第023話 ~魔法と賢者タイム~
裏口から4匹のゴブリンが去って行った。
無事に村に帰ることができるといいな。
家族にも会いたいだろう。
俺は巾着を持って店内に戻る。一応中身の確認はしておくか。
テーブルに中身を出してみる。
宝石のような魔石がたくさん入っている。
翻訳の指輪についている大きさの魔石は結構たくさん入っており、ビー玉サイズ、ウズラの卵サイズなど大きいものも何個か入っている。
一番大きな魔石はピンポン玉くらいある。
色は全て無力透明。これってどのくらいの価値があるんだろうか?
硬貨も何枚か入っているが、パッと見た感じいくら分なのか計算できない。
これは時間がある時にでも確認しよう。
他にも多分魔石の付いた指輪、ペンダントトップ、イヤリングなどが入っているが、どんな効果があるのだろうか?
付けてみて、外せないならまだしも、呪われた装備品だと非常に困る。
これはしばらくお蔵入りだな。
一度巾着に全てしまう。このズボンにはポケットが無い。
シャツにもポケットがない。
この世界の人たちは財布とか、どこに入れているんだろうか?
とりあえず、シャツの中に入れ、おなかあたりでチャラチャラさせておこう。
しかし、2人は遅いな。
女の風呂は長い!と昔から相場が決まっているが、本当に長い。
湯船につかっているわけではないのに、何をしている?
再び、店内を物色する。
あ、黒のローブが4枚無い。
これはまずい!在庫がずれてしまう。
きっとルエルは気が付き、俺は問い詰められるだろう。
どうやってごまかす?
頭の上に『ぴんこーーん!』と、電球が付く。
そうだ!売った事にしてしまおう!急いで偽造工作しなければ!
まず、店の入り口を開けておく。
えっと、ローブが一枚千ジェニだよな?
残っているローブについているタグを見て、価格を調べる。
文字がまだよくわからない。でも、桁数を見ると多分千ジェニだ。
千ジェニは確か大銀貨1枚だったよな?
ローブの代金、大銀貨4枚を巾着から出す。
これを、カウンターに置いておけば、偽装工作完了!!
我ながら完璧だぜ!
テーブルに戻り、また考える。
この世界は魔法が使える。これを使って、儲ける事は出来ないか?
何か、この世界にないアイテムを魔道具として販売できればウッハウッハできる気がする!
明日はこの世界をちょっとリサーチしなければ!
マーケティングは商売の基本だぜ!
そんなことを考えていると、向こうから声がしてくる。
「本当なんだって!お兄ぃは昔っからそうなの!」
「アイ。いくらアイがユーキが好きだからって、それは言い過ぎよ」
「違う!好きじゃない!いや、好きだけどちょっと違うの!」
声がでかい。丸聞こえだよ二人とも・・・。
この後何かありそうだから、聞こえないふりをしておこう。
「ユーキ、お待たせ。ごめんなさいね、時間かかってしまって」
「そんな事ない。二人が仲良くなって良かったよ」
湯上り(?)の二人はちょっとセクシーだ。
頭にはタオルを巻いている。服装は水色のフリフリが付いた、ふわっと系のワンピース。
この世界はワンピースが多いな。
ルエルの方が背が高い。愛、頑張って!応戦してるよ!
「お兄ぃ、変な事してなかった?」
「変な事とは心外な。特に事件は起きてないぞ」
「あら?入り口が開いてるわ。ユーキが開けたの?」
おっと、早速突っ込まれた!ここは話術の見せ所!ごまかせるか・・・。
「さっき、急にお客さんが来てさ。何か急ぎでローブが欲しいって言われて、そこにかかっていたローブを販売した。代金はカウンターの上にある」
「あら、珍しいわね。何があったのかしら?同じローブをお向かいの店でも売ってるのに。向こうはまだ営業しいてるわ」
なんだと!同じローブをお向かいでも販売してるのか!まじゅい!
さらに突っ込みを貰ったら、撃沈してしまう!
「まぁ、いいわ。売り上げにはなったのだから」
せーーーふ!危ない!
「そ、そうだな。もしかしたらお向かいではなく、ルエルの所で買いたかったんじゃないか?」
「ふふっ、そうだったら嬉しいわね」
いやいや、危ない危ない。もう少しでばれるところだった。
「ユーキも体流して来たら?」
「そうだな。そうさせてもらうよ。ルエル、行く前に聞いてもいいか?」
「いいわよ。なにかしら?」
「魔法 って、どうやって使うんだ?」
「魔法!お兄ぃ、魔法使えるの!!」
「正確には適性があって、魔力みたいなものはあるっぽい。でも自分で魔法を出したことがない」
「ルエルさん!魔法ってどうやるの!私も知りたい!」
「今日はもう遅いし、簡単にね」
「あぁ、簡単にだ。語るモードには絶対に入らないでくれ」
「大丈夫よ、簡単に説明できるから」
「愛、寝るなよ」
「寝ないよ!いつでも起きてる!と、思う」
ルエルは語り始める・・・。
チーン。
愛は三度夢の世界へレッツゴー!
また説明するのか?俺は。
「愛!また寝てるだろ!」
「お、起きてる!問題無!ちゃんと聞いてたよ!」
「言ったな!じゃぁ、俺に説明してもらおうか」
「えっと、確か・・・」
魔法はイメージ。属性魔法はイメージ力がそのまま魔法として現れる。
火をイメージ。風をイメージ。土をイメージ。水をイメージ。
自身の魔力と、自分のまわりにある魔素を練り合わせるイメージ。
魔素は見えない。自分の魔力も見えない。
見えないものを、あるように、見えるようにイメージするの。
「ようは、イメージ力で魔法が出せる!」
「そうね、イメージする事で具現化できるわ。他にもいろいろと要素があるけど、簡単に言うとイメージ力ね」
「ちゃんと聞いていたんだな。あと、複数の魔法を同時に使うことはできるか?」
「不可能ではないけど、難しいわ。魔法使いでもかなりの上級者にしかできないわね」
「そんなに難しいのか?」
「例えば火魔法の『フレアストーム』これは火と風の複合魔法。使うには、火と風の適正が必要で、しかも火を残したまま、暴風に乗せる必要があるの。火を風に乗せるイメージってなかなか難しいのよ」
「ようはイメージ力なんだな」
「まぁ、そうね。上級魔法も結局はどれだけ具現化できるか、イメージ力ね」
「最後にもう一つ。俺にはエンチャントの魔法は使えるか?」
「エンチャントは無属性の魔法の一つ。ユーキが使えるかはやってみないとわからないわ。付与する魔法のイメージを魔石に入れるイメージできるかしら?」
「やってみないとわからないな。どれ、風呂行ってくる」
「お兄ぃ。風呂じゃなくて、沐浴!」
「そうだな、沐浴だな」
「私達はここでお茶してるから、終わったらここに来て。ユーキの着替えとタオルは脱衣所においてあるわ」
「さんきゅ!いつもありがとうな、助かるよ」
「いいえ、どういたしまして。アイ、一緒にお茶でも入れようか?」
「いいよー!一緒にお茶入れよぅ!」
そんな会話をして、俺は一人風呂場に行く。
一人は寂しいか?いや、一人だからこそできることがある。
この世界に来て、完全に個室&一人の時間は初めてだ。
ここでしかできない事を、短時間で実行だ!
誰にも、見られない。多少声が出ても問題ないはず・・・。
さぁ、賢者タイムの始まりだ!




