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第107話 ~お願いとフィルの仕事~


「それで! ユーキ殿は何の素材が欲しいのかね?」


 ボムおじさんはカウンターでニコニコしながら立っている。

気のせいが昨日よりも少しだけ声が小さい気がする。

隣にはおばさんが立っており、こちらも同じようにニコニコしながら立っている。


「……父さん、母さん良い事でもあった? さっきからずっと笑ってる」


 フィルが気になったようで両親に質問している。

俺は財布から必要な素材の書かれたメモを取り出したいが、見つからない。

おかしい、昨夜確かに入れたと思ったのに……。


「フィルにもついに、いい人が現れたのかなって。ね、父さん」

「そうだ! まだまだ世間知らずの娘だが、鍛冶屋としての腕はいい! ユーキ殿、よろしく頼むぞ!」


 フィルの顔を覗き込むとほんのり頬が桜色になっている気がする。

ちらっと俺の方をみて、目線が重なると、すぐにそっぽを向いてしまった。


「あー、大変申し訳ないのですが、まだ結婚とか考えてないので……」


 と、言った瞬間目の前の二人の顔がみるみる変わっていく。

風神雷神。阿吽の象。般若の面……。こ、怖い……。


「ユーキ殿はルーと結婚するのかね?」

「ユーキさん。重婚は考えているのかしら?」


 な、なんでこんな事になっている? ついさっきまで普通だったのに……。


「……ユーキ、気にしない。この二人は早とちりしているだけ」


 フィルが俺の袖をつかみ、引っ張りながら言ってくれた。

大丈夫かな……。フィルの両親は結構行動派なので、ちょっと心配。


「……父さん、母さん。ユーキとは何もない。勝手に話を進めないでほしい。ボクが困る」


 フィルの一言で目の前の二人から般若の面が取れ、いつも通りの顔になる。

それだけフィルの事を愛してるんだろうなー、とか思ってみたり。

そういえば、俺の両親はどうなんだろうか? 俺の事も愛の事も、忘れていたりしないよな?


「まだ時間はある! いい報告を期待しているぞ! フィル!」

「いい? 女は度胸。責める時は一気に攻めるのよ! 既成事実を作りなさい!」


 朝から何を話しているのだろう。早く素材買って帰ろう、疲れた。


「すいません。このメモの素材有りますか?」


 メモ用紙をみたボムおじさんは少し困った顔で紙を眺めている。

あれ? 銅とか銀とか普通の素材のつもりだったんだけど……。


「ユーキ殿、すまないが全く読めんよ。これはどこの国の文字だ?」


 しまった! すっかり忘れてた。言葉は何とかなっているが、文字は全くかけないんだった、


「すいません。俺の国の文字でした。えっと、読み上げるのでメモしてもらっていいですか?」

「……ユーキ。次からボクが書き起こす。予め話してほしい」

「そうだな、次からそうしよう。えっと、いいですか? まずは銅、それから……」


 銅や銀、鉄や木材や飾り石など、普通にありそうな素材を言っていく。

ほとんどそろっており、予定通り購入する事を決める。


「今回は半額サービスにはならなかったな! だが、少しだけサービスしておいたぞ!」

「ありがとうございます。また、素材が必要になったら来ますね」

「あらあら、そんな事言わないで、いつでも遊びにいらっしゃい。今度はみんなで来てね」

「はい、ありがとうございます」

「……ユーキ、買ったら帰る。みんな待っている」

「そうだな、早く帰ろう。では、俺達帰りますね。サーニアによろしくお伝えください」

「ああ、伝えておく! フィル! 迷惑かけるなよ!」

「……問題ない。心配しないでほしい」


 二人を背にし、店を出ようとする。

素材も手に入ったし、店に戻って工房に行くか。


 カランコローン


 店の扉を開く。長かった。素材の購入がやっと終わった。

しかし、サーニアには驚いたな。この後何も問題が起きなければいいのだが……。


 フィルと二人で通りを歩く。お向かいさんなので、ほんの少し歩けば帰ってこれる。

フィルは俺の袖をつかんでおり、半歩後ろを着いてくる。

少し元気がないようだ。


「どうした? 元気がないな」

「……ユーキはボクの事、好きか?」


 足が止まる。うーん、好きか嫌いかの二択だと好きなんだけど、フィルの考えている好きとは多分違うんだよな……。


「まぁ、好きだぞ。なんでそんなこと聞くんだ?」

「……ユーキへのお願い決めた」

「そっか、願事はなんだ?」

「……後で話す。帰ろう」


 フィルが俺の袖を持ち、先に歩く。俺は引かれるようにフィルの後を歩く。

フィルはまだ小さい女の子。世間を知らないとボムおじさんは言っていた。

箱入り娘ってやつなんだろうか?

 

 これからいろいろ覚えて、成長して大人になっていくんだな。

俺もいつまでも子供ではない。早く一人前になりたいものだ。


 結婚……。俺はいつ、誰と結婚するんだ?

まだ先の話だな。まー、彼女もいないけどな! 爆ぜろリア中!


「……ユーキ、。顔が怖い。何を考えている?」


 しまった! 顔に出てしまった!


「何でもない。ちょっと熱力学を応用した魔道具が作れないか、考えていただけだ」

「……良くわからないが、ユーキの発想は面白い。参考になる」

「そうそう、買ってきた素材で作ってほしいものがあるんだ。後で話していいか?」

「……いいともー」


 俺達は店の扉を開け、店内に入る。


カランコローン


 な、なんだと! こんなバカな……。

俺は幻でも見ているのか? あわててフィルの方を見る。

フィルも動揺している。どうやら幻ではないようだ。


 お客さんがいる。それも三人も! こんな早朝から、来店している!


「ただ今戻りました!」

「……ただいま」


 俺はそのままカウンターにいるルエルに声をかける。


「お客様がいるな。何か探し物でもあるのか?」

「お帰りなさい。昨日来店したお客様がまた来てるの。それにしても、買い物に少し時間かかったのね」


 愛とフィルはそれぞれ接客中のようで、フリーなルエルに声をかけた。


「ちょっとな。素材は買ってきた。フィルと工房に行ってくる」

「ええ、わかったわ。何かあったら呼びに行くわね」

「戻って早々悪いな」

「気にしないで、仕事よ。し、ご、と」


 ルエルは微笑みながら話しかけてくる。

そっと、ルエルの右手が俺の頬をさする。


「後で色々と聞かせてね。何かフィルの所であったのでしょう?」

「流石だな。後でみんなに話をしないといけない。昼食の時にでも話す」

「わかったわ。フィルもお疲れ様」

「……疲れた。でも、これからもっと疲れる」

「フィル、工房に行くぞー」

「……あいあいさー」


 俺とフィルは裏庭の工房に行く。

おじさんがさくっと作った工房だ。中は見たことがないのでちょっと楽しみ。


「フィルが先に入ってくれ。俺はまだよくわからない」

「……わかった」


 フィルが工房に入っていく。

俺も後に続き入る。おぉ! 思ったより広い! そして色々とそろっている!


 では、フィルのお仕事でも発表しますかね!


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