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第100話 ~充実した日々とルエルの笑顔~


 心残り。この世界に来てからまだ三日目。

まだ、わからないことだらけだが、なぜか充実した日々している。


 きっと、ルエルやイリッシュ、フィルも一緒にいる事が大きいが、愛も一緒にいる事が一番の要因だろう。家族と一緒に過ごせることは、いいことだ。


 ルエルやイリッシュも家族と一緒に暮らしたいと思っているのだろうか?

普通に考えたら、異世界の訪問者より家族を選ぶだろう。聞くだけ野暮だ。


 俺達はこの世界の人間ではない。迷うことも多いが、帰る事を忘れてはいけない。

俺達が元の世界に帰ったら、きっとルエルは家族と一緒に暮らすことができるはずだ。


 そんな事を考えながら、用意してある制服を着る。

今から仕事だ。頭を切り替えなければ……。


 廊下に出て、店の方に行くと愛とイリッシュが品出しをしている。

レジを教わったフィルも得意げにレジを操作する。

ルエルは……、カウンターでお茶の準備かな? お湯を沸かしているようだ。



「今戻ったぞー」


 俺はみんなに聞こえるように声を出す。


「あら、ずいぶん早かったわね。もう少し時間がかかると思ったのに。まだお茶入ってないわよ」


 カウンターの中からルエルの声が聞こえる。


「もともと俺は早風呂なんでな。開店準備もあるし、早めに上がった」


 品出しをしている二人が、箱を持ってこっちに向かってくる。


「お兄ぃ、品出しと整理終わったけど、あと何かする事あるの?」


 二人の持っている箱は空っぽになってる。


「じゃぁ、空箱を倉庫にいれたら、二人に頼みたいことがある。フィルもちょっといいか?」


 愛とイリッシュは空箱を倉庫に持って行く。


「……ユーキ、ボクに何か?」


「二人が戻ったら話すから、ちょっと待っててくれ。座って待っていようか」


 フィルと一緒にいつものテーブルへ行き、座って待つ事に。


「開店するまでもう少し時間があるから、お茶でも飲んで一息つきましょ」


 ルエルの持ってきた紅茶はいい香りがする。

元の世界に帰ってしまったら、この紅茶は二度と飲めないんだな……。


「ルエル、ありがとう。ルエルの淹れてくれるお茶はいつでもうまいな」


「……ルーの淹れるお茶は昔から絶品。ユーキはありがたく飲む」


「ふふっ、二人ともありがとう」


 ルエルの笑顔も、元の世界に戻ったら二度と見る事は出来ない。

そんな事を考えていたら、倉庫から二人が戻ってきた。


「いい匂い。ルエルさん、紅茶入れたの?」


「そうよ。開店まで少し時間があるから、一息どうかしら?」


「ルエ姉の淹れる紅茶はおいしいですね」


 二人もテーブルに着き、ルエルの淹れた紅茶をみんなで飲む。

はふぅー。上手いんだな―これが!


「さて、開店前のミーティングだ。みんな準備はいいか!」


 四人とも頭の上にハテナが浮かんでいる。

あれ? 誰も返事をしないと思ったけど、俺だけ変なテンションなのか?


「お兄ぃ、話すのはいいけどもう少し落ち着いて話してよ」


「……ユーキ、騒がしい」


「お、おう。じゃぁ、普通に話すからな」


「ユーキ兄の店に対する想いもわかりますが、テンションは普通で」


「そうね、折角淹れた紅茶を楽しみながら、お話できるといいわね」


 こ、この方々……。

今日一日の作戦を、そんな優雅にまたーりしながら話せるか!

と、いっても大した内容じゃないし、今日はいいか……。


「じゃぁ、話すぞー。愛とイリッシュは俺が作った図面を参考にバックを作ってもらいたい」


 テーブルにパサァッと図面を広げる。

簡単なワンショルダーバックの図面だ。チャックが無いので、そこは紐で代用する。


「これは冒険者用ではなく、一般市民用で気軽に使えるものだ。詳しくは愛に聞きながらイリッシュが採寸して作ってほしい」


「お兄ぃ、この世界でワンショルダー売れるの?」


「分からん! でも、他では売っていないアイテムを何点か準備したい」


「分かりました。とりあえず、アイ姉に相談しながら試作品作ってみます」


「すまないが、よろしく頼む。フィルは俺と一緒に素材を仕入れに行く。フィルの父さんの所だ」


「……ボクが行く必要あるの?」


「一晩娘がいなかったんだ。顔くらい見せに行こうぜ!」


「……分かった。素材を買ったらどうするの?」


「作ってほしいものがあるから、素材を買ったあとで一緒に工房へ行こう」


「……二人で工房に? 変なことしない?」


「するか! 不安だったらルエルも一緒でいいから!」


「……ユーキ。冗談。すぐにむきになるところが可愛い」


 ぐぬぬぬ。なんかバカにされた気分だ!


「私は何かすることあるかしら?」


 ルエルは紅茶を飲みながら俺に訪ねてくる。


「ルエルは紅茶の試飲をできるようにしてほしい。来店したお客様に、小さなカップで渡してみたい」


 すると、ルエルの目が少し細くなり、冷たい目線になる。


「ただで飲ませるつもり?」


「そうだ。俺の世界では試飲は有効な販促だ。ほんの少し飲ませて、おいしかったら注文してもらう」


 紙コップが無いから、そのあたりをどうしようか……。


「お兄ぃ、ようは試飲できるようにすればいいんだよね?」


「ああ、そうだが」


「じゃぁ、お兄がいない間は私がルエルさんをサポートするよ。私、試食大好きだし!」


 愛が張り切っている。ここは愛に任せても大丈夫だな。


「分かった、愛に任せる。ひと段落したら、ルエルは俺と一緒に商人ギルドに仕入れに行こう」


「わかったわ。早めに試飲できるようにするわね。アイ、よろしくね」


「よし! じゃぁ、開店前の声出しをしたら、フェアリーグリーンオープンだ!」



 俺は立ち上がり、姿勢を正す。みんなも立ち上がり整列する。



「では、声出しを行う! 俺が初めに声を出すので、はい! と言ったら続くように!」



「いらっしゃいませ! はい!」

軽くお辞儀をする。



「「「いらっしゃいませ!」」」

みんなも軽くお辞儀をする。



「かしこまりました! はい!」

「「「かしこまりました!」」」


「お待ちくださいませ! はい!」

「「「お待ちくださいませ!」」」


「お待たせいたしました! はい!」

「「「お待たせいたしました!」」」



「ありがとうごじゃいました! はい!」

あ、またかんだ。

「「「ありがとうごじゃいました!」」」


 みんな続けて言っちゃった。ごめん。


「すまん、かんだ」


「ユーキ、二回目よ。しっかりしなさい」


「ごめん。よし、じゃぁ俺はフィルと素材の仕入れに行ってくる。行くぞフィル!」


「……いてきますー」


 少し、元気が無いようなフィルだが、これがデフォルトなのか?


 店の扉を開け、一日が始まる……。

さぁ、今日も頑張って儲けるぞ!


ついに100話となりました!


ここまで続けられたのも、読者の皆様のおかげでございます。

100話までお付き合いいただき、本当にありがとうございます!


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