第044話 ~在庫集計と事故~
みんなでルエルから在庫について聞く。
「アイテム名、販売価格は全て商品についているわ。倉庫も同じ。箱に入ったままのアイテムは箱にタグがついているの。そのアイテムの仕入れ値は私が後で記入しておくわ」
「俺と愛は字が読めないので、読み方をルエル、イリッシュ。書き方を俺と愛でやっていこう。終わったらテーブルに集合で。在庫数は倉庫と店舗どっちが多いんだ?」
「売り場の方が多いわ」
「じゃぁ、俺とイリッシュが倉庫をカウントして、終わったらこっちに戻って来るよ」
「お兄ぃ!イリッシュちゃんに迷惑かけないでね!」
「愛もルエルに迷惑かけるなよ!」
「イリッシュ、あまり無理しないようにね」
「はい、ルエ姉。無理はしませんが、頑張ってきます!」
こうして、俺とイリッシュは倉庫に。
愛とルエルは店舗で在庫カウントを始める。
「イリッシュ。あとどのくらいある?」
「えーと、あと20箱分くらいです」
「まだまだ在庫はあるな。これって不良在庫か?」
「読みます。 黒のローブ、大きめ、5000ジェニ、10枚」
「黒のローブ、大きめ、5000ジェニ、10枚。はい、書いた。」
たんたんと作業を続ける・・・。
イリッシュが声をかけてくる。
「ユーキ兄、お願い。させて」
「イリッシュ。いいのか?後悔しないか?」
「後悔しません。でも、こんなところ、他の人には見せられないですね」
「そうだな。見せられないな」
「ルエ姉もアイ姉も向こうで頑張っているのに、申し訳ないです」
「でも、今しかチャンスは無いと思う。不安か?」
「不安です」
「大丈夫。不安なことはない、何かあったら俺が何とかするから」
「絶対に、向こうの二人には内緒にしてください」
「わかった。俺たち二人の秘密だ」
俺は、イリッシュに近づく。
イリッシュは上目使いで俺を見る。
少し、涙が瞳に溜まっている。銀色に光る大きな瞳は美しいな。
カタッ
ん?向こうのほうで音がした?気のせいかな?
「いいぞ、イリッシュ始めてくれ」
イリッシュは目を閉じる。
顔はさっきよりも赤く、息が荒くなってる。
「っん。 はぁ・・・。 お、音が出てしまいますね」
「気にするな。たいした音ではない」
イリッシュは一生懸命、手に力を入れている。
俺も、イリッシュに負けないよう、力を入れる。
「イリッシュ、なかなか上手いじゃないか。何度もしたことがあるのか?」
「そ、そんな、何回も経験したわけじゃ、あ、ありません。お、男の人には初めて、ですね」
イリッシュは額に汗を流しながら手を動かしている。
「も、もういいですか?」
「もう少し。もう少しで終わると思うから、あと少しだけお願いできるか?」
「が、頑張ります。こ、こんな感じでがいいですか?」
「イリッシュはうまいな。おかげで元気になるよ」
「あ、ありがとう、ご、ざいます。も、もう限界です、ごめんなさい」
そう言うとイリッシュは俺から手を放す。
「はぁ、はぁ、はぁ、す、少し休んで、いいですか?疲れました」
ガチャ!
「イリッシュちゃーーん!!ど、どうしたの!お兄ぃ!一体ナニがあったの!」
愛が急に倉庫へ入ってくる。まるでタイミングを見計らっていたかのように。
「イリッシュ。どうする?この状況だと説明した方がいいか?」
「アイ姉、ユーキ兄に・・・・」
「お、お兄ぃにナニされたの!」
俺はあわてている愛に説明をする。
在庫カウント中に箱が崩れ、イリッシュに落ちそうになったこと。
俺がイリッシュをかばって、箱の直撃をくらった事。
頭から血が出たのを、イリッシュが回復してくれたこと。
でも、そのことで心配をかけたくないので、二人には秘密にしてほしいと話したこと。
「全部ばれたが、イリッシュは俺の為に回復してくれたんだ」
「イリッシュちゃーーん!ありがとう!お兄ぃの頭、良くしてくれて!」
何かイラっと来るな。なんでた?
愛にバカにされた気分になってしまった。
「アイ姉、ごめん。私の不注意でユーキ兄に怪我を」
「大丈夫!お兄ぃはこの位、何ともないから!一晩寝れば全回復するよ!」
この世界はゲームではない。一晩で回復しないから。
でも、魔力は回復するっポイな。なんでだろ?
「二人とも、話いいか?イリッシュは魔力欠乏になってるかも。一度店に戻ろう。カウントは思わっている」
「オッケー!店の方のカウントも終わったよ。さ、イリッシュちゃん、店に戻ろう!」
俺はイリッシュをお姫様だっこで抱え、店に戻る。
小さいな。
胸じゃないよ、背丈だよ。
そして軽い。華奢な女の子なんだな。
「すまなかった。無理させてしまったな」
「いえ、そんなことはないです」
イリッシュの頬が赤い。耳がぴくぴくしている。
「ユーキ兄に抱っこしてもらうのが、頑張ったご褒美ですね」
「何か言ったか?」
「いえ、何も言ってません。もう少し、魔力を上げるように、頑張ります」
「あぁ、俺と一緒に修業でもするか」
「ルエルさーん、イリッシュちゃんが・・・」
こうして、お店の在庫のカウントも終わり、再びテーブルにみんなが集まる。
さて、この集計をどうまとめるか。
「ユーキ、今気が付いたのだけど」
「どうしたルエル。事件か?」
「事件ね。あなたたち二人の書いた文字が、全く読めないの」
し、しまったーーー!
そうだよね。ここに書かれた字は 日本語。
日本人じゃないと読めないね!
「えっと、ごめん。これじゃ集計難しいな」
「お兄ぃ!提案!」
「はい。愛。名案を希望する」
「私とイリッシュちゃんで集計する。私が読んで、イリッシュちゃんにこっちの文字で書いてもらう」
「それなら、解決するな。じゃぁ、二人に集計をお願いして、俺とルエルは店内をどうするか考えよう」
「わかったわ」
「アイ姉。私、頑張りますね!」
「よーし!張り切って集計しよう!行くよ、イリッシュちゃん!」
俺とルエルは店内のレイアウトと展開する在庫を確認。
愛とイリッシュは集計のまとめを。
「よし!ルエル、俺らも頑張りますか!」
「そうね、頑張りましょう!」
字がわからないのは不便だ。
恐らく、解決する魔道具はあるはず。
ブロッサムにでも聞いてみるかな!




