第015話 ~Gとキス~
「愛!待ってろ!今行くからな!!」
「ちょ!お兄ぃはやっぱりダメ!こないで!でも、助けて!!」
愛、どっちなんだ!?行っていいのか?悪いのか?
「良くわからんが、入るぞ!」
扉を開こうと手を伸ばした瞬間、ぞくっ と寒気を感じた。
気が付くと首元にナイフが・・・。銀色に光るナイフは、もちろんルエルのナイフだ。
「ユーキ、さっき『償う』と言っていたわよね?この行為は償いかしら?」
「愛を助けたい一心で」
「そう、ここは私が何とかするからユーキは向こうを見て。こっちを見ないでね」
「そうさせてもらうよ」
俺は後ろを向き、ゆっくりと目を閉じる。いったい何が起きたんだろうか?
「アイ、入るわよ」
ガチャ ギィィィ 扉を開けたルエル。
ねぇ、どんな状況なの?ボク見えないよ。そっちを向いていいかなぁ?
「ユーキ、絶対にこっちを見ないで。私はまだユーキを手にかけたくないの・・・」
ルエルは愛に歩み寄り、耳打ちする。
「(アイ、とりあえず、落ち着いて聞いて。まず、下着をはいて。膝まで落ちてるわ))」
「(ふぁぁぁぁ!ご、ごめんなさい!こんな所みせちゃって!)」
「アイ。いったい何があったの?見た感じ、どこにもけがはないようだけど」
「足元に何かいるの。黒っぽい何か。動きが早くて目で追えなかった。もし、もしあの黒いのがGだったら・・・」
「アイ、落ち着いて。黒い何か?一匹だったの?」
「多分一匹。あ!いた!!!あそこの隅にいる!!」
二人は何かを見つけたようだ。
カサカサカサカサ・・・・・
「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」」
とっさにルエルは詠唱し始める。
まただ、また耳鳴りがする。さっきもだが、ルエルが詠唱すると耳鳴りがするのか?
『風の聖霊よ!我に力を与えん!! エアカッター!』
ルエルの指先から何か波状の物が黒い物体に飛んでいく。
「おーーい、2人とも。俺はいつまで後ろ向きなんだ?そろそろそっち見ていい??」
「ユーキ!早くこっちに来なさい!いつまで後ろ見て立ってるの!早く何とかして!!」
「お兄ぃ!出た!あれだ!きっとGだよ!!」
俺はゆっくりと二人の方を見る。
愛はトイレの中。ルエルはトイレの外。
二人の足元には黒い何か。何だあれ?
あ、あれだ。その黒い物体は G にそっくりだ。
色、触覚、動き方。異世界でも同じよな生き物いるんだな!
『風の聖霊よ!我に力を与えん!! エアカッター!エアカッター!エアカッター!エアカッター!エアカッター!エアカッター!エアカッター!』
危なっ!連続魔だ!かっこいいな~って、危ない!!無差別に攻撃しているのか?
「ルエル!落ち着け。詠唱中止だ!!!」
ルエルは詠唱を中断し、息をあげている。
はぁはぁしているルエルも可愛いな・・・。
あの連続魔の中Gはまだ生きている模様。カサカサ歩きまわっている。
あ、飛んだ。こいつ飛べるんだ!
「「きゃぁぁぁぁぁ!!!」」
二人とも、ものすごい速さで走って逃げてくる。
「二人とも落ち着け!そのままじゃ・・・」
と、話しているうちに俺にぶつかる。
二人が俺にのしかかってくる。お、重い・・・。
すると俺の右手には宝山の片方。左手には愛の片ちっぱい。
神はここに居た。ナイス『G』改め『GOD』よ。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
しかし、早く起きなければ二人に怪しまれる。
これは事故だ。全てGによる事故に過ぎない。
俺は立つぞ。起きて、立ち上がるんだ!!
しかし、別なものも立ち上がりそうだ。でも、俺は紳士なのでそうはならない(多分)。
両手に力を入れ起き上がる。
起き上がる時に両手に力が入るのは仕方がない。事故だ。
起き上がった瞬間、目の前にGが飛んできた。
ふぁぁぁぁ!!!!!
とっさに首を曲げ回避する。
回避しただけなのに、なぜかルエルにキスしてしまった。
何故俺の顔の前にルエルの顔があるんだぁ!!
事故だ事故!これは陰謀だ!!!!
俺はすぐに立ち上がり、Gを追いかけようとする。
今すぐこの場を離れるのが正解ルートだ!
が、左手首を愛につかまれた。
愛の左手が俺の左手首をつかんでいる。凄いパワーだ。某戦闘民族のスーパー何とか位の戦闘力がありそう。
右手はグー。じゃんけんぽん?
目はしっかりと俺の目を見ている。
「お、お兄ぃのばかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
愛の右手に込められたパワーは計り知れない。どれだけ戦闘力を上げてくるんだ。
右ストレートで俺のあごを狙っている。
来た!渾身のストレートだ!!今回は避けた方がいい!きっと軽い怪我じゃすまされない。
この瞬間、俺は加速する。愛の右ストレートがゆっくりになる。
俺の持つスキルの一つ『愛のグーパンだけは避けられるように加速世界に入れるスキル』
避けたぁぁぁ!!!
が、なぜか愛の腕が伸びきった後、拳の先から赤い空気のようなものがGを目がけ飛んで行った。
赤いもやもやはGに直撃し、Gは息絶えた。
?????
「愛。なんだそれ?」
「お、お兄ぃ。なにこれ?」
互いに見つめ合い、頭の上には大きな『?』が浮かんでいる。
「ユ、ユーキ。アイ。みんな落ち着いたようだし、一度席に戻りましょう」
顔を真っ赤にしながらルエルは話しかけてきた。
ちょっとだけとがった耳の先まで真っ赤だ。
愛の拳の先から出たもやもやも赤い。
何か、共通点でもあるのか!
そんな事を考えながら、席に着き紅茶を一口飲む。
「さ、本題に入りましょう。入ってもいいわよね?二人とも」
さっきの事は華麗にスルーしたな。
俺もその方が今は都合がいい。
後で何とかしよう。ルエルの事も愛の事も。




