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第116話 ~OGWSと嘘~


ルエルと話をしながら店へ帰る途中、とある店に入る。

俺が入ったわけではなく、ルエルが半ば強制的に入って行った店に連れ込まれた感じだ。

見た目はレンガ調の店で、中にはカウンター席とテーブル席がある。


 お客さんも少し入っており、飲んだり食べたりしている。

どうやらここは軽食店のようだ。


「いらっしゃーい。二人でいいのかしら?」


 俺たちの目の前にヒラヒラエプロンを身にまとった綺麗め系のお姉さんが立っている。

手にはトレイを持っており、頭には白のカチューシャを付けている。


「ええ、二人でいいわ。奥の方の席は空いているかしら?」

「えっと、空いているわね。案内するわ」


 お姉さんにが振り返り、俺達を案内する。

お姉さんの背中はなぜかぱっくり開いており、首から腰までVの字で全開だ。

色っぽい。ただの軽食店なのに、この制服? 素晴らしい。


「ユーキ。鼻の下伸びてない?」

「伸びてない。まったくもって大丈夫だ。ルエルが隣にいるのに、腰のくびれとか気にしないよ」


 思いっきり腕をつねってきた。なぜ?


「はぁ……。相変わらずね。まぁ、いいわ。私もあの服は可愛いと思うし」


 そんな話を小声でしていると、奥の席に案内された。

他のテーブルやカウンターからは死角になっており、通路も行き止まりなので内密な話をするにはもってこいな感じだ。


「ご注文は?」

「フラワードリンクでお願いできるかしら?」

「じゃ、俺も同じので」


 お姉さんはメモを取り、カウンターに戻っていく。

あれ? 急いで現金を集めないといけないのに、なぜドリンク注文しているのかしら?

ついつい普通に注文しちゃったよ。


「えっと、ルエル?」

「わかっているわ。無駄な出費というのでしょ?」

「大丈夫なのか?」

「大丈夫よ。以前ここのサービス券をもらったの。こういうのも使い切らないとね」

「そっか。何か、身辺整理しているみたいだな」

「……そうね。準備はしておいた方がいいかもね」


 失言だな。ごめん、そんなこと言うんじゃなかった。


「急に店に入って、どうしたんだ? 真っ直ぐ帰るんじゃなかったのか?」


 ルエルを直視し、真顔で質問する。ルエルは少ししゅんとして、目線を下げる。


「ごめんなさい。でも、どうしても心残りがあったから」

「そうか。まぁ、ワンドリンク位なら大丈夫だろ」


 店は結構静かだ。他に客もいるがここまで声が届かない。

こんな店の作りにして大丈夫なのか? カウンターとか全く見えないんだが?


「そうだ、ルエルに聞きたいことがあったんだ」

「何かしら?」


 俺はバックから一つの巾着を取り出す。以前ゴブリンからもらったアイテムが入った巾着だ。

中から数点のアクセサリーを取り出す。


 ルエルの目の前に一つ一つ並べてみる。


「多分、魔道具だと思うんだが、どんな効果なのかわかるか?」


 ルエルは一つリングを手に取り眺める。他にも数点触って、握って、眺めている。


「私は鑑定士じゃないから、正直わからないわね。石の色から属性しか読み取れないわ」

「そうか、鑑定士ってどこにいるかわかるか?」

「ユーキも一度会った事あるわよ」

「へ? 会ったことがある?」

 

 ルエルはニコッとしながら俺に答える。


「ヘレンおば様。ボムおじ様お奥さんで、フィルのお母さんよ」


 なんだと。そんなそばにいたのか!


「い、意外とそばにいたんだな」

「鍛冶屋は修理もするから、鑑定の資格もあった方がいいのよ。ボムおじ様も鑑定できるけど、おじ様よりも正確な鑑定ができるって聞いたことがあるわ」

「そうなんだ。しかし、それは助かった。あとで鑑定してもらおう」

「簡単な鑑定であればフィルもできるわよ? おば様から色々と教わったみたい」

「そうか、じゃぁ、帰ったらフィルにも聞いてみるか」


 アクセサリを巾着に戻し、バックに入れる。

そんな話をしていると、俺達に近づいてくる足音がする。


――コツコツコツ


 聞きなれない足音。この世界にヒールのシューズなんてあったのか?


