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第108話 ~熱い物と長い物~

今回は妹の愛視点でお話が進みます。



カランコローン



 接客していたお客さんがおそろいのアクセを買ってくれた。

私もなかなかやるね。ちょっと嬉しい。

昨日のアドバイスが効いたようで、早速二人で報告に来てくれた。


「ルエルさん! 商品補充したいから倉庫に行っていいかな?」


 それを口実に裏に行ったお兄ぃ達の様子を見てきたい。

こっそり行けばいいよね?


「アイはユーキの所に行きたいんじゃないの?」


 見抜かれた! さすがルエルさん。いい目をしていらっしゃる。


「えへへ……」

「いいわよ。ユーキとフィルにこのお茶と、お菓子を持って行って」


 笑顔で答えるルエルさんは大人だ。

私もルエルさんのように大人になりたい。

身長も高いし、胸もあるし、髪もきれいで、多分おしとやか。

たまに目が怖くなるけど、料理もうまいし気が利く。


 私は負けない! 絶対に!


 ルエルさんからおやつセットを受け取り、倉庫から裏口に。

裏庭には二羽ニワトリはいない。元納屋で今は工房になっている建物がある。

フィルのお父さんはすごいな。どうやって改築したんだろう?


 私はそーっと工房に近づき、耳を立てる。

一応、状況確認してから中に入らないとね……






 おやつセットを手に持ち、工房の入り口に着く。

入る前にちょっと中の様子をうかがいたい。

扉に耳を当て、中の様子をうかがう。二人いるよね?


「フィル熱くないか?」

「……しょうがない。これをすると体が熱くなる」 


 何か話をしている。工房の中は熱いのかな?


「そろそろいいか?」

「……まだ駄目。準備ができていない」

「あとどれくらいだ?」

「……もう少し。ユーキには入れる前に揉んでほしい」


 入れるって何を? 揉むってどこを?

ふ、二人っきりだからって何してるのかな?


「この位の強さで揉めばいいか?」

「……もっと優しくしないとダメ。もっと心を込めて」

「わ、わかった。こ、こうかな?」

「……いい感じ。ユーキは揉む才能がある」

「初めは優しく両手で揉んで、たまに強く揉むといいんだな」

「……そろそろ準備できた。入れる準備を」

「ああ、準備できてる。奥まで入れていいのか?」

「……いきなり奥に入れてははダメ。ゆっくり、慣らすように入れる」


 そ、そうだよ。いきなり奥にいれちゃだめだよ! 

お兄ぃは勉強不足なんだから!


「こ、こんな感じか?」

「……そう、ゆっくり。ん……、大丈夫みたい。もっと奥に入れていい」

「入れるぞ……。あれ? 奥まで入らないな。先に何か当たったぞ?」

「……ユーキの長いものを、もっと奥に入れる」

「奥に何か当たっているみたいだけど、押し込んでいいのか?」

「……ユーキ、入れる角度が問題。もっと、腰を使って力強く」

「むずかしいな……。こうか? あ、奥まで入った!」

「……そう、いい感じ。後は腰と腕に力を入れてゆっくりと出し入れする」

「こうか?」

「……早い。それではだめ、もっとゆっくり。相手の気持ちを考えて」


 そうそう。独りよがりはだめだよ。

相手の事も考えて、一緒に頑張らないとね! 

って、お兄ぃ! フィルも何しているの!

まだ朝だよ? さっき朝ごはん食べたばっかりだよ!

二人きりだからってずるい! いや、違う違う。と、止めないと。

このままでは取り返しがつかないことになりかねない!


 でも、入りにくいな。真っ最中なんだよね?

は、入れない! どうしよう……。


「あ、アツい……。フィル、汗かいてきた」

「……頑張って。ユーキは初めてなんだからいい経験」

「フィルは何度もしているのか?」

「……ん。何度も父さんとしている」


 な、なんですとー! フィル! えっと、この世界では普通なの?

日本じゃ捕まっちゃうよ!


「そうか、どのくらいしたんだ?」

「……んー。昔は一日一回だけど、最近は一日五回。疲れる」


 い、一日五回! 色々な意味ですごい! フィルはすごいな!

