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第001話 ~オムライスとメッセージ~


両親は旅立った。この時点から妹と二人暮らしがスタートする。


家の外で両親を見送ったあと、妹と家に戻りリビングに行く。


二人とも終始無言でいつもの席に座る。


「お兄ぃ、今日から二人だけど、これからどうするの? 」


「平日は修理受付のみ。それ以外の対応は土日中心に。俺と愛の二人しかいないから、店回せないだろ」


「そうだよね。来週から学校も始まるし、忙しくなるしね…。ところで、私もお兄ぃと同じ学校に通学することになっているのだけど、高校ってどんな感じ? 」


 そうか、そういえば俺と同じ学校に進学したんだっけ。

こないだまで小学生と思っていたのに、もう高校生か。

時間が流れるのは早いな。



「愛の通う高校は大学の付属高校だから、高校卒業後はそのまま敷地内の大学に進学可能だ」


「それは知ってる! そうじゃなくて、授業とか部活とかだよ! 」


「えーっと、クラスが無い。授業は進学に必要な単位を満たしていれば問題ない。半日休みや一日授業無し! なんてこともできるな」


「そうなんだ、結構自由だね」


「高校といっても大学の仕組みで動いているから結構自由だな。ただし高校は制服、大学は私服。あと、免許があれば高校でもバイク通学が可能だ。車はだめだけどな」


「そっか、だからお兄ぃはバイクで通学しているのか」


「それから、学生証が電子マネーをチャージできるようになっている。購買や学食で使うことが可能だな。これが結構便利で、小銭いらずだ」


「あまり、無駄使いしないようにね。今日からお父さんもお母さんもいないんだからさ」


「さて、学校の話はこんなところだ。入学式まであと少しだが、準備は終わってるのか? 」


「もちろん! 準備終わってるよ! お兄ぃこそ新学期の準備終わってるの? 」


「終わってるさ、特に準備するものないし。じゃ、お得様に営業時間の変更のハガキ書いて、店の正面に同じ内容のポスターでも張るか! 」


「オッケー! じゃぁ、私はポスター書くから、お兄ぃがハガキ担当で」


「了解。さっさと終わらせて、店の準備しようぜ!」


ん? ポスター一枚と、はがき百枚近く?

これはもしかして、俺の方が大変なのでは?









終わった。やっと終わった。

お得様リストのデータはあったが、多すぎる!


ハガキが束になってるぜ。

頑張ったよ俺…。特にプリンターが。



「お兄ぃ~。そっちは終わった~? こっちは終わったよー」


「おー、こっちも終わった。さて、お互い終わったし、昼ごはんでも食べに行くか? 」


「お兄ぃのおごりで? 」


「そうだな、特別におごってやろう!何が食べたい? 」


「オムライス! スープとサラダ付きで! 」


「愛は昔からオムライス好きだな。じゃ、いつもの所行くか! 」




いつも家族で行っていた、オムライスが旨い店に行くことにする。

今日は両親がいない。俺と愛の二人だけ。

そういえば二人だけで店に行くの、いつ以来だろうか?




バイクのキーとヘルメットを2つ準備して、家を出る。

バイクにまたがりエンジンをかけ準備オッケー。そして、妹は後ろに乗る。


「お兄ぃ!気を付けてね!」


「大丈夫!いつも乗ってるだろ!しっかりつかまってろよ!」



俺はいつもと同じようにバイクを運転し、いつもの店に行く。

信号で止まり、ふと気になりミラー越しに愛を覗く。

何ニヤニヤしているんだ?

愛は両腕を俺の腰にしっかりと巻き付け、やや力いっぱいギュッとしてくる。


「お兄ぃの運転はいつでも安心して乗れるね! 」


「それは良かったな! そこはまだ愛の指定席だからな! 」


信号が変わる。一斉に走り出す車。


俺も走り出す。愛の長い髪が風になびく。

こいつ、こんなに髪長かったんだ。


ものの数分で店に着く。

渋滞知らずのバイクは便利でしょうがない。



カラン コローン


「いらっしゃいませ。二名様でよろしいですか? 」


「ああ。三名じゃないからな」


パシン!


