表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/142

第135話 ~ホールとカウンター補助~


 イリッシュとホールに出る。そこには男性客で埋まったカウンター。

そして、男性客で埋まったテーブル席。さらに男性客で埋まった売り場。


 見るからに暑苦しい。本当に暑苦し。鎧やローブを羽織った男どもが所狭しと動いている。

確かに実演販売で効果はあった気がするが、何か方向性が違う気がする。


 予定では


『このクシかわいー!』

『こんな便利なものあるのー』

『私も買おうかしら?』

『いいわね! 私も一つ買っていくわ!』

『この紅茶もおいしいし、中で少しお茶していく?』

『いいわね!』


 そんな女性客で埋まる予定だったのに……。

さっきからカチャカチャ鎧の動く音がする。耳障りきまわりない!

女の子のきゃっはうふふな会話はなく、外にいる愛についての会話がほとんどだ。


 かわいいとか、気になるとか、嫁に欲しい! とか、今夜空いているかな? とか……。

この世界の男は女に飢えているのか……。


 ふと、うちの女性陣を見ると、カウンターにはルエルが固定で何か作業しており、フィルはホールの中を動いている。

うん、フィル一人では回りきっていないな。


「さて、イリッシュこの状況で俺達はどう動く?」


 イリッシュもこの人数の来店に少し戸惑っているようで、耳がピンとはねている。


「そうですね。会計とカウンターのサポートで一人。あとはフィルのサポートに一人でしょうか?」

「そうだな、それがいいと俺も思う。イリッシュはカウンターとホール、どっちがいい?」

「カウンターでは少し調理もしているようなのですが、私がカウンターでも?」


 それはまずい。色々な意味でまずい。

ここで病人を出したら店の評判にかかわるな。

イリッシュの作る料理はまだ人前に出せるレベルではない。


「俺がカウンターに入ろう。イリッシュはホールを頼む」

「あっさりですね」

「まぁな。ホールがひと段落したら俺がフィルとカウンターを変わる」

「分かりました」


 二人で一度ルエルの居るカウンターに行き、状況を確認する。

すでに作り終わったと思われる軽食とアイスティーが準備されており、出待ちの状態だ。


「ルエル、待たせたな。俺がカウンター補助に入るから、イリッシュをホールに出すぞ」

「お願いね。このオーダーは奥の三人いるテーブルにお願い」

「分かりました。では、行ってきますね」


 イリッシュはトレイにオーダーをのせホールに出る。


「ユーキは会計できるかしら?」

「すまんが、会計はできないのであとでフィルと交代する」

「分かったわ。じゃぁ、それまでは調理補助と皿洗いをよろしく」

「かしこまりー」


 たんまりたまった洗い物。結構な量ですな。

そして、この量をさばいたルエルもすごいな。


 俺は洗い物をしながら、ルエルの作る料理に合わせ皿やコップを棚から出していく。

キッチンにはあまり入ったことはないが、なかなか使い勝手がいいな。


「おねーちゃん! 俺の頼んだものはまだ来ないのか?」

「申し訳ありません、もう少々お待ちください!」


 やや店内も混乱気味だ。外の実演販売中の愛は一人で大丈夫だろうか?


「すません! このクシと髪飾りの会計を!」

「はい! 今行きますね!」


 ルエルもややパタパタしている。

ふっと、レジを見るとすでにフィルが会計を始めている。

なかなかいい動きだな。自分の作業をしながらこっちを確認し、自分の動きをそれに合わせている。


「……クシと髪飾りで一万五百ジェニ」

「あいよ。ん? 外で飲んだドリンク代は?」

「……今回だけの特別サービス。是非、また来てほしい」

「そうか、それはありがたいな。今度彼女と一緒に来るよ」

「……是非」


 会計を済ませた客が帰っていく。

フィルの接客もまぁまぁかな? 少し元気がないが、不快ではない。

愛の元気を少しフィルにあげたい位だ。


 洗い物も半分位終わったので、フィルとポジションを変える。


「フィル、カウンターとホール交代。俺はレジが出来ない」

「……ん。わかった」

「洗い物しながら、ホールとカウンターを行き来するから、ルエルのサポートよろしくな」

「……了解した」


 フィルはルエルと一緒に調理をしながら、盛り付けなどを行う。

出来たものから、ドンドン俺とイリッシュで運び、空いた席から食器を下げる。

そのまま、下げた食器を俺が洗い、棚に戻していく。


「お嬢ちゃん、会計いいかな?」


 フィルに向かってオッチャンが声をかける。


「……お待たせしました」


 オーダー表を見ながらレジをする。

俺もレジ位覚えないとダメだな。まったく役に立っていない自分が腹立たしい。


「……千五百ジェニ」

「じゃぁ、二千ジェニから」

「……五百ジェニお釣り。ありがとうございます」

「思ったよりこの店は良かったよ。また来るからな」

「……ありがとう。とてもうれしい。お待ちいてます」


 微笑んでいるフィルは見ていてちょっとかわいい。

子供の笑顔とはちょっと違う微笑み。作り笑いかもしれないが、心に響く微笑みだ。


 会計が終わったフィルはすぐにカウンターに戻り、盛り付けとトレイにオーダー品をのせていく。


「……手前の二名。このトレイでオーダー完了」

「分かった」

「私持っていきます!」


 さっき『遅い』と言ったお客さんのオーダーだ。

若干、イライラしているお客様かもしれないので、ちょっと注意が必要かもしれない。


 ちょっと注意して見ていた方がいいな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当作品の評価&感想は最新話の最下部より可能です!
是非よろしくお願いいたします。


↓小説家になろう 勝手 にランキング参加中!是非清き一票を↓
清き一票をクリックで投票する
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