第037話 ~銀狼と奴隷~
ギルドの扉を開き、表に出る。
日は高くなっており、そろそろ昼になるかというところ。
目の前をさっきの馬車が通り過ぎる。
「あの馬車は急がしな。行ったり来たり」
「そうね。忙しいわね」
「お兄ぃ!ルエルさん!お昼にしよう!お兄ぃ、ところでその袋、どのくらい入っているの?」
そういえば、中身見てないな。
「どれ、見てみるか」
袋を開けてみる。
大金貨三十五枚!
三百五十万円分!!!
おぉぉぉぉ!一気に借金返済!おつりがきたぁぁぁ!!
「ル、ルエル!やったぜ!これでもう安心だ!!」
「そう、良かったわね。来てよかったでしょ?」
「あぁ!おお助かりだ!」
「お兄ぃ!良かったね!これで帰れるよ!帰り方わからないけど!」
「あぁ!帰れるな!帰り方わからないけど!」
「さ、お昼にしましょう。今日はユーキがご馳走してくれるらしいわよ」
「なんでもこーーい!」
そう、俺は浮かれていたんだ。
ちょっと大きなお金が懐に入ったから。
安心したんだ。これでルエルも助かるって。
貴族街を背に、ルエルの店近くに戻って来る。
「お昼どうする?食べに行くか、買ってくるか」
「そうね、せっかくだから買い物に行って、家で豪遊しましょうか?」
「ルエルさん!いいね!買い物いこう!」
「向こうに市場があるの。みんなで行きましょうか」
ルエルの店からちょっと歩く。次第ににぎわってきた。
日もすっかり高くなり、昼時だ。市場には人であふれかえっている。
市場の店先には果物、野菜、肉、加工品、惣菜など何でもそろっている。
ルエルに案内され、俺と愛は適当に買い物をする。
途中、大金貨を金貨と銀貨に両替しておいた。
市場では大金貨は使いにくいとのことだ。
たっぷりと買い物をしてルエルの店の方へ戻る。
店の近くまで歩いてくると、さっきの馬車が止まっているのが見える。
なんだ?まだこんな所にいたのか?
「ほら!早く乗れ!おまえはもう帰る家は無いんだよ!おまえは売られたんだ!」
「・・・」
「馬車から逃げ出したお前が悪いんだろ?その目つき、気に入らねーなー!」
男はボロの服を着た少女にけ蹴りを入れている。
少女は首輪をつけられており、男の手には首輪からつながった紐が握られている。
「そんなに蹴りが好きか?じゃぁ、お前の好きな蹴りをたっぷりとしてやるよ!」
「・・・っあう!」
「おまえ、面白い声で鳴くんだな!ほら、もっと鳴けよ!ほら、ほらっ!!!」
男は容赦なく、少女にけりを入れている。
「そらそら!はははっ!鳴けよ!いい声で鳴くんだな!おらぁ!」
男はひたすら蹴っている。
少女はうずくまって動かない。
見ていて、なんかイライラする。
気が付いたら、男に向かって歩いている。
俺、喧嘩弱いんだよねー。多分。
「おい!見てて気分が最高に悪くなった。今すぐ責任とれ」
「はぁ?にーちゃん、言っている意味が分からねーな。こいつは商品だ。今買ってきたんだよ!」
再び、男が少女を蹴りあげる。
「も、もうやめてください。おねがい」
声が弱弱しい。なんだ?なんでこんなにイライラしている?
