遠くにいても会話ができるという便利アイテムだ。


「こんないいもの何でおまけなんだ?」


「見たところ、お客様はこの世界に慣れていない感じがします。翻訳メガネを欲しがるところも。きっと、このアイテムをプレゼントすることにより、お客様はきっとまたこの店に来ると思います。その時は御一人ではなく、複数の方と来るでしょう。まぁ、先行投資ですね」


す、鋭いな。俺が異世界人ってあれだけの会話で感じたのか?

さっきまでニコニコしていた目が、急に鋭くなっている。さっきまでは営業スマイルってやつか。


「あんたも商売人の顔だな」


「お店、好きですから。でも、儲けないといけませんね」


「いま、登録するからちょっと待っててくれ」


俺はさっきの所で何かを考えているルエルを会計場所に連れてくる。


「この魔道具がプレゼントらしい。今この場で登録できるんだと」


「コールイヤーフックね。これって普通に買ったら結構なお値段なんだけど?」


「いや、今回だけの特別品らしい」


「ではそれぞれ一個ずつ登録しますか。フックを握ったら魔力を流してコール音を登録して」


「コール音はなんでもいいのかしら?」


「何でいいわね。大体相手の名前を登録することがほとんどね。たまに『ハニー』とかいるけど」


「じゃぁ私からやるわね」


ルエルはフックを握り、目を閉じる。


「ユーキ。聞こえますか?」


そんなんでいいのか?思ったより簡単だな。

さて、次は俺の番か。



俺もフックを片手に魔力を流す。

このフックはルエルの耳に付けるのか。あのピンとした柔らかそうな耳に。



「ルエル。聞こえるか?」


俺もさくっと登録が終わり、お互いに交換する。



右耳にでもつけておくか。




「登録は終わりましたね。では、コールする時は耳に魔力を流すイメージで、先ほどのコール音を言ってみて下さい」




「ユーキ。聞こえますか?」


おぉ、耳にルエルの声が入ってくる。


「あぁ、聞こえるぞ。これ凄いな」


「魔力を流すのをやめると切れますので、ご注意ください。あと、長い通話も」


「長く話すと問題でもあるのか?」


「魔量が尽きます。それに、魔石にダメージがあるかもしれません」


そうか、使いすぎるとだめなんだな。

まぁ、あしばらく使うこともないし、別にいいか。


ルエルはとてもうれしそうに、にこにこしている。

頬も少し赤く、もじもじしてるな。



「では、お会計ですね。一万ジェニちょうどになります」


「じゃ、これで」


「ちょうどですね!ありがとうございました!」


俺は買ったメガネを服の胸辺りにひっかける。

ポケットもないし、バックもない。ケースもない。

でも、普段は使わない。バック位持って来ればよかったな。


胸にメガネをかけると、なんとなく業界人ぽくなる。



「ルエル。買い物も終わったし、店を出るか」


「もういいのかしら。私は特に買う物もないし、大丈夫よ」


俺たちは店を出る。


「ありがとうございましたー!またお越しくださいませ!!」



元気のいい店員だったな。名前くらい聞いておけばよかったか。

多分、色々と情報を持っていそうだな。今度また来てみよう。

できれば営業時間外で、店の外で会いたいものだ。

あ、デートとかじゃないよ。情報収集だよ。




「さて、ギルドに向かいますか」


「ギルドはすぐそこよ。行きましょう」


ルエルは俺の手を引き、走っていく。


「ルエルそんなに急がなくてもいいよ。転ぶぞ」


「いいのよ!私今、とても幸せよ。男の人と一緒に買い物するの夢だったの!」


さらっと恥ずかしいこと言っちゃった。

純なところがあるのね。俺も買い物は楽しいが、店の為。

そう、店の為であり、帰る為。


でも、他の人から見たらデートだよね。



しょうがない。

しばらくデートにお付き合いしますか。



「ルエル、二人で出かけるのはデートだな。この世界にデートと言う単語はあるか?」


「デート。初めて聞いたわ。ユーキ、デートは楽しいわね!」



俺はルエルに手を引かれ、ギルドに走っていく。







ルエル。普通に足速いよ。

そろそろ俺、足もつれて転ぶよ。。



あ、もう無理!




ズザーーーーー!



見事に転ぶ。


そりゃあの速さは無理だろ。

誰だって転ぶよ。ごめんなルエル。





顔をあげ、一緒に転んだルエルの方を見る。


そこにはスカート部がまくれ上がり真っ白な三角布が見える。



おぉ。ビューティホー。

今日も白いね!雲のようだ!




「ユーキ。早く立って」


ルエルはスカートを戻し、すぐに立ち上がる。


ここは下ネタしない方がいいな。ルエルの目が怖い。

俺も立つ。力を入れ、立つ。足が痛い。



「ユーキ。足遅いわね。身体強化してないでしょ?」


「できない。というか、買い物する時に身体強化必要か?」


「女の子はね。好きな男の事と接する時は全力よ!」


「俺と接する時は、普通でいいよ。心配するな」








俺はルエルの手をとり、歩き始める。



ギルドはもうすぐだ。



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