聞いちゃいけ無い事を聞いてしまった気がする。


「確かにこれは疲れるな。腰も痛いし、腕も疲れる。フィルは平気なのか?」

「……さすがに馴れた。初めは痛いし疲れるし、ひどかった。でもボクには必要な事」

「そうか。フィルも大変なんだな。そろそろ出していいか?」

「……もう少し頑張る」

「よし、ラストスパートだ! ゆっくり、しっかりやるぞ!」


 ゆっくり、しっかり、ナニをするの!

そろそろナニを出すの! ま、まずい、早く何とかしないと!


 あ、後先考えずとりあえず突っ込めばいいかな?

扉を蹴破って、どばーん! とか登場すればいい?


「……ユーキ、出していい。すっかりトロトロになった」

「わかった。すぐに出していいのか?」

「……ゆっくり外に出してほしい」

「外に出せばいいんだな。じゃぁ、出すぞ」



 コンコン



「お、お兄ぃ! フィル! 二人ともいる!?」

「愛か! いるぞ! 手が離せないから勝手に入ってくれ!」

「いいの! 入るよ! 今直ぐはいるよ!」

「……入っていい。今はボクも手が離せない」


 ふ、二人とも真っ最中なのに……。入るからね!

後でちゃんとフォローしてよね!


 ギィィィ


 私は勇気を振り絞って、たとえどんな状況でも取り乱さないように、落ちついて目を向ける。

そこには汗だくになったお兄ぃとフィル。

二人で手を取り合うように、釜の前に立っている。


 長い棒の先には何か箱が付いており、その中が黄金色に光った液体のようなものが入っている。

溶けた金属のような感じだ。何かぱちぱちしている。


「フィル、どこに置けばいい?」

「……そこの金網でできた台の上。ぴったりはまるはず」


 二人は釜から取り出したものを、台に置く。



「……ユーキお疲れ様。これが鍛冶の基本中の基本。これから型に流し込む」

「素材を溶かすのも大変だな。時間はあまりかからないが、暑いし熱い」


 二人は汗を拭きながら話をしている。

さっき買ってきた素材を釜で溶かしていたようだ。

そんな事だと思ったよ。お兄ぃはお兄ぃだし。


「これ、ルエルさんからの差し入れ、ここに置いておくね」

「ありがとう! ちょうど喉かわいていたんだ!

「……助かる。おやつも嬉しい」


 二人とも喜んでくれた。良かった。

でも、女の子と二人っきりになるのはおすすめしないよ?

勘違いされても知らないんだからねっ!


 お兄ぃはカップに入っている飲み物を一気に飲み干す。


「あつぅぅぅぅ! な、何だこれ! ホットじゃないか!」

「そうだよ。ルエルさんの淹れてくれた紅茶と、おやつのクッキー」

「うーん……。み、水が飲みたい……」

「……ユーキ。魔法で出せばいい」

「お、さすがフィル! 頭いい!」


 お兄ぃは手から水を出して飲んでいる。

便利だけど、ちょっと変。まぁ、お兄ぃだからいいか。


「じゃぁ、私戻るね。二人とも頑張ってね」

「ああ。俺ももうすぐ戻るよ」

「……ボクは一日ここ?」

「半日くらいかな?」

「……頑張る」


 私は二人を背に、店に戻る。

お兄ぃはお兄ぃができる事を。

私は私にできる事、それを頑張る。


 しばら経つと、裏庭の方からカーン、カーンを甲高い音が聞こえてきた。

フィルも頑張ってね!


「ルエルさん! イリッシュちゃん! ただいま!」


 私は元気に店に戻る。


「お帰りなさい。二人ともどうだった?」

「頑張ってたよ!」

「ユーキ兄は鍛冶もできるんですかね?」

 

 接客が終わり、試作品を作っているイリッシュちゃんが聞いてくる。

日本で鍛冶をしている人は少ない。少なくとも私の身の回りでは誰もいない。


「多分できない。やったこと無いと思うし」

「そうですか。でも、ユーキ兄は器用だから、直ぐにできちゃいそうですね」


 そう。お兄ぃは器用だ。私の知る限り一番器用な人。

何でも卒なくこなし、大体の事は一回で覚えてしまう。

誰から見てうらやましい能力だと思う。

記憶力もきっといいのだろう。うらやましい……。


「所でアイ。補充用の在庫は持て来たのかしら?」

「あ……。すぐに持ってきます!」


 私は大急ぎで倉庫に戻る。すっかり忘れてた。

ダメだな私……。もっとしっかりしないと!

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