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第132話 ~ジト目と依頼内容~


 はひゅー! い、息がやっとできるようになった。

うずくまった状態から、片膝を立てやっとの事で顔を上げる。


 そこには半泣き状態でこっちを見ているイリッシュがいる。

両腕をプルプルさせ、こっちを睨んでいる。


 俺がイリッシュに何かしてしまったのであろうか?

勝手に転移してしまった事か? それとも遅れてしまった事か?

しかし、さっき『結婚の話しなんか!』と叫んでいた。

それが問題になっている気がする。


「イリッシュ。激しく痛いんだが……」

「痛くしたんです! 当たり前です! 身体強化していないので手加減しましたよ! これでも!」


 確かに、あの状態で身体強化していたらおそらく後方まで吹っ飛んでいると思われる。

しかし、普通の状態でも結構な破壊力じゃないですか!


「して、俺はなぜ攻撃を受けたのか、説明をしてもらえるか?」


 イリッシュはため息をついき、ジト目で俺を見る。

ツインでジト目。はたから見たら萌え要素満載なんだが、俺にそんな余裕はない。

ゆっくりと立ち上がり、イリッシュの目の前まで歩いて行く。


「はぁ……。ユーキ兄。結婚の話をして、いきなり消えたじゃないですか」

「確かに、消えたな。あの場では消えるのが最善だと思ったのだが?」

「ユーキ兄はホビット族の婚姻について何も知らないのですか!」

「……知るはずがないだろう! だからあの場で聞いたんだよ」

「何故、あの場で聞くんですか! 先に私に聞くチャンスがいくらでもあったじゃないですか!」

「えっと、俺は何かまずいことをしたのか?」

「呆れて言葉が出ません。勉強不足ですよ!」

「そこんとこ詳しく」

「いいですか、未婚の女性の母に対して、申し込み方法を聞く。これはどうしたら結婚できますか? と、ご両親に婚姻の了承を得るために聞く事です」

「はい?」

「そして、相手の女性が魅力的であることに同意する。これは自分が女性に対して婚姻の意思がある事を伝えます」

「はぁ……」

「さらに、話の途中でいなくなる! これは、結婚したら自分についてこい! すべては自分が全責任を負う! という意思表示です!」

「……」

「そして、家族以外の第三者の目の前で終始話を聞く人物がいる! これはその家族含め、婚姻を申し込むときの同意を得るためです!」

「ソウナンダー」

「……なぜ。なぜ、消えてしまったんですか! それさえなければ回避できたのに! ユーキ兄のバカ!」


 やってしまった。もう嫌です。

この世界の結婚申込み方法についての説明書が欲しい……。


「俺はコロムに結婚を申し込んだのか?」

「そうです。まだ、コロムちゃんの同意を得ていませんが、このままいくと成人したら結婚です」

「オーマイガ。ナンテッコタイ」


 俺は思わず、両膝を落とす。この世界はくるっている。

種族ごとの結婚申込み方ほがここまで異なっているとは。誰か、何とかしてくれ。

そうだ、王様とかにお願いをしよう! 異世界から来た人には適応させないとか。


「そんな良くわからない片言の言葉では逃げられませんよ。解消するのであれば、三日以内に何とかしないと」

「解消方法はあるんだな! どうすればいい! これ以上問題を抱えるのは無理だ!」

「ホビット族は初婚の場合に限り、結婚している男性との重婚はできません」

「つまり?」

「三日以内にユーキ兄が結婚してしまえば、それを理由に断る事ができます」

「なるほど! わかった三日以内に俺が結婚すればいいんだな!」

「そうです!」


 できるかい! 三日で結婚とか、ムリゲーもいいところだ!

異世界で結婚とか、その後の事も考えたら結婚なぞできるかいっ!


「無理だな。他に方法は?」

「ユーキ兄の死亡確定か、コロムちゃんが他の男性を好きになり、コロムちゃんが断るかのどちらかです」

「一つ目は絶対に無理。二つ目の方にかけるしかないな……」

「それも結構難しいですよ」

「なぜ?」

「コロムちゃんは『ユーさんならいいですね! 私の依頼を聞いてくれた優しい方です!』とか言っていました」

「討伐に失敗すればいいのか?」

「それはそれで、私達に問題がありますよ? 期限もありますし」

「どうしたらいいんだ!」

「私に聞かれても……。そもそもユーキ兄が結婚を申し込まなければ!」

「それはしょうがないだろ!」


 二人とも結構ヒートアップしてきた。冷静になれ、一個ずつ問題を解決していけばいい。

きっと抜け道があるはずだ。


「イリッシュ、落ち着け。俺も冷静になる」

「分かりました……」

「とりあえず、一階に行って何か飲もう」

「そうですね。のどがカラカラです」


 仕入れ部屋を後に俺達は一階に行き、ドリンクを注文する。

時間帯のせいか、ギルドは人がまばらだ。


「ふぅ……。少し整理しよう」

「そうですね」

「まず、討伐について。依頼内容の確認をしようか」

「はい。依頼内容は盗賊の壊滅。アジトは王国の南方面で、場所は割れていますし、結構近いです」

「それはありがたいな」

「人数は十人。小さな盗賊団で、人属のみの構成です」

「人間だけって事か」

「そうですね。討伐証明は、生きたまま冒険者ギルドに連行する事」

「十人全員連れてくればいいんだな」

「そうですね。恐らく私達だけで戦闘不能にすることは可能と思いますが、連行するのが大変だと思います」

「よし、俺に案がある。そこは心配するな」

「分かりました」

「決行は今夜。二人でこっそり行くぞ」

「いいのですか? 今から行かなくて」

「今から行ったら時間がかかるし、店のみんなにばれたらめんどい」

「そうですか、わかりました。今夜二人で店を抜けての決行ですね」

「ああ、皆寝てからこっそり行くぞ」

「はい。私も準備しておきます」


 話はサクサクまとまり、討伐については何とかなりそうだ。


「次の問題だ。コロムとの婚姻について」

「重大問題ですね」

「回避したい。何としても回避したい」

「一番確実なのは、ユーキ兄が三日以内に結婚する事ですよ」

「誰か女性を連れて行って『結婚してます!』と言えばいいのか?」

「そうですね。両親と本人の目の前で、婚約者と一緒に話をすればいいと思います」

「そうか。とりあえず、明日中に何とかしよう」

「良い案があるのですか?」

「店のみんなには内緒にしたいので、イリッシュと結婚したことにすればいい!」

「無理ですよ?」

「なぜ?」

「私はまだ成人してませんから……」


 なんてこったい。イリッシュは成人前だったのか!

他に何かいい案はないものか……。






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