第016話 ~レポートとパフェ~
「さっきユーキには言ったけど、今から話す内容は想像の話。確認もしていないし、保証もない。でも、二人が帰れるヒントがあるかもしれない」
三人はさっきまで座っていた椅子に座りっている。相変わらず部屋は微妙に暗い。
何かの儀式とかできそうな雰囲気だ。
真剣なまなざしで俺を見るルエル。さっきまでの真っ赤な顔の表情とは似ても似つかない。
「ルエルさん!帰る方法知ってるの!?」
「わからないわ。でも、ヒントはあるはずよ」
「ルエル、話してくれ」
「父が研究していた魔法『異空間転移魔法』についての話よ。そもそも転移魔法というのは~~」
ルエルが知っている事をつらつらっと話し始める。あ、熱く語るモードに入ったな。
今度はどの位の時間で終わるんだろうか・・・。
「~~そこで父は仲間に対してこう言ったのよ!『失敗は成功の始まりだ!!』って。それから!!~~」
チーーン。愛は隣で寝ている。
「と、いう事よ。この話で何かヒントはありそう?」
今回も長かったな!
「愛!起きろ!!また寝ただろ!」
「ふにゃ!お、起きてる!絶対に起きてた!」
「愛、今の話の要点はなんだ?」
「えっと、要点・・・。えへっ」
「はぁ、これで二回目だぞ。まぁ、いい簡単に言うと・・・」
愛に説明するのはこれで二回目。聞いた話をもう一度するのは苦痛だ!
次からはしてあげないんだからねっ!
『異空間転移魔法』はまず二つの魔法に分けることができる。
異空間、異次元へ入り口を開く魔法。そして、その先へ移動する転移魔法。
転移魔法はこの世界でも普通にある。
転移魔法を使える魔法使いは、知っている所、見えるところにしか移動できない。
転移専用の転移ゲートを作って、入り口と出口を固定し、往復する。この世界では何ヵ所かあるらしいが個人ではなく、ギルドや教会、王宮で使われている。
個人で持つには破格らしい。
それ以外にも過去の魔王が行った、部位転移魔法。
恐らく魔人の魔力を転送先として体の部位を転移させたと思われる。
異空間転移魔法を研究していたルエルの父は、異空間や異次元への入り口を作るのが不可能なのでは?
と思い始めていたらしい。
一度方向性を変え、研究をしていき、実験を何回か行ったそうだ。そして実験は成功したらしい。
王宮へ報告を行う前に、エルフの族長へ先に実験成功の連絡をした。
そして、ルエルの両親はエルフの族長から国に呼び戻されてしまう。
それから何度か手紙は来たが『しばらく帰ってこれない』とつづられていた。
この実験では恐らく何らかの形で異空間転移ができたのだろう。
その時のレポートや使用したアイテムなどは当時のまま残っているらしい。
その実験結果やアイテムを見つけることができれば、俺たちは帰ることができるかもしれない。
「・・・、わかったか愛?ルエルのお父さんが残したレポートとアイテムを見る。そこに帰る為のヒントがあるかもしれない」
「さっすがお兄ぃ。よくできました!ルエルさん、ありがとう!きっとこれで帰ることができるよ!」
「まだ何も見つけてないわ。今日はもう遅いから、探すのは明日からにしましょう」
「そうだな、外はすっかり暗くなってしまったな」
「ところでで二人とも、お腹空いていない?」
「「すいてます!!」」
「話のきりが良いから、ご飯にしましょうか?話の続きはその後にしましょう」
「「はーーーい!」」
「じゃぁ、行きましょう」
??行く? 三人で何か作るのか?
「ルエルさん、どこに行くの?買物?」
「今日は二人が来てくれた特別な日。ちょっとだけ、お祝いでもしようかなって。この店の近くに、おいしいお店があるの」
「いいのか?こっちは二人ともお金はいっさい持ってないぞ!」
「そうだよ、お兄ぃは無一文だよ」
「お金は私が出すから心配しないで。近いうちに金貨20枚入る予定だから、大丈夫よ」
金貨20枚。心当たりがある金額だ。
「ルエル、それは取らぬ狸の~ って」
ルエルと愛はすでに入口に向かって歩いている。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
俺はあわてて二人を追いかける。後ろから見る二人はまるで親友のようだ。
仲良くやっていけそうかな?
しかし!年下の女の子におごってもらうのは男として・・・。
こっちの世界で稼ぐことができたら、パフェでもおごってやるからな!
・・・この世界にパフェあるのか??




