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第031話 ~胡椒とギルカ~


早朝の鐘が鳴る。

この世界では恐らくこの時間か活動が始まるのだろう。


さっきのパン屋は早朝の鐘前から営業をしていた。

もっと早くから準備して開店させたのだろう。

どこでもパン屋さんの朝は早い。




「二人とも、座って。スープが冷めてしまうわ」


俺と愛は席に着き、れるの準備した朝食を目の前にする。





グゥ~~




「愛。なかなかい良い音色だな」


「あはっ!昨日の夜からお腹空いちゃって。変な夢も見ちゃったし」


「それじゃぁ、食べましょうか」


「「いただきまーーす」」


「はい。いただきます」



ルエルと愛は昨日のバーガー。俺はさっき買てきたパンを食べる。

ルエルの作ったサラダと、スープもなかなか旨い。

何かの肉を蒸したっぽいものもある。



「ルエル、この肉なんだ?」


「この肉はチキンよ」


「一切れ取り食べてみる」




な、なんだと!

そ、そんな馬鹿な!そんなことはありえないはずだ!!



「ルエル。このチキン。うっすらっとかかっている黒いものはもしかして」


「コショウよ。それが何か?」


「コ、コショウだって!」


「お、お兄ぃ。何朝からそんな大声だして。胡椒くらい普通でしょ?」


「愛。よく聞け。俺の知っている異世界だと胡椒は黄金と同じ価値がある。胡椒を作って、売っただけでひと財産できるんだ」


「そうなんだ!ルエルさん!胡椒売ったら借金一気に返済できるよ!」


愛の目は輝きながらルエルに訴える。


「二人とも落ち着いて。胡椒はその辺で普通に買うことができるわ。きっとどの家にもあるわね」


「そ、そんな。異世界で胡椒作ってウハウハ計画がぁぁ!」


「ユーキ。もう一度言うわね落ちついて。朝から騒がしいわ。ユーキの世界では胡椒は金と同じ価値なの?」


「いや、その辺でいくらでも買える」


「この世界でも同じよ。その辺で買えるわ」



なんてこったい。やはり儲けるためには周辺リサーチと一般的な生活水準の情報が必須だ。




「もう、大丈夫だ。落ち着いた。ところで今日の予定は?どこな出かけるんだろ?」


「そうそう!今日はお出かけ!異世界観光!」


「愛、観光している暇はない。この世界に来てからルエルに助けてもらってばかりだろ」



そう。俺たちはまだ一銭も稼いでいない。

着るもの。食事。寝る場所。衣食住、その全てがルエルにおんぶにだっこだ。



「そうだね。私もルエルさんに恩返ししないとね!」


「恩というか、借金返さないとな!」


「いいかしら?」

ルエルはこっちを見ている。



「すまん。改めて、今日の予定は?」


「食事が終わったら、まず二人の身分証明書を発行してもらおうと思うの」


「身分証明書?」


「この世界では冒険者や商人、騎士、神父など全ての人にギルメンカード、略してギルカという身分証明書を持つことになっているの」


「そのカードが無いとどうなるんだ?」


「カードがないと仕事ができなかったり、教会で治癒してもらえなかったり、討伐した魔物の素材や魔石など売ることができないわ」


「なるほど。ギルカは必須だな。誰にでも発行してもらえるのか?」


「特に問題はないはずよ。所属ギルドを決めてそこですぐに発行してもらえるわ」


「料金はかかるのか?」


「初回発行は無料。再発行は10万ジェニよ。無くさないでね」


「お兄ぃ。再発行手数料高いね!絶対に無くさないでね!」


「お互いに注意しなくちゃな。ちなみにルエルはどこのギルドに所属しているんだ?」


「私は商人ギルドよ。この店の商品を仕入れたり、作ったアイテムや素材など色々と買い取ってもらえるの」


「お兄ぃはどこにするの?」


「まだどんなギルドがあるかわからないから、決めかねてる」


「言い忘れてたわ。所属ギルドは後でもも変更できるの。気楽に決めていいのよ」


「そうなんだ。じゃぁ、ルエルと同じ商人ギルドでいいか」


「私もルエルさんと同じギルドにする!」


「決まりね」


朝食を食べながら、会話が進む。


窓からは暖かい日差しが差し込んでくる。

通りにも人が少しずつ増えてくる。この人々はどこから来て、どこに行くのだろう。


窓の外を見ると、鎧を着た熊さんとローブを着た狐さん。弓矢を持ったエルフさん。身軽な格好の人間さん。多種多様の人々が歩いている。

見た感じ冒険者だろう。この街の冒険者はどこに行くのだろうか?



「なぁ、ルエル。この街の冒険者はみんなどこに行くんだ?」


「一日の初めにギルドに行く人が多いわ。早朝に依頼を受けて、討伐や素材回収系であればダンジョンか町の外に出るの。早ければその日のうちに任務完了して報酬をもらうわ」


「討伐以外にも依頼はあるのか?」


「護衛とか人探しとか色々あるわね。そうそう、今日はギルド登録した後に、特許ギルドにも行こうと思うの」


「特許ギルド?」


「街で販売されている魔法具の特許よ。新しいアイテム開発しても、他の誰かが真似をするので、新しいアイテムは早めに申請をするの」


「ルエルさん、何か新しい魔法具作ったの!」


「正確には私ではなく、ユーキね。昨日の髪乾かす魔法具よ。申請が通るかわからないけど、行ってみようと思って」


街のリサーチもかねて色々と出歩くチャンスだな。


「わかった。商人ギルドと特許ギルドに行きますか!」


「行きますか!」



朝食タイムも終わり、テーブルにはルエルが入れてくれた食後の紅茶がある。

ギルドが開店するまでもう少し時間があるらしい。

三人で飲むお茶もおいしいね!



「アイ。出発まで少し時間あるから、一緒に洗濯しない?」


「いいよー。ルエルさん、一緒に洗濯しよう!」


「ユーキはお茶でも飲んで待ってて。もしどうしても暇だったら父さんの実験室でも見てていいわ。でも、絶対に余計な事はしないでね。見るだけよ。絶対に見るだけよ」


「あ、あぁ。そんなに念を押さなくていい。一息ついたら見てみるよ。実験室はどこだ?」


「二階の奥よ。階段上がって正面が両親の寝室があるでしょ。その部屋の真反対よ」


「わかった。ありがとう」


「アイ、行きましょう」


「オッケーー。ルエルさん、洗濯っていつもどこでしてるの?」


話をしながら二人は奥の扉の向こうに消えて行った。

多分、風呂場で洗濯かな?



さて、俺はルエルが入れてくれた紅茶を飲む。何度か飲んでいるが、結構うまいと思う。

でも、この紅茶を目当てにお客さんはこないっぽい。


昨日は半日でお客さん一人だけ。

この店赤字じゃないか?



そんな事を気にしながら、紅茶を飲みほし二階へ上がる。

奥の部屋の扉の前に立つ。

この部屋がルエルのお父さんが使っていた実験室。

帰るヒントでもあればいいのだが・・・・




俺は扉をゆっくりと開く。




ギィィィ



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