表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
106/142

第105話 ~血と勝敗~



 反撃開始の為、俺はサーニアの股の下にいる。ここから攻撃を開始だ!


 と、思ったらサーニアが俺の腹の上に座ってきた。


「ユウは戦闘のセンスがあまりないのかしら? こうなるってわかってなかった?」


 俺はサーニアにマウントポジションを取られ、しかも両手はサーニアの膝で押さえられている。

あれ? 全く動けないのですが……。 幾ら腹筋を使ってもサーニアはびくともしない。


「これも作戦の内だ。それより、さっきから胸が見えているが恥ずかしくないのか?」


 さっきからサーニアの胸がちらちらバインバインしている。

気になるのはこっちだけで、サーニアは気にも指定無いような気がするが……。


「あら? そろそろ何とかしようかしらね」


 サーニアは片側に結んでいるスカート部の一部をナイフで切り取り、胸にあて、後ろで結んだ。

ちょっとした水着みたいだ。

しかし、さっきから後ろの方でユラユラしている尻尾が気になる!


「この試合に勝ったら、ここで働くのか?」


 サーニアの両手から武器が地面に置かれ、その両手が俺の首元にゆっくりと近づく。

初めに頬をなでられ、首元を指でなぞられる。


「そうよ、普通に働いて、生活するの。休みの日は雑貨を見たり、他の地区を見に行ったりしたいわね。この傷痛む?」


 サーニアは指で頬の血をふき取り、蜜を舐めるかのごとく、俺の血を真っ赤な舌で指ごと舐める。

少しトロンとした目になり、体を震わせる。少し息も荒くなって、ハァハァしている。


「なんだ? 様子が変だぞ?」


 その途端、サーニアは俺の頬を両手で押さえ、頬を舐め始めた。

うーごーけーなーいー! 逃げたいが全く動けない。顔をがっちり固定され、腕もサーニアの膝で押さえられている。

完全に決まったマウントポジションからは逃げられない!


 その間にも、蜜を舐めるかのように俺の頬に着いた血を舐めてくる。

おっふ。どさくさに紛れて首も軽くかまれた。血に飢えた野獣って感じがする。

少し離れたところでボムおじさんとフィルが何か話している。


「……父さん、ユーキは大丈夫?」

 

 少し不安な声でフィルが話している。俺はこの状況でフィルの方を見る事はできないが、声は少し聞こえた。


「まだ大丈夫。いざとなったらわしが止めに入る」


「……サーニアは魔族。勝ったら雇うの?」


「雇う。魔族の事を知りたいしな。それにユーキ殿の目を見てみよ」


「……ユーキの目」


「真っ黒で腐った魚のような目をしているだろ? まだあきらめていない証拠だ!」


「……父さん、多分その表現は違うと思う」



 俺は腐った魚の目なんかしてない!


 まだ俺の頬を舐めているサーニアに対して、俺は腰を上に。両足を上に上げる。

そのまま両足でサーニアの首を絞める体制に入る。


「グェッ! ユウ、う、動けたの?」


 首に俺の脚が巻き付き、サーニアの首を絞める。

手で首を絞めるより、腕で首を絞めるより、足で首を絞めた方が逝きやすくなる。

筋力が全く違うからな。確か腕の三倍だっけ足の筋力は。


サーニアは両手で俺の足を外そうともがき始めた。


「サーニアはバンパイアか? 俺の血を舐めてたな。そんなに俺の血が欲しいか?」


 サーニアはまだマウントポジションを取っている。

俺はその場からは動く事が出来ないが、このまま落としてやる!


 サーニアは俺の方を見ながら舌を出し、唇をなめまわす。


「ユウの血は不思議ね。この世界の血ではない気がするわ。味わった事なの無い何かがある。ユウの血、欲しいわね!」


 サーニアは俺の脚から手を離し、俺の首を絞めてくる。

うーん、この状態危険だ! このまま続行したら二人とも天に召されるのでは?

い、意識が遠くなる。俺もサーニアの首を絞めているのに、さっき普通に話していなかったか……?


