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第047話 ~ミシンとエルフの誓い~



みんながテーブルに集まっている。


「ルエル、このミシンちゃんと動くのか?」


「ずっと使っていなかったけど、お母さんが使っていたので問題ないはずよ」


見た感じ日本にあるミシンと似ている。

違うところもあるが、大まかな使い方は同じだろう。



「お兄ぃ、ミシンで何するの?」


「ん?この店は暗いから、窓を全部開けて、そこにカーテンをつけようと思う。ひだを付けるのにミシンは必要だろ?」


「なるほど!さすがお兄ぃ。ただの布一枚より、ちょっとだけ可愛くなるね」


「ルエルはミシンを使えないので、俺が使い方を覚えようと思うんだが」


「ユーキ兄。私、このミシン使えます」


「本当か?イリッシュ」


「はい、家の事は何でもできるようにと、母より教わりました」


「それは助かる!じゃぁ、この紙に描いた感じでこのカーテンを作り直せるか?」


「ちょっと待ってください」


イリッシュは俺の描いたひだ付のカーテンのイラストを見ている。

多分、この世界にもこんな感じのカーテンはあるだろう。

イリッシュは元貴族だ。実家に同じようなカーテンはあったんじゃないか?


「大丈夫です。この位だったら作れます!」


「よし、カーテンの作り直しはイリッシュに。窓への取り付けは愛と二人でやってくれ」


「高い所の窓は倉庫に脚立があるから、それを使うといいわ」


「了解!お兄ぃ達はどうするの?」


「俺とルエルは新しい商材の仕入れに行ってこようと思う。さすがに文字が読めない状態では俺一人で行けないし、ルエルの店に置くアイテムはルエルに確認したいからな」


「わかったわ。だったらギルドに行きましょうか」


「ルエルさん。もし、お客さん来たら?」


「そうね、私は不在だけど、販売してもいいわよ。値段はイリッシュが読めるわね」


「はい!大丈夫です!簡単な計算と読み書きもできるので、安心してください!」


イリッシュ。できた子だ。なんていい子なんだ。

こんないい子を売ってしまうなんて!親の顔が見てみたいわ!!


「お兄ぃ。お土産よろしくね!」


「あまり期待はするな。では、行ってくる」



俺はルエルと一緒に店を出る。

まだ、昼を過ぎたばかりで通りには人が多い。でもこの店は客がいない。


「ルエル、ギルドに行く前にこの辺りの店で女性向けの可愛いアイテムを売っている店に寄れるか?」


「だったらいい店があるわ。ギルドに向かう途中だから、寄っていきましょう」


俺はルエルと一緒に街を歩く。半歩ルエルが先に歩き、俺が追いかける。


人ごみの中、はぐれないようについていくのはちょっとしんどいかな?

見失ったら最後。俺は世界の知らぬ土地でのたれ死んでしまう。

まぁ、帰り道がわかるから大丈夫だと思うがな。



「ユーキ、しっかりついてきて。はぐれてしまうわ」


「そ、そんなこと言ったって。この人ごみじゃ」


「しょうがないわね」



ルエルは俺の手を取り、しっかりと握ってくれる。

温かいな。そして華奢だな。少しドキドキしてしまった自分が恥ずかしい。



「ほら、ユーキ。こっちよ。このまままっすぐ」


「あ、あぁ。わかった」



ほんの少しだけ握り返すとルエルも握り返してくれる。

俺ってまだ彼女いないよな。でも、ここは異世界。ルエルはエルフ。俺は元の世界に帰る人間だ。

一時の感情に振り回されるほど、ガキじゃない。


後ろ姿のルエルは確かに美しい。あ、耳の先が赤くなってる。

照れてるな!絶対照れてる!後で聞いてみよう。



俺は手を引かれ、人ごみを抜ける。



「もう大丈夫ね。しっかりしてよユーキ。でも、なんで今日はこんなに人が多いのかしらね」


「いつもはもっと少ないのか?」


「いつもだったら、もう少し遅い時間に混むはずなの。何かあったのかしら?」


人ごみを抜けてもまだ手を離さない。

ルエルさん。いつまで握ってるの?俺もそろそろ恥ずかしいよ?



そんな事を考えていると、知らない誰かが俺たちの前に立っている。

金髪の縦ロールな髪型。ヒラヒラドレス。とがった耳。

エルフ族の貴族かな?何か俺たちに用があるのか。



「あら、ルエルじゃないの。相変わらず、下級の身なりね」


おっと。ルエルの知り合いか?なんだ、この上から目線は。


ルエルも気が付いたようだ。あわてて手を放した。

確かに知り合いに見られたら、恥ずかしいもんね!