知らないやつ、この世界じゃ奴隷は普通だって、ルエルも言っていたじゃないか。
「聞こえねーなー。もっと他に、頼み方、あるだろ!」
また、蹴りか。ワンパターンだな。
男と少女の間に入り、俺が蹴りを貰う。
あ、痛い。
「今、俺にけりくれたな?先に手を出したのはあなたですよね?反撃してもイイですよね?」
「何言ってる?貴様が勝手に割り込んだんだろ?」
「や、やめてください!この人は関係ない!この、犬が悪いのです。わんわん」
「やっと、口のきき方がわかって来たな。ほら、さっさといくぞ。今日はお前を販売する日だからな!元貴族だが、今は犬として高く売れるといいな!はははっ!!!」
「いくらだ。この子はいくらで販売されるんだ?」
「は?お前に払える金額じゃねーよ。こいつはボロ着てても元貴族。生娘。銀狼の一族だ。仕入れ値もそれなりにしたんだ。こいつは高くつくぜ!」
「だから。いくらなんだ?」
「そうだな。300万ジェニ」
「そ、そんな!私はさっき100万ジェニで!」
「うるせーよ!需要と供給だ。ほしい奴がいれば、値段も上がるんだよ!」
俺はふと考える。さて、勝手に決めちゃだめだよね?
ルエルの方を見る。
「ユーキの信じるままに」
愛の方を見る。
「お兄ぃはバカだからねー。好きにしていいんじゃない?」
そうだよな。悪いことじゃない。
この後、ちょっと問題になっても、今、目の前の人を助けたいと思うのが、俺の心だ。
「300万ジェニでいいんだな?」
「あぁ、いいぜ。今直ぐ用意できたら、この場でお前に売ってやっるよ」
俺は懐から300万ジェニを出す。
「ほら。300万ジェニだ。これでこの子は俺の物だな。書面の交わし、必要か?」
「へ?あ、300万?なんで、なんであるんだ?」
「俺の金だ。300万あるだろ。今、この場でこの子を買った。文句は言わせない」
「お前、イかれてるぜ。こんな小娘に300万なんて」
「ちょっと俺はイかれててな。早く、書面くれ。昼まだなんだ俺たち」
「あぁ、ちょっと待ってろ」
男は馬車に戻り、筒を一つ持ってくる。
「こいつが書面だ。この紙が奴隷契約書だ」
「じゃぁ、この紙がなくなれば、この子は自由なんだな?」
「あぁ、そうだ。無くすなよ」
男は中身を取り出し、地面に広げる。
「ここにあんたの名前を書きな。これで契約終了だ。あとはあんたの好きなよにこの女を使えばいいさ」
俺はイライラしながら、紙を見る。全く読めない!
懐から布を巻きつけてあるナイフを取り出す。
布を左手で取り、ナイフをむき出しにする。
「て、てめぇ!何のつもりだ!まさか、俺を殺すのか!?」
俺は、思いっきりナイフに力を入れ切り付ける!!!
契約書は真っ二つになった。
その後、何度もナイフで切り、バラバーラに。
「おまえ、なにしてるんだ?」
「契約の破棄。300万は持ってけ。この子はこれで自由だ」
ナイフを布にくるもうとする。
風が吹き、ナイフを包んでいた布がルエルの方に飛んでいく。
あ、ルエルの下着だ。
「事故だ事故!俺は知らなかったんだ!!」
「ユーキ。その話はあとでゆっくりね」
「お兄ぃもドジだねー。ずっと懐に入れてたの?うわぁー、最低」
「あ、あの!」
「こんにちわ。初めまして私はルエル。あなたの名前は?」
「私はイリッシュ。今はただのイリッシュよです!」
「そう、イリッシュ。家でご飯食べない?たくさん買ってしまって、きっと余ってしまうの」
「イリッシュちゃん!一緒にご飯食べよう!」
「そうだな!イリッシュ!俺たちと一緒に食べよう!」
っは!何!ルエルと愛の冷たい目線!
一緒に会話の中に入ったっていいじゃないか!
「さ、うちはすぐそこだらら一緒に行きましょ」
「はい!ありがとうございます!」
「イシッリュちゃん、髪きれいだねー。きれいな銀色。地毛?」
「はい。もともとの髪の色です」
お、俺も会話に入りたーい!
こんばんわ。紅狐です。
読者の皆様お久しぶりです。
やっと新しい仲間が登場しました。
獣人族で銀狼の イリッシュ ちゃんです!
次回より、イシッリュも店舗運営にかかわっていきます!
ご期待ください!
なお、ブックマーク、評価いただけると作者はパワーアップします!
ぜひ、よろしくお願いします。




