第017話 ~街風景と魔素~
「こっちよ」
店の入り口を出て、右に曲がっていくルエル。
そういえば、この世界に来てから外に出るのは初めてだな。
「お兄ぃ、この服装で変じゃないかな?」
白っぽいワンピースに、茶色の革っぽい靴。髪は深紅色の布で頭の上部でまとめている。
「うーん、俺の価値観からするといたって普通だな。この世界でそれが普通なのかは表に出ればわかるんじゃないか?」
「日本じゃないのはわかるけど、女の子は服装に敏感なのよ。お兄ぃもちょっとは理解してよね」
「そんな事より早くいかないとルエルを見失うぞ!」
「そ、そんな事って!待ってよ!おいていかないで!」
俺の後をついてくる愛。扉をくぐり、異世界の街へレッツゴー!
初めて目に入ってきた異世界の街風景。
街灯には電気を使っていない魔法の光が輝いている。
地面は煉瓦で舗装され、お向かいの建物まで大体4車線分。かなり広い道だ。
道には多くの人があふれかえっており、右を向いても左を向いても、商店に活気があふれている。
何となく中世のヨーロッパかな?とイメージする。建物は煉瓦っぽい石造りが多いが、数軒隣には木造もある。
ここは商店街の一角のようで、一階が店で二階が自宅部分のような家つくりが多い。
お向かいを見ると店の前に鎧と剣が飾っている店がある。あそこはきっと武器と防具の店だろう。
右にはルエル。左には愛がいる。
「どう?この街は?私は結構気に入ってるんだけどね。ユーキにも気に入ってもらえたら嬉しいな」
「お、お兄ぃ!外国だ!外国だよ!!あそこ!外国の人がいる!!」
愛の向く方を見てみると、頭に犬耳?の生えた青年が、腰に剣を差して歩いている。
愛。外人というより、異種人だと思うよ。大きなくくりだったら 外国の人=日本人以外の人 だからあっているけどさ・・・。
馬車が目の前を通る。馬っぽい動物に引かせているが、馬なのかな?
「あれは馬車。人や荷物を乗せて移動するの。ほとんど裕福な商人か貴族が使っているわね」
馬車の窓から人影が見える。馬車の形や装飾から恐らく貴族が乗っているのだろう。
何となく気になって馬車を見ていると、乗っている人がこちらを見てくる。
大きな目をした銀髪の少女だ。ツインテールで服はゴスロリっぽい白黒のヒラヒラドレスを着ている。どこか悲しそうな表情で、こっちを見ながら俺たちの横を通り過ぎて行った。
結構可愛かったな。貴族っぽいが、あの表情は何だったんだろうか。
街並みを見ながら、ルエルお気に入りの店に着く。
おぉ・・・『ザ西部時代の酒場』といった雰囲気の店だ。
観音開きの扉を開け、ルエルが店に入っていく。
俺と愛も後をついていく。
ギィィィ
「いらっしゃい!お、ルエルちゃん久し振りだね!」
声をかけてきたのはエプロンが似合う30代|(多分)女性、恐らく人妻だな!
「女将さん、お久しぶりです。4人用の席空いていますか?ちょっと今日はお祝い事があってね」
「空いてるよ!奥の窓際に座ってな!」
俺たちは奥の窓際にある4人席に座る。お客さんが少ない。
この後混んでくるのだろうか?
「さ、メニューよ。今日は好きなもの頼んでね!」
「ルエルさん、ありがとう!」
・・・・
「ルエル、すまないが、おすすめを適当にお願いできないだろうか?」
「え?自分で選ばなくていいの?嫌いな物とかない?」
「ルエルさん、ごめん。メニューが全く読めない!」
翻訳の指輪で会話は翻訳できても、字までは翻訳してくれないようだ。
まったく読むことができない。
何となく、左側に品名、その右に値段があるような感じのメニューだ。
字の勉強もしないといけないのか・・・
「じゃぁ、適当に頼むよ。魚と肉、どっちがいい?」
「俺は肉で」
「私は魚!」
「はい、じゃぁ注文するわね」
ルエルは席を立ち注文に行く。ここの店ではオーダーを聞きに来ないスタイルなのか?
戻って来たルエルは手にお盆を持っている。カップが三つとフォーク&スプーンが三セット。
「注文してきたわ。しばらく待つと思うので、何か話をして待っていましょうか」
「ルエル、聞きたいことがあるんだがいいか?」
「いいわよ。ただし、この場では父の研究関係については無しよ」
「わかった。さっき、愛が放ったのは魔法か?」
「Gを虫の息にした時の事かしら?」
「そうそう!ルエルさん、あれって何?こぅ、拳から ドヴァ! って出たやつ」
「今の段階では何とも言えないけど、恐らく魔法だと思うわ」
「やっぱり。愛はこの世界に来て魔法が使えるようになった。と、言うことでいいんだよな?」
「そうね、その認識でいいと思うわ。そもそも魔法ってどんなものかわかるかしら?」
「俺のいた世界じゃ、魔法は無いからまったくわからないな」
「この機会に、ちょっと魔法について話しておくわね」
「ルエル!短く!冷静に!要点まとめて話してね!!」
ルエルは語り始める・・・。
魔法とは魔力をエネルギーに変換し、現象を起こす事。
自身の力のみで使える各属性魔法がある。これは適性が必要で、適性がなければ使えない。
魔力は各々(おのおの)が持っている 強さ と 量 がある。
強さは一回で発動できる魔力の大きさ。量は体内に持つ魔力の総量。
簡単に言うと、バケツとホースだ。
バケツに入れられる水の総量が魔力の量。バケツから伸びているホースの太さが強さ。
莫大な魔力の強さがあっても、魔力量がないと発動できない。
逆に魔力量が莫大でも、強さがないと弱い魔法しか発動できない。
それから、魔石にエンチャントした固有魔法を発動させる方法。一魔石に付き一種しかエンチャントできない。
魔法の強さにより、魔石の大きさが変わってくるので、巨大魔法はエンチャントがむずかしい。
しかし、エンチャントされた魔石に純魔力を流すだけなので、適性外の魔法も発動できる。
また、エンチャントもエンチャンターが使える魔法しかエンチャントできない。
簡単な魔法はエンチャントしやすいが、使える魔法使いも多いい。
それぞれメリット、デメリットがある。
また、魔法を発動させる絶対条件は発動場所に魔素がある事。
自身の発動魔法やエンチャント魔法も、発動場所に魔素が無いと発動できない、
魔素は見えなく色もない、それこそ空気のような存在。
この世界にはだいたいどこにでも魔素はあるらしいが、稀に0魔素地帯があり、魔法を使用することができない。
「何となく、この世界の魔法についてわかったかしら?」
「今回は早く終わったな」
「あまり長くなると、せっかく来た料理が冷めてしまうわ」
「ルエルさん!料理が来てからも、しばらーーーく語ってたよ!おなかすいた!!」
「じゃぁ、料理も飲み物もきたし、乾杯でもしましょうか」
「そうだな、乾杯でもしようか!」
ルエルがみんなのコップに飲み物を注ぐ。
「「「新しい出会いに!かんぱーい!!」」」
ゴクゴク バフゥゥゥゥゥ!!!
俺と愛は盛大に噴出した!
「ル、ルエル!これお酒じゃないか!!」
「え?ユーキとアイは飲めないの??」
ルエル!お酒は20歳からなんだよ!俺の世界では!!




