第042話 ~聖属性とルエルのお店~
「イリッシュ。話しておきたい事がある。イリッシュには隠し事をしたくないんでな」
俺は、真面目な顔でイリッシュを見る。
イリッシュは俺の方をしっかりと見てくれている。
耳が可愛いな!後で触らあせてもらおう!
「ユーキ兄。話しておきたい事って?」
「もしかしたら、愛から聞いているしれないが、俺と愛はこの国の人間ではない」
「外国の人って事ですか?」
「いや、この世界の人間ではなく他の世界から来た人間。つまり転移者なんだ」
「そうなんですか。このあたりの人では無いと思っていましたが、異世界の人だったんですね」
「あまりびっくりしていないな。もっと『えぇぇぇ!!そ、そうだったんですか!!』くらい、リアクションしていいんだぞ」
「ごめんなさい。実は初めて会った時からそんな気がしていたので、びっくりしませんでした」
「イリッシュちゃん知っていたの!こっちがびっくりだよ!」
「私達銀狼族は人の出す魔力を少しですが読み取れます。二人の魔力は感じたことのない魔力だったので、もしかしたらって考えていました」
「そうか。らな話は早いな。俺と愛はいつかこの世界を離れる」
「それは寂しくなってしまいますね」
「それでも。その時までは一緒にいることができるわ。イリッシュもその時までみんなでいる時間を大切にしましょうね」
「はい!いつまで一緒にいることができるかわかりませんが、大切にします」
「俺からは以上だ。ルエル、食事もひと段落ついたし、イリッシュの傷、手当てしてもらえるか?」
「ええ、いいわよ。体もきれいになったし、消毒とお薬つけましょうね」
「ルエ姉。薬はいらない」
「イリッシュちゃん!お薬塗った方がいいよ!たくさん傷ついてるよ」
「アイ姉。私にはこのくらいの傷、何でも無いのです」
「どういうことだ?」
「いい機会なので、皆さんにも知っておいてもらった方がいいですね」
イリッシュは話し終えると、席を立つ。テーブルからちょっと離れてこちらを向く。
「今から見せるのはここだけの秘密にしてください。絶対に他の方にお話しはしないでくださいね」
イリッシュは目を閉じ、両手を広げる。
「いきます『『光の聖霊よ。我に力を。ライトヒール!』」
光がイリッシュに集まっていき、淡い光に包まれていく。
傷がふさがっていく。これは回復魔法?
光が消え始め、イリッシュは目を開ける。
「私は一族の中でも異質な聖属性の魔法が少し使えます。少しの傷や状態異常などは治癒できます」
「驚いたわ。まさか聖属性の魔法が使えるなんて。洗礼はうけてるのかしら?」
「ルエ姉、洗礼は受けていません。なので、教会にも所属していないのです」
「そんな事って、ありえるのね。いい、ユーキもアイも。イリッシュの聖属性については絶対に秘密よ」
「わかった!秘密だね!でも、怪我していたところが一瞬で治るってすごいね!」
「ここだけの話にしておいた方が、いいって事だな。多分、ばれたら教会が絡んでくるんだろ?」
「さすがユーキ。その通りよ。強制的に教会に連れて行かれるわ」
「なるべく、使わない方がよさそうだな」
「いままでも、人前で使ったことはありません。きっと、私の両親も知らないはずです」
「でも、イリッシュはなぜ聖属性が使えるんだ?」
「本来、聖属性は洗礼を受けたり、聖属性の先生から教わったりしないと、使えないはずよ。イリッシュはいつから使えるようになったの?」
「教会の神父様にけがを治してもらったときに、感じたんです。何か私に流れ込んでくるのを。自分でもできるかもって、使ってみたら使えてしまいました」
「天性の才能かもしれないな。俺だって何もしていないけど、魔法使えるようになったし!」
「お兄ぃ!私も魔法使いたい!」
「はいはい。アイもこの後、属性テストしましょうね」
「イリッシュちゃん!後で私にも魔法教えてよ」
「はいっ!私にできる事であれば、是非!」
愛も魔法を使ってみたいらしいので、ルエルが俺の時と同じようにテストする。
結果、属性は火属性のみ。でも強さが第四界位らしい。
頑張れば魔法使いになれるかもね!良かったね!
「私もこれで魔法が使えるね!どうやったら火でるの!」
「アイ。ごめんなさい。私火属性の魔法は使えないの」
「アイ姉、ごめん。私も火属性の適正無いんです」
「俺だったら少し教えられるぞ!本当に少しだけどな!」
「お兄ぃ!後で教えてね!絶対だよ!」
「あぁ、もちろんいいぞ。あとでじっくりと教えてやるよ」
こうして俺たちのランチタイムは終わった。
テーブルから食器を下げ、台所に持っていく。
洗い物も終わり、ひと段落ついた。
そして俺はルエルに切り出す。
「ルエル、仕事の話を始めてもいいか?」
「いいわよ。アイとイリッシュは同席する?」
「お兄ぃ、私はいた方がいいの?」
「私なんかここに居たら、お邪魔ではないですか?」
「この店の運営にかかわる事だ。全員で話をしよう。第一回フェアリーグリーン会議だ!」
俺はこの店の状況確認と今後の対策を考えなければならない。
俺と愛がいなくなっても、ずっと続けられる店にしなければ。
俺色には染められない。ルエルの店にしなければ。
今日は一日長くなりそうだな・・・