「ごめんなさい。二人で大丈夫です」


愛、急に頭をたたくな。痛いじゃないか。



「お兄ぃ。恥ずかしい。普通にしていてよ。黙ってればそれなりにいい男なんだからさ」


「何を言う。話していてもいい男だろ? 」


スタッフゥに案内された俺達は席に着く。


注文する内容は決まっているが、一応メニューを開く。


愛はオムライスセットを。俺はナポリタンセットでいいな。



「愛。ドリンクいる? 俺はコーヒー」


「うーん。アイスティーで」



コールボタンを押して、スタッフを呼ぶ。


「お決まりでしょうか? 」


「これと、これ。あとコーヒーとアイスティー」


「かしこまりました。お飲み物はいつお持ちしますか? 」


「食後で」


「かしこまりました。少々お待ちください」


スタッフが厨房に戻っていく。

この店も結構古くなったな。父さんも母さんも通っていた店。

俺達が大人になるまで、残っているんだろうか?


「お兄ぃ? 何考えているの? 」


「特殊相対性理論と核融合について少々」


「あ、っそ。早く来ないかな! ここのオムライスおいしんだよね」


ニコニコしながら愛は俺に話してくる。


もう少し突っ込みをしてくれても良かったのに。


「愛は、俺と食事に来て楽しいか? 」


「そ、そりゃ楽しいよ。オムライス好きだし」


「彼氏とかと来た方が楽しいんじゃ?」


「いない! 彼氏いない! 作る気も多分無い! 」


はて、年頃の娘が色恋バナがない。


「ま、まさか女の子が好きなのか? 」


「っぶ! 」


愛は飲みかけた水を吹き出す。愛、ばっちいよ。


「ごめん、吹いちゃった。大丈夫、普通に男の子が好きだから。そこは安心して」


「そうか。安心した」


愛は少し顔が赤くなっている。俺の目をまっすぐに見てくる。


なんだ? 俺は何か変なこと言ったか?


兄妹の会話としてはちょっと変かもしれないな。


と思っていたらオーダーがテーブルに届く。


「お待たせいたしました」



料理が届く。おいしそう!


「「いっただきまーす」」


二人で黙々とモグモグする。そういえばうちの家系は食事中無言だな。


黙々と会話もなく食べてる。愛もニコニコしながらオムライスを口に運ぶ。

か、会話が無い。これって一般的に見て普通だよね?



しっかりと食べ終わった後、店員が皿を下げに来る。


「うん、うまかったな」


「おいしかったね! また食べたいな! 」



食後のコーヒーも出てきた。これが意外とうまい。

一口飲んだ後、店員が何か運んできた。

ん? オーダーはもう全部きたよな? 他に何かたのんでたっけ?



「失礼します。お客様、こちらをどうぞ」


そこにはショートケーキにメッセージプレートが乗っており、何か書かれている。



『ハッピバスデ これからも仲良くしてね』


「お兄ぃ、驚いた? びっくりしたでしょ?」


「あ、あぁ、びっくりだ。どうやって準備したんだ? ここに来るの決めたのさっきだろ?」


「ふっふーん。ひ・み・つ。 さ、一緒に食べよ」


「妹よ。なかなかお主もやりおるの。では、おいしくいただきますか! 」



仲良くケーキを食べ、店を出る。


自宅に帰り、店の掃除とハガキ出し。

明日以降の準備などしたらあっという間に夜だった。


「よし! 今日はもう寝るぞ! 風呂も入ったし、歯も磨いた! 戸締りもオーケー!」


「じゃ、お兄ぃ。明日からも頑張ろうね。おやすみ」


「おやすみ。あ、愛。今日はありがとう。なメッセージ嬉しかったよ。これからも仲良くしような」


「な、何いきなり! そんな素直すぎるのはお兄ぃじゃない! わ、私、部屋に行くね!」


バタン!


そんな強く扉閉めるなよ。壊れるだろ…。

ま、明日からもよろしくな。



扉の向こうからかすかな小声で聞こえてくる


「お兄ぃ。ありがとう。お兄ぃの妹で私本当に良かったよ。おやすみ…」



異世界に飛ぶのあと少し後です。それまでほんの少しだけ、お付き合いください。

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