……も、もうダメ。ち、力が入らない……。



―― ……って! 頑張って! しっかりして!


 遠くから誰かの声が聞こえる気がする。

俺は、ここで負けるわけにはいかない! 半額だ! 経費削減だ!

そして、サーニアに負ける訳にはいかない!


 両目をカッと開き、サーニアをにらむ。

サーニアも、意識朦朧(いしきもうろう)俺の首を絞めているのがわかった。


 ここが正念場! 普通のバトル漫画なら剣と魔法が飛び交いかっこいいシーンがクライマックスだが、俺はお互いに首を絞め合うという、ノーアクションなクライマックスを迎えている!



 ま、負けてたまるか!







――ここはどこだ?



 気がつたら俺は空を見上げ寝ている。あれ? まだ模擬戦の途中だった気が……。

少し目線を移動させると、うつらうつらしているフィルの顔が目に入る。

頭の下にはフィルの膝があり、膝枕状態だ。

近くで見ると良くわかるが、綺麗な顔立ちをしている。

ボムおじさんも顔立ちはきれいなんだよな……。


 ……模擬戦って終わったんだっけ?


 俺は頭を上げようとしたが、フィルにおでこを押さえられ、止められた。


「……ユーキ、。少し休む。急に立つと倒れるかもしれない」


 フィルは目を閉じたまま、俺に話しかけてきた。

なんだ、起きていたのか。


「なぁ、模擬戦ってどうなった? 途中から記憶がないんだが」


 サーニアとお互いの首を絞めあったところまでは覚えている。

二人ともそのまま落ちたのかな?



「……試合はサーニアの勝ち。ユーキが先に気を失った」


 そうか、負けたのか。話を聞くと、ボムおじさんが気を失った俺に人口呼吸をしようとしたが、フィルが変わったらしい。

そもそも気を失っただけで呼吸もしていたし、心臓も動いていたので人工呼吸する事はなかったみたいだ。

横で見ていたサーニアがそういっていたらしい。

ボムおじさんはそのままサーニアと今後について話があるから、先に戻っているそうだ。


「そうか、負けたのか……。やっぱ、俺はそんなに強くないんだな」


 フィルが俺の頭をなでながら微笑む。


「……ユーキは十分強い。トランスを解除したサーニアと向き合えるユーキは尊敬する」


 まぁ、大型のアックスと等身大のバスターソードを片手でサクサク扱えるやつとは対峙したくないな……。


「サーニアは魔族なのか?」


「……サーニアは魔族。間違いない」


「この街で普通に暮らせるのか?」


「……それはわからない。この街の人間次第」


「そうか……」


 俺は空を見上げ、遠くを見る。

日本だって差別はある。この世界は種族が違うのだ。差別位あるだろう。

でも、本人は普通の生活を望み、トランスしてまで、力に制御をかけてまで……。


 ふと、ゴブリン達の事を思い出した。

見直さないといけないのは、俺達の考え方。

お互いの想い方、思いやりの心とか、感謝の心とか……、難しいね。


「……そろそろ戻る」


「そうだな」


 フィルの膝から頭をおこし、立ち上がる。ややくらくらするが大丈夫だろう。

背伸びをしていると、フィルが抱き着いてくる。


「……ユーキ、心配した。無事で良かった」


 フィルの頭をなでながら答える。


「心配かけて悪かったな。もう大丈夫だ。フィルの膝で寝たら治った」


 フィルは俺の目を見ながら微笑んでいる。


 どれ、負けてしまったが収穫は少しあったな。

俺とフィルは来た道を戻り、部屋に入る。




――ギイィィィ




 そこで目にしたのは人間の姿のサーニア。


 しかし、サーニアは紐パン一枚で立っている。


 隣にはおばさんがいる。

 おじさんはいない。

 俺とサーニアの目が合った。


 ……。


 へ? 入る場所間違った?



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
当作品の評価&感想は最新話の最下部より可能です!
是非よろしくお願いいたします。


↓小説家になろう 勝手 にランキング参加中!是非清き一票を↓
清き一票をクリックで投票する
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