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第121話 ~約束とアイスティー~


 確かにこの世界に来てから、愛と二人で出かけたことは無いな。

知らない事が多すぎるし、何より俺達はよその者だ。何かあったときの対応が難しい。


「この世界の事は愛にはわからないだろ? ルエルとフィルは店の事があるし、イリッシュが適任だと」

「ずるい。私もお兄ぃと街に行きたい!」


 確かに、愛と一緒に街にはいっていない。愛の気持ちもわからなくはない。

しかし、今は時間が無くなってしまった。どうやってなだめようか……。

うーん、よし! 問題を先延ばしにしよう!


「分かった。戻ったら一緒に街に行こうか」

「やったぁ! 絶対だよ! 忘れないでよ! 約束だよ!」


 そんな話をしているとルエルが両手に大きな桶を持ってきた。

一体どこにそんな大きな桶が……。


「これでいいかしら?」

「十分だ。そこに置いてくれ」


 床に置かれた桶に向かって両手を出す。

ここは俺の力を見せる時! 俺なら絶対にできるはず!


 左右の手に魔力が集まるイメージをうする。

大きさは一口サイズの水、そして分子を止めるイメージ。

動きを止めて固まったイメージをする。


 そう、氷の生成だ。冷蔵庫についている自動製氷をイメージする。

水の中の分子さん達に止まってもらう。

『お前ら! 動くんじゃねーぞ!』と声をかけてみる。


『っへ! やなこった! 俺達は流れる水のように動きたいんだ!』

『すいません。ちょっとだけ止まってもらえないですか?』

『なんでだよ! 俺達を止めたらいい事でもあるのかよ!』

『あるぞ。冷たく、気持ちよくなれる』

『気持ちよくなれるのか?』

『ああ、今までにないくらい、気持ちよくなるぞ』

『そ、そうか。じゃぁ、少しだけ止まってみてもいいかな?』

『是非お願いします!』

『しばらくしたらまた動くからな! ほんの少しだけだぞ止めるのは!』

『ありがとうございます。助かります!』



――カラン


 桶に一個の氷が出る。

よし、出来た。このイメージでたくさん出してみよう。


「ユーキ、すごいわね。氷の生成って高等魔法なのよ?」

「イメージだ。一個一個丁寧に話しかけている」

「お兄ぃは本当に器用だね。食べていい?」

「ま、まて! まだ駄目だ。たくさんできたら一個いいぞ」

「うー。じゃぁ、早く作って」

「わ、わかったよ。ちょっと待ってろ」


 再び魔力を手に集めるイメージから始める。


『すいません! 止まってもらっていいですか!』

『いいわよ、ちょっとだけよ。あんたも好きね』

『はい! 僕、冷たいのが好きなんです』

『少し経ったら、火照って溶けてしまうけどいいかしら?』

『はい! 大丈夫です! お願いします!』


――カラン


 二個目生成完了。……効率が悪いな。

いや、考えている暇はない、次行くぞ!


『全員整列! 前へならえ! 休め! 止まれ! そのまま維持!』


――――カラン、カラン、カラン


――カラン、カラン、カラン


「ふぅー。こんなもんでいいか」


 桶には山のように氷ができている。

愛とルエルは氷を口に含み、ほっぺたが膨らんでいる。


「冷たくて気持ちいわね。氷を食べたことなんて初めてよ」

「そうなんだ、この世界って氷は珍しいの?」

「そうね、生成できる魔道具はあるけど、とても高価よ。普通の店には無いわね」

「そうなんだ。お兄ぃ、良かったね。これも売るの?」


 え? 氷を売る? 売れるのか?


「ルエル、これって売れるの?」

「売れるわね。でも、溶けるから、早めに何とかしないと」

「ほぅ、いい事を聞いた。じゃぁ、これも外で実演販売しよう」

「氷だけ実演ってそうするの? 食べてもらうの?」

「いいや、ルエルの紅茶に入れて、アイスティーとして実演する」

「なるほど! お兄ぃさえてるね!」

「気に入ったら、氷や紅茶を通常価格で販売だな。なくなったらまた生成すればいい」

「価格は?」

「ルエルに任せる。相場が全く分からん」

「分かったわ。アイ、すぐに出るわよ。氷が溶けてしまうわ」

「了解!」


 ルエルと愛は販売用のコーム、氷、お茶を準備して、早々に外に出ていく。

予定外の事だが、氷が売れるのであれば少しだけ売り上げにつながる。

少しはましになるかな?


 さて、俺も出かける準備をするか。

フィルが試作で作った魔道具をバックから出す。

そして、昨夜エンチャントした魔石を取り付ける。

俺の考えが正しければ、これで動くはずだ。外に行ったら実験してみよう。


 施策魔道具に魔石を組み込み、再びバックに戻す。

みんなにはまだ内緒。失敗したらちょとかっこ悪いしね。


「お待たせしました」


 イリッシュが階段から降りてきた。グッドタイミング。

服装はさっきと同じ。髪だけツインテールにまとめているようだ。

うん、可愛いね!


「よし、準備はいいな」

「大丈夫です」


 俺達は店を出て、先に出ていた二人に声をかける。


「じゃぁ、行ってくる。夕方には帰る思うから昼ご飯はみんなで先に済ませておいてくれ」

「わかったわ。ユーキ、無茶しないでね」

「分かってる。心配するな」

「それでは行ってきますね」

「イリッシュちゃん! お兄ぃが余計な事しそうになったら力ずくで止めてね!」

「わ、わかりました。がんばります」


 イリッシュと二人で街に出る。二人っきりで外に行くのは初めてかな?

目的地は冒険者ギルド! さぁ! 行くぞ!


「なぁ、イリッシュ」

「はい、何でしょうか?」

「冒険者ギルドってどこだ?」



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