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第022話 ~亜人とバーガー~


俺は警戒しながら店の方に向かう。

そうとう警戒しながら、ドキドキしながら・・・。


うっすらと明かりのついた店内に入る。


ここにいるのか?



ドックン ドックン ドックン



や、やばい。心臓の音が口から出そうだ。

某ゾンビをやっつけるゲームを何度もプレイしたが、この緊張感は比較にならない。


俺は、ここで何をしている?


異世界で、剣を持って、ゴブリンと戦闘?


俺は高校三年、ただの学生だ。

ある程度武道の心得はあるが、素人だ。


本気で戦闘などしたこと無い。


負ければ、そこまでなのか・・。



どこにいる?

右か?左か?上か?


ゆっくりと歩きながら店内を見渡す。





いない。絶対にいるはずなのに、いない。4匹もいたんだ。

絶対にどこか見落としてる。


カサッ!


後ろか!!



急いで三歩前に出てから、振り返る。


そこには4匹の亜人がいる。

子供位の亜人が一匹、大人っぽい亜人が2匹、しわしわの亜人が1匹。



子供の亜人はさっきルエルが買ってきたバーガーをもしゃもしゃ食べてる。


ど、どういった状況だ?

この人たちはルエルの知り合いか?


さっき酒場で聞いた、逃げたゴブリンじゃないのか?

動揺している。どうすればいい?


知らない亜人をいきなり切りつけるのは、なんかルール違反な気がする・・・。

聞いてみるか?



「おい。そのバーガー俺のだぞ」


そもそも、言葉が通じるのか?

俺の知っているゴブリンは片言の言葉、知性はほぼなく、凶暴。

人を襲い、繁殖力が高いため、よく人間に討伐されるイメージがある。


子供の亜人が何か話しそうになる

「ごめんなさい。お腹が空いちゃって、勝手にたべ・・・」


大人の亜人が子供の口をふさぐ

「お前は話さなくていい。向こうからの言葉はわかっても、こっちの言葉は理解されない。話すだけ無駄だ」


「んー。ん」

子供が何がもごもご言ってる。


口をふさいだ亜人が話を続ける

(おさ)よ。ここは私が命に代えても止める。その隙に二人を連れて、集落に。あとの事はたのみますよ」


「そ、そんな。あなたはどうするの?」


「俺の事は気にするな。絶対に帰ってみせる。それまで少しの辛抱だ。我が息子よ。たとえ、私が帰らなくても、母を守るのだぞ」


「わかった。父上。母上を守る」


「お主は、差し違えるつもりか?」


「そんなことはない。最善を尽くすまでだ。(おさ)、あとの事はよろしく頼みます、ぞ!!」


その声と子同時に、亜人は俺に迫ってきた。


こ、この速さ!何という




遅さだ!




ルエルと比べると、まったく遅い。

話にならない。


あんなに、いい感じで話がまとまって、ちょっと感動してきたのに。

ある意味台無しじゃないか!!


俺は亜人の拳を躱す。特に造作もない。


「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺の話が分かるなら一回攻撃をやめてくれないか?」


仕掛けてきた亜人は、俺を見ながら後ろに下がっていく。


「ごふんっ!えーっと。俺の言葉はわかるな?」


四匹はその場でうなずく。


「俺はあなたたちの言葉がわかる。そのにいるのは集落の長と、あなたの妻、子供でいいんだな?」


四匹は目を見開き、びっくりしている。


「言葉がわかるのか?」


「あぁ、普通にきこえるぞ」


「そ、そんな馬鹿な。今まで人間と会話をしたことがあるなんて、一度も聞いた事がないぞ。互いに通じないはずなのに!」



「えー。と言われても、現にこうやって会話しいてるぞ?」




「我々の言葉を理解するとは不思議や奴だな。何者だ?」


「あー。日本人?かな」


「この王国の者ではないのか。まぁ、良い。して、我らをどうする?」


「あんたたち、貴族から逃げた4匹のゴブリン?」


「そうだな。さっきまでとらわれていた。逃げてきたんだ」


「なんで捕まった?」


「人間が、突然集落に来て襲われた。こちらからは一切危害を加えていない。一方的だ」


「そっか、もし村に帰ったらあんたたちはどうする?」


「二度、襲われないようにもっと遠くまで集落を移動するさ。人間とかかわるとろくなことがない。村にはまだ小さい子供も、年寄りもいる。(おさ)もここにいるので、きっと混乱しているだろう。早く戻らねば」


うーーーん。色々と事情があるんだね。こっちの世界も。


「えっと、うちらとか、人、襲ったりしない?」


「こちらから危害を加えることはない。我々は争う事は嫌いだ」


知ってるイメージと違うなーーーー。


「じゃ、見逃すよ。無事に集落に戻れるといいな。その恰好じゃ目立つだろ。この黒のローブ貸してやる。そのうち、いつか返してくれればいい」


「人間。なぜそんなことをする?我々は追われているんだぞ」


「正直、俺この国に来たばっかりで事情が分からない。目の前の事を考えると、逃がしても問題ないと俺が思った。俺にも守るか家族がいるからな」


「すまんな人間。恩に着る。お前のような人間が多くなると、この世界ももっとよくなるんだがな」


「裏口から行ってくれ。表はまだ人が多いはずだ」


「あぁ、助かる。あと、バーガー一個。すまんな、息子が食してしまった」


「気にするな。またいつでも買える(俺は買ってないがな)」



怪しまれないように黒のフードを着てもらい、裏口に案内する。





(おさ)が話しかけてくる


「すまんな。もう二度会うこともあるまい」


「まぁ、それも何かの縁だ。また会うかもしれんしな」


「お主にこれを渡しておこう。多少の金額にはなるだろう」


小さい巾着を一つ俺に差し出す。


「あぁ、受け取っておくよ。ありがとうな」


「中には魔石が入っておる。ところで、お主、魔石がなぜできるか知っておるか?」


「いや、知らんな」


「魔石は魔物の核。魔力の高い者、長生きしたも者の魔石は大きくなる。人間が魔物を倒し、魔石を手に入れる。それを加工し、生活に役立てたり、武器にする。仮に、天寿を全うした魔物はどうなると思う?」


「消える?」


「半分正解じゃ。正解は魔石を残して肉体は消滅するのじゃ。その袋には、集落で天寿を全うした者たちの魔石が入っておる。できれば、正しい方向に使ってほしい」


「あぁ、善処するよ。まだ、この世界について、俺は知らないことが多すぎる。しばらくは懐にいれておくさ」


「さて、もう行かなければな。さらばじゃ」


「せっかく、逃げたんだ。無事に帰ってくれ」




黒のローブを身に着けた四匹は裏口から闇にまぎれて消えて行った。


さて、これって何か問題になるかな?


しばらくは黙っておこうか・・・




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