「ルージュ。私に何か用かしら?今、忙しいの。話だったら後にしてくれるかしら?」


「あら、お金も無ければ時間もないの。残念ね。あなたの店は相変わらずね。かわいそうに」


「大きなお世話よ。私は急ぐの、さよなら」


「そうそう、あなたにお伝えしておくことがあるわ。わたくし、そろそろ意中の人とエルフの誓いができそうですの」


「そう。良かったわね。それが何か?」


「あぁ、、一人身はつらいわね。あなたの事ではなくてよ。気にしないで」


「もういいかしら?話は終わった?」


「あなたも早く、エルフの誓いができる方を見つけるのね。それでは、ごめんあそばせ」


内容は良くわからないが、ルエルがバカにされたんだなきっと。

イライラするから反撃でもするか?どうするルエル。


俺はルエルの方を見る。

ルエルの頬が赤い。怒っているのか?



「ルージュ。私はエルフの誓いをもう終わらせたわ。悪かったわね、あなたより先で」


「なんですって!そ、そんなことが!う、嘘おっしゃい!」


「嘘ではないわ。誓いは終わった。真実よ」


「きぃぃー。なまいきですわね!わたくしも今夜誓いをしてきますわ!ごめんあそばせ!!」



嵐のように去って行った。

一体なんだったんだろうか?俺のセリフもなく、完全に二人の世界に入っていた。



「ルエル。あんなんだあれは?」


「あの子はルージュ。私と同じエルフ族。両親は大商人で、そこの一人娘よ。昔は性格良かったのに、今じゃあんな」


「なんだ。友達か。面白い奴だな」


「昔みたいに仲良くできればいいのだけど」



ルエルの顔が曇っていく。

二人の間に何かあったのだろうか?


「なぁ、エルフの誓いってなんだ?」


ルエルの目が泳いでいる。

頬も赤くなり、耳の先まで真っ赤だ。


「ユーキはもちろん、エルフの誓いは知らないわよね?」


「あぁ、初耳だ。誓うと何かあるのか?」


「えっと、簡単に説明するわね。驚かないでね。逃げないでね。ちゃんと話を最後まで聞いてね」


「ずいぶん念を押すな。大丈夫だ。俺の心臓は鉄で出来ている。ちょっとの事では驚かないよ」



「いい?話すわよ」


「いいから、早く話せ」









「エルフの誓いは婚約の誓い。お互いに口づけをして、契約をするの」


ルエルの顔が赤い。少し下を向き、上目使いで俺を見ている。




「そうか。コンニャクの違いか。お互いに口頭で、契約をするんだな」




俺はルエルを残しダッシュした。

きっと今なら世界記録を出せる。この速さは尋常じゃない。

時速30キロは出てるな!




と、その時左手に違和感を感じる。


ルエルが俺の腕を握っている。

ルエルも足が速いのね。俺も結構速いと思ったけど。


「ユーキ。もう一度言うわ。私の目を見て」


はい。見ます。

真剣な眼差しに、俺は腹をくくる。



「エルフの誓いは婚約の誓い。お互いに口づけをして、契約をするの」


「もしかして、あのGの時か?」


「そうよ。事故だったかも知れない。古い考えかもしれない。でも、でもね・・・」


ルエルは少し涙を流す。

俺は、指で、涙をぬぐう。


「すまん。今度はしっかり聞いた。逃げて悪かった。びっくりしたよ」


「ごめんなさい。でも、あの時からずっと言い出せなくて」


「そうだよな。言い出せないよな。ルエルはどうしたい?」


「私は今まで通りでいいわ。みんなで一緒にいる時間が楽しいもの」


「そうか。少し俺も時間が欲しい。愛とイリッシュにはしばらく話さないでほしいがいいか?」


「いいわ。私も話ずらいし」




俺とルエルの秘密ができてしまった。


隠し事は嫌いだ。しかし、この件は問題が多すぎる。

店も事もあるが、俺は元の世界に帰る。それは絶対だ。

問題の先送りだな・・・。



二人、黙々と歩く。

この状況でいったい何を話せばいいのか・・・。

早く店にtかないかな!間が持たないよ!







「ユーキ、着いたわ。ここがこのあたりで一番の雑貨屋。私もたまに来るわ」




目の前にはピンクをベースにしたフリフリな店。

お店に入っていくお客さんも、フリフリ。

なにこれ?この世界でもロリータ系ってあるの?



「さぁ、ユーキ入るわよ!」



俺、絶対場違いだよ。

は、入りずらい!!!!


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