第014話 ~父の言葉と帰れるヒント~
「いやーーー、ルエルの話は長い!!もう少し要点まとめて、短くお願いします!」
「そうかしら?私なりにまとめて話したのだけどね」
「さて、前置きは終わった。ルエル、本題に入ろうか」
「そうね、本題に入るわ。実は・・・」
「ちょっとまったぁぁぁ!!!」
愛が大きな声で、挙手をしている。
「びっくりしたぁ。愛、どうした?そんな大声出して」
「えっと、非常に盛り上がっている所に水差すようでごめんなさい。ルエルさん、ちょっといい?」
愛はルエルに近づき、そっと耳打ちする。
「(化粧室ってどこ?さっきから我慢しててさ・・)」
「(ふふっ。ごめんなさい、気が付かなかったわ。そこの廊下の突き当たりよ。暗いから、これを持っていったほうがいいわ)」
ルエルはテーブルの上に会った、ろうそくを愛に渡した。
「ありがとう!助かるよ!お兄ぃ、ちょっと席外すね」
「あぁ、トイレか。こそこそしなくていいんだぞ」
「バカ!デリカシーがない!そこは察してほしいところ!」
「すまんな。早く戻ってこいよー」
愛は小走りで廊下の奥に消えて行った。
「ルエル、本題に入る前に一つ確認したいことがある」
「改まって何かしら?」
「俺が初めてルエルに会ったとき、ものすごい好戦的だった。ビビるくらいに。ところが急に普通になった。まぁ、それでもやや好戦的だが、初めて会ったときは命の危険を感じた。どうして急に態度を変えた?」
「それも後で話そうと思ったのだけど、アイの居ないことろで話したかった、って事かしら?」
「察しがいいな。あいつには余計な心配をさせたくない。で、態度を変えた理由はなんだ?」
「私は話が長いらしいから、一言で済ますわね」
「一言でまとめて、その後に説明はしてほしいな」
「『私を助けてくれる』って思ったの。いえ、正確には思い出したの」
「思い出した?どういうことだ?ルエルは俺の事を知っているのか?」
「ユーキの事は知らない。でも、異世界の人ってくくりなら心当たりがあるわ」
「そうなのか?」
「父が最後まで研究していた『異空間転移魔法』の話はさっきしたわね」
「あぁ、結局できなかったんだろ?」
「いいえ、さっきの話の中では できたとも、できなかったとも言っていないわ。結局まだ研究中には変わりないの。でも、父の言葉を思い出したの」
『知らない言葉を話す者が突然部屋の中に現れたら、友達になりなさい。きっとルエルの力になってくれる』
「ずいぶん突拍子もない言葉だな。確かに、言葉は通じない俺が、突然来たがな」
「初めは盗賊だと思ったわ。でも、途中で父の言葉を思い出したの。ここから先は想像の話よ。確認もしていないし、正しいという保証もない。でも、ユーキが帰れるヒントがあるかもしれない」
「借金の話も重要だが、俺にとってはそっちの話も重要だな」
「私にとってはどちらも重要な話よ」
「そうだな、愛が戻ってきたら話を進めようか。愛に再度説明するのも時間がかかるしな」
「そうね、さっきみたいに寝なければいいのだけど。寝てしまったら説明はもう一度必要よ」
「なんだ、知っていたのか。次は立ったまま話を聞かせることにしよう」
お互い向き合った状態で、目線を交わしながら紅茶を飲む。
交戦状態ではないルエルは美人だな。目が合ったときにドキっとしてしまう。
ルエルは俺たちの事をどう思っているのだろうか?
少なくとも、敵意はなさそうだ。
ルエルの話ではルエルが15歳の時に親がいなくなった と言っていたな。
今は16~7歳くらいだろうか?一人で頑張っているんだな。
年も愛と同じくらいだし、友達になってくれるだろうか?
そんなことを考えていると
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
愛の悲鳴が聞こえた。
今日何回目の悲鳴だ?そばに俺がいないので、グーパンは飛んでこないが一応見に行ってみるか。
ルエルと二人で廊下を進み扉の前に立つ。
「アイどうしたの!何があったの!?」
「愛!大丈夫か!」
二人で扉の向こうにいる愛に声をかける
しかし、返事がない。何が起きている!ま、まさか殺人事件!
異世界物から探偵物へ路線変更か!
「お、お兄ぃ。ルエルさん。た、助けて・・・。動けなぃ」
愛!それは、この扉を強行突破しろってことでいいんだよな!!
待ってろ!今すぐに助けに行くぞ!!!




