プロローグ(3)
「・・・ここ、どこだよ。」
そう言わずにはいられなかった。
少し前まで、僕は、兄さん達と帰り道を歩いていた。そこまでは覚えている。そして、地面から眩い光が・・・
『くそっ!何でまたこうなるんだっ!』
そう兄さんは言っていた。
つまり、兄さんは一度ここに来たことがある?
・・・ガチャリ
「ん?」
少し体を動かすと、金属音がした。自分の体の方を見てみると・・・
「なんだ?剣?」
僕の腰には2本の剣が刺さっていた。一つは青色の片手剣。もう一つは真っ黒な日本刀だ。
『そうだ。これはお前の剣・・・剣型魔装具だ。』
「っ!?誰!?」
突然、頭の中に響き渡る声。あたりを見渡しても、誰もいない。
『ん?ああ、透明化魔法を解いてなかったか。ちょっと待ってろ。』
その数秒後、突如として僕の目の前に現れたもの。それは・・・
「赤い・・・ドラゴン?」
見た感じ、体長約50cm程の赤いドラゴンがいた。
『よう。やっと俺のことが見えたか?』
「う、うん。それで・・・君は誰?」
『ほう。怖がらずに俺の名前を聞くか。大した精神力だな。大抵の人間は、俺の姿を見るだけで、失禁したり、意識を失ったりするものなのだが・・・』
ちょっと待って。それじゃ何か?僕が普通の人だったら、オシッコ漏らすような事になってたってこと?
『俺の名前はアポロ。太陽神アポロン様の力を与えられし古龍。これから宜しく頼むぞ。勇者ギンガの弟、勇者スバルよ。』
「へ?」
僕が勇者?勇者ってあれ?魔王とか倒すヤツ?え?僕が?
『とはいえ、こんな年端もいかぬ少年が俺の契約者とは・・・しかも三股のハーレム野郎とは・・・』
え?ハーレム野郎?ハーレムって何?意味はわからないけど、いい意味じゃないのは理解出来た。
「ちょ、ちょっと待って!?僕が勇者?何で?っていうか、何で勇者なのに森スタートなの!?おかしくない!?」
『あ~・・・それはだな・・・』
アポロは気まずそうに言葉を続けた。
『お前がギンガの召喚に巻き添えを食らって、この世界に来た。そこまでは、まだいいのだが・・・・・・俺と結ばれたことにより、強大な力を魔法陣が感知。このままじゃ、魔法陣が壊れると判断して、途中でお前を捨てた。・・・という訳だ。』
ふむふむ・・・サッパリわからん!
「簡単に言うと?」
『俺のせいで、お前の勇者生活は森スタートという訳だ。』
「うわぁ・・・」
『何か済まないな。』
っていうか契約って言ってたよね?そんなものした覚えないんだけどな・・・
『ああ、契約なら、神がランダムで行っているぞ?』
僕の考えてることを読んだのか、アポロはそう付け加えた。
っていうか、神様適当だなぁ~。なんだよランダムって。
「・・・で?兄さんが勇者っていうのはどういう意味?」
『ふむ。知らされていないのか?勇者ギンガは、この世界を救った、勇者のひとりだ。まあ、救えきれてなかったから、こうしてまた召喚された訳だが。』
へぇ~兄さんが勇者ねぇ・・・
「それって、三年前から一年前の2年間の事?」
『そうだ。』
じゃあ、三年前、兄さんがいなくなったのって、この世界に召喚されたからだったのか。そりゃあ、見つかるわけがないよね。だって異世界なんだもん。
「で?僕はこれからどうしたらいいの?」
『お前には、二つの選択肢がある。一つ目は、勇者ギンガと合流、そして、一緒に勇者として、新しい魔王と戦うことだ。』
ふむふむ・・・まあ、悪くは無い。僕も勇者になりたいっていう願望はあったしね。
『そして、二つ目だ。勇者ギンガと合流はせず、このまま異世界を旅する事だ。』
うん。これはないだろうな・・・僕、少しどんくさい所があるから、ひょんなことですぐ死んじゃいそうだし・・・
「うーん。僕としては、兄さんと合流する方がーー」
『ちなみに、勇者ギンガは、この世界を満喫してから、帰っていったぞ?魔王を倒してから、約半年の間だが。』
・・・え?何それ。兄さん達って、1年と半分でもう魔王討伐してたの?じゃあ、何?あとの半年は遊んでた?僕が物凄く寂しくて、毎日泣いてた時に?
「・・・・・・・・・」
『くくく。さあ、お前はどうするんだ?』
ーーーーそんなの決まっている。
「兄さんはもう知らないっ!僕は、この世界で、いっぱい遊んでから帰るよっ!」
『よし来た。これから宜しくな。スバル!』
そう言って、赤いドラゴン・・・アポロは、嬉しそうに、羽をパタパタさせながら、僕の頭の上に乗る。
「・・・重くないね。」
『ん?重いのがご希望かな?それなら、本来の重さに・・・』
「すみませんでしたっ!このままでお願いします!」
『くくく・・・ああ、言い忘れていたな。』
「?」
『ようこそ[スピリクル]へ!』
ここから、僕の・・・勇者スバル・ホシモリの旅が始まったのだった。
今回でプロローグは終了です。
明日から1章を投稿しようと思います。
これからも皆さん。よろしくお願いします!