伸ばした手、掴んだもの《短編》
手を太陽にすかした時に、なんとなく浮かんだものです。
手を伸ばしたら、
何もなくて。
僕のその手は虚を掴んだ。
僕は少し悲しくなった。
きっと僕の今まで、
なんてこんなもの。
何かを掴んだようで
何も掴んでいない。
そう思ったから。
そう感じたから。
それを君に言ったら笑われた。
「逆だよ。」って。
何も掴んでないようで
何かを掴んでいる。
そして君は夕暮れの赤い空にゆっくり手を伸ばす。
そして掴んで
「ほら、太陽つかまえた。」
思わず僕は笑った。
そしたら君も笑った。
そしてまた
僕等手を伸ばした。
「「太陽つかまえたっ!」」
向かい合いながら笑う僕等。
幸せだった。
月日がたち社会人になった今、君と中々会えないけど
今でも空を見ると思い出す、
懐かしいあの日の事。
僕は空を見上げ微笑み呟く。
「太陽つかまえた。」