第011話 ~初体験と狼男~
テーブルに着く三人。俺の正面にはルエル。隣に愛がいる。
店には夕日が差し込んできている。夕方だ。この感じは日本に近いものを感じるな。
テーブルには水ではなく、木のコップに入った紅茶が三つ。
この世界でも紅茶はあるようだ。
「ところでユーキ、台所拭いたの?」
「あ!忘れてた!」
「しょうがないわね。私が拭いてくるから、妹さんと少し話をしていて。すぐに戻るわ」
ルエルは席を立ち、さっきまでいた倉庫に戻っていく。手間をかけさせてしまったな。
「お兄ぃ。何から話す?」
「とりあえず、俺がこの世界に来た所から、愛と会うまでを簡単に話しておこうか」
「そうだね。聞かせて!」
俺は愛に今までのいきさつを話した。
「初めは愛と同じように、裸で倉庫にいた。そこでルエルと会って、翻訳の指輪をもらったんだ」
あえて、初めの衝突部分は話さない。愛に余計な心配はさせたくないからな。
「それから、この部屋に来てルエルに(属性鑑定を)ヤってと言われただ」
「っぶ!いきなりやったの!」
「俺も初めはびっくりしたが、生活をするうえで必要なんだってさ(魔法適性検査が)」
「そ、そうなんだ。ルエルさんも大胆だね」
「俺も初めてだったから、なかなか上手くできなくて。こう、両手を腰の前あたりに持ってきて、何かをつかむような感じで、集中したんだ」
「(ルエルさんの腰を)つかんで、感じて、集中したの・・・」
「そう、そうして、初めてだけど4つ同時にできたんだ」
「(四点攻め!両手と、口と・・・・・)お、お兄ぃ初めてなのに四つなんだ」
「ルエルによると、普通は1~2らしい。俺はちょっと才能があったみたいだな!」
「そうだね、普通は1~2だよね!」
「それから、今度は一つ(の魔石)に集中したんだ。右手ですっぽり収まる(魔石の)大きさだったな」
「ルエルさんもすっぽり収まったんだ。そんなに大きくないんだね」
「そうだな、そんなに大きくない。でも真っ白できれいだったよ」
「(ルエルさんの肌は)確かに真っ白だね。きれいだよ。それは認める・・・」
「でも、そっちはあまりうまくできなくて、ちょっと小さくなっただけだった」
「(お兄ぃのが)ち、小さくなったんだ」
「それから、台所に場所を変えて、練習したんだ」
「だ、台所でもしたの!お兄ぃ、初めてなのに!」
「初めてだから、簡単なところからしたんだよ。こっちも初めはなかなか上手くできなくて大変だった」
「台所では大変そうだしね。それに初めてだったんでしょ?」
「あぁ、でも何回か練習したらできたんだ。思ったよりも勢いがすごくて、ビューって出たんだ。俺も初めて出したからあわててしまってね」
「え?初めて出したの!しかも勢いがすごかったんだ・・・・」
「俺一人だったらそこまで出なかったが、ルエルと一緒にやったから、あの勢いで出たんだな。で、結果的に俺がルエルを濡らしてしまった。勢い余ってビショビショだったよ」
「お兄ぃがルエルさんを濡らしたのね。そして、びしょびしょになったんだ・・・」
「あぁ、俺は少しだけ濡れたんだが、ルエルはものすごい濡れてしまってね。大変だった」
「そ、そうなんだ。ルエルさんすごい濡れちゃったんだ・・・」
「もちろん俺はすぐに謝ったさ。まさか、そこまで濡れるとは思ってなかったし」
「そ、そこはね。うん、誤っていた方がいいと思うよ?多分」
「それで、床まで濡れてしまったので雑巾を取りに倉庫に行ったら、愛に会った!と、いう訳さ」
「私がいない間に、すごい展開になっていたんだね」
「ルエルは着替えてから倉庫に来たみたいなんで、台所は濡れたまま。だからさっき、ルエルは拭きに行ったんだよ」
「お兄ぃ。もう、私の知っているお兄ぃじゃないんだね・・・」
「そうさ!俺はこの世界で一皮むけたんだ!」
「良かったねお兄ぃ・・・」
愛は半泣きになりながら、顔を真っ赤にして下を向いている。
「そうだ、愛も後でやってみるか?初めは結構ドキドキするよ?」
「ふぁぁぁ!そ、そんな!いくらお兄ぃだからって、いいことと悪いことがあるよ!」
「そうか?こっちの世界じゃみんなやってるらしいんだがな。じゃあ、試にルエルとやってみるか?」
「ちょーー!ルエルさんと私が?ど、どうしてそんな!急に言われても・・・・」
愛は、なぜかあわてている。何をあわてているんだ?
この世界じゃ、みんな属性確認してるのに。
そんな会話をしているとルエルが戻ってきた。
「結構盛り上がっていたわね。どんな話をしていたのかしら?」
「俺がルエルとさっきやった事について話していたんだ。びしょびしょにして悪かったな」
「しょうがないわ。ある意味事故ですもの。アイもあとでやるわよ。これはこの世界で必要な事なの」
「二人はそんな関係になっていただなんて・・・。私はきっと、邪魔なのね・・・。ごめんお兄ぃ、こっちの世界に来てしまって・・・・」
「何を言っているんだ愛。邪魔な訳ないだろう」
「アイ、ユーキと一緒に元の世界に帰るんでしょ?仲良くしましょうね」
・・・。誰も言葉を発せず、長い沈黙が続く。相変わらず愛は半泣き状態で顔が赤い。
「愛!もしかして、どこか具合が悪いのか!?」
「・・・お兄ぃ。具合は悪くない。でも、私はここに居たくない!!」
そう叫んで愛は俺の右頬にまたもやグーパンをかまし、店の入り口に走っていく!
俺は、グーパンを貰ったが必死に持ちこたえ、愛の方を見る!
「愛!どうしたんだ!何があったんだ!」
「ナニがあったのはお兄ぃの方じゃない!お兄ぃの事、信じてたのに!!!」
まずい!愛が訳の分からないことを叫びながら店を飛び出てしまう!
止めなければ! ここで見失ったら、きっと二度と会えない気がする!
「待て!愛!落ち着け!!!!」
「アイ!待って!戻ってきて!理由はわからないけど、きっと何か大きな誤解をしているわ!」
愛が扉を開こうとした瞬間、先に扉が開いて誰かが入ってくる!
カラン コローーン
「ルエル!いるか!!!回収しに来たぜ!今日こそは払ってもらうからな!!!」
そう叫んだのは見た目は狼男!
愛!危ない!!ぶつかる!!!!!