 そして、それは俺たちの目の前に現れた。


 な、何だこの小さいのは。座っている俺と同じ目線だ。

しかも結構な高さの厚底靴だ。俺の拳一つ分位あるぞ。


「おまたせいたちました! ドリンクになりまつ!」


 めっちゃかんでるやん。まだ子供なのか?


「ありがとう。仕事、続いているようね」


 ん? ルエルの知り合いか?


「あい! がんばってまつ! 前の仕事より、すごく楽しい。奥方も良い人でつ」

「ふふ、良かったわね。今日はたまたまだけど、今度また来るわね」

「あい! おまちしておりまつ!」


 ドリンクを二つ置き、去って行った


「ルエルの知り合いか?」

「ええ、ちょっとね。昔ここの仕事を紹介したことがあるの。随分昔の話よ」


 俺はルエルの過去をあまり知らない。逆に言えば俺の事もルエルは知らない。

知っている事は必要最低限でいい。お互いを深く知ってしまうと、経験上あまりよくない。

特に男と女。今の二人の関係上、今のままでいい。


 そりゃ、結婚とかさ、同棲とかさ、深い関係になったらちょっと変わるけけどね。

同棲? 今の環境って同棲って言えるのか? どちらかというと下宿に近いな……。


 俺はドリンクにストローを刺し、飲もうとグラスを握る。

するとルエルがグラスを握っている俺の手を握ってきた。


――どきっ!


 少し目が潤み、高揚している表情。


「ちょっといいかしら?」


 ルエルは俺のドリンクにストローを刺す。

一つのドリンクに二つのストロー。あ、これってあれですね。


「えっと、ユーキ……」

「わかってる。だからこの席なんだな」


 微笑むルエルは可愛い。きっと俺がこの世界の人間だったら堕ちてるな。

ぞっこんですよ、きっと。


 一つのグラスに二人の手が重なり、二つのストローでドリンクを飲む。

おでこがくっつき、目が合う。


 ち、近い! モーレツに近い! 俺の鼻息大丈夫かな?

ふんふんしていないか? あ、ルエルの髪の匂い、いい匂いだ。

俺のおでこ脂ぎっていないか? 平気かな?

鼻毛! 俺鼻毛でてないよな! 丈夫だよな!


 色々な事を頭をよぎる。

人生初のワングラスダブルストロー、略してオージーダブルエス。

英語だとOGWSだな。


 いやいや、今はそんな事どうでもいい。


 ルエルの目を見ていると吸い込まれそうになるので、すこし目線を落とす。


 あいやー、こっちもダメあるよー。谷間が見えてるーね。

ルエルの服の隙間から谷間が『こんにちわ!』している。


 あかん。この状況は思ったよりダメージを貰う。

しばらくすると、ルエルはストローから口を離し息を吐く。


「ん……。ふぅー」


 その息が俺の首元にかかる。


――ふさぁぁ


 あ……。

少し暖かいルエルの息が首元にかかる。

ちょっと気持ちいかも……。


 り、理性が。こんな息一つで鉄壁の理性が崩れてしまいそうだ。

目線を上げ、ルエルの方を見ると、ルエルと目が合う。


「何を考えているのかしら?」

 

 俺もストローから口を離す。


「べ、別に。どうやって儲けようかと考えていた」


 ルエルは微笑みながら俺に話しかけてくる。


「嘘ね。ユーキは嘘をつかない方がいいわ。きっと誰も騙されないわよ」

「なぜ嘘だとわかる?」

「秘密。ユーキは嘘をつくときに声と態度にでるの。ものすごくわかりやすいわ」


 そうか。ルエルにはばれているのか。


「じゃぁ、仮に今のは嘘だったとして、本当は何を考えているのかわかるのか?」




「……。谷間と匂い」






 おっふ。完璧ですやん。

何でそこまで詳細にわかるのん? エスパーですか?



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