第3話
遅くなりました。
スマホが壊れまして、買い換えたらこんなに遅くなってしまいました。
面目無いでございまする。
「お前たちの魔力量は、」
「「魔力量は…!?」」
静かに流れる時の中、アルンは口を開いた。
「まず飛鳥だが、お前の魔力量は42万だ。」
「ん?それってすごいの?」
「凄いかどうかは後で話す。そして、優の魔力量だが、0だ。」
「は?0?どういうことだ?」
「それはこっちが聞きたいな。現に、おまえは魔法を使えているじゃないか。魔法を使う時どうしているのだ?」
少し悩む優。
「えーっと。もともとあるというか、魔力を作っているに近いかな?それで魔法を使ってる。」
要するに、優の魔力量は無限ということだ。
いくら使っても、また作ればいい。どこかの貴族みたいな発想だ。
「ま、お前らならそれもありだな。」
「おい、それどういう意味だ?」
「そのままの意味だよ」
軽くあしらうアルン。そんなアルンに、飛鳥がしつもんをした。
「それで?私の魔力量って凄いの?」
「ああ。そうだな。人は生まれつき保有する魔力が決まっている。0~5000ほどだ。しかし、魔力は増やせるのだ。」
「どうやって?」
「ただひたすら魔法を使い続ける。それか、魔力強化剤を飲む。そのどちらかしかない。」
「へぇー。なら簡単に増やせるじゃない。」
「馬鹿を言え。魔法を使い続けても、一年で1000?上がればいい方だし、魔力強化剤は一つ金貨5枚で、200しかあがらんのだぞ?」
こうりつてきにかんがえたら魔力強化剤だが、何より高い。この世界の通貨は、石貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、龍皇貨となっている。下から、10円、100円、1000円、10000円、100000円、1000000円となっている。10円以下の物は、物々交換で補っている。つまり、魔力強化剤は一つ5万円するのだ。この世界の一般家庭一ヶ月分のお金である。
「あー。そう考えると高いね」
「だろう?それに、この世界で一番高い魔力を持ったやつでも64000なんだぞ?じぶんがどれだけの化け物かかんがえてみた方がいいな」
7倍弱とはこれいかに。例えてみよう。かの有名な白くて尻尾が生えた宇宙人が戦闘力53万。それの7倍も強くなっているのだ。あの頃の主人公だったら、ワンパンで殺されてしまっただろう。
「そんなに要らなかったな。魔力。」
「なに言ってんだ、あるだけマシじゃないか!俺なんて0だぞ?」
優の魔力量は確かに0なのだが。
「いやいや、優は私より化け物じゃん。何?魔力をつくるって。ってことは無限ってことなんでしょ?」
「まぁ。でも俺魔力持ってないのは本当のことだしな!」
この会話を見守っていたアルンは少し微笑んだ。
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2年後、2人は町に出ていた。
この国は、世界でもトップクラスの大きさを誇る国だ。そのため人の数が尋常ではなかった。
7歳の体だと、この人ごみに逆らえるほどの力を持っていない。ふつうなら押し倒されたり、押し戻されたりしてしまう。しかし、それも普通ならである。世界でトップクラスの魔術師に育てられた2人なら、これくらいなら楽々と歩けてしまう。簡単な話で、身体強化を身体中にかければいいのだ。元から強い体だったが、そこに加えさらに強化すると、ダイヤより硬い体になるのだ。
今回は、目立たないようにするため使っていないのだが。
「大丈夫か?ついてこれてるか?」
「うん。大丈夫よ」
優が声をかけると、飛鳥から返事が来た。
そもそも、何故この町にやってきたのか。それはアルンの思いつきだった。
「そうだ、あと3年で成人なんだから、町にでも出てきて、社会見学して来なさい」
一理あったので、優と飛鳥からの批判はなかった。
寧ろ喜んでいたぐらいだ。誰だって初めての場所に行くときは心が躍るはず。2人も例外ではなかったのだ。
しばらく歩いていると、アクセサリーを売ってる店の前に来た。
すると、飛鳥が優の服を引っ張る。
「ここ見てもいい?」
「ああ、いいぞ」
断る理由がないので、店に入ることにした。
中は、コンビニぐらいの広さがあり、女性用のアクセサリーから、魔具と呼ばれるものまであった。
アクセサリーには興味がなかったが、退屈はしなかった。
「見て!これ可愛い!!」
飛鳥が指差したのが、うさぎの髪留めだった。
「欲しいか?」
「いや。いいよ。」
そう言いながら両手をグーパーさせている。そういうときの飛鳥は、嘘をついている。伊達に幼馴染みをやっていない。
「買おうな。それ」
「いいよ!こんなに高いもの。」
値段は銀貨6枚。何故髪留めがこんなに高いのかというと、ちょっとした魔法が掛かっているからだ。説明には、状態異常耐性と書かれている。麻痺などにかからないということだろう。それなら銀貨6枚も納得だ。
「いいんだよ。あっ、店員さん、これください。」
「あ、優ってば」
「はい!こちらですね。こちらに包装はつけますか?」
「お願いします」
「わかりました。少々おまちください!」
飛鳥はあんなことを言っていたが、やはり顔がにやけている。
アルンから貰ったのは金貨5枚。かなり大金だが、気を使ってくれたのだろう。それに、本人は金貨5枚程度じゃ、お財布に傷はつかないといっていた。どんだけ金持ちなんだ?アルンは。
暫くすると先ほどの店員から声がかかった。
「大変お待たせいたしました。銀貨6枚になります」
「あれ?包装代は?」
「うちは包装は無料でやってるのですよ!」
「へぇ。気前のいい店だな」
「ありがとうございます!」
そう言いながら金貨を出す優。
すると店員さんがたじろいだ。
「き、金貨ですか。」
「あぁ。小銭がなくてごめんな。」
「いえいえ!それより、あなた本当に子供ですか?」
なんと失礼なと思ったが、現在の身体は7歳なのだ。よくよく考えれば7歳の男の子が、一万円を持って買い物しているのだ。店の人に驚かれても文句は言えないだろう。
「これは親からもらったのさ。年に一度のお小遣いだよ。」
「なるほど!あっ、銀貨4枚のお返しです。」
礼を言って店をあとにする2人。
やはりこの身体だと不便だ。
「ありがとね。優」
「いいんだよ。このお金は俺のじゃないし、礼を言うならアルンにいいな」
「それでもだよ。」
よくわからない優。しかし、その思考も直ぐに遮断されることとなった。
後ろから複数の殺気を感じたのだ。優は逃げるのではなく、誘い込むように裏路地に入った。どうやら飛鳥もわかっていたようだ。顔が戦闘態勢に入ったときのようになっている。
歩いて行くとそこは行き止まりだった。もちろんわかって来たため、動揺はない。
そこで、優が結界を発動する。魔力や、殺気を外に漏らさないようにする結界だ。張り終わると同時に、男6人組が現れた。全員がにやけている。つまり、気持ち悪い顔をしている。そのうちの一人が話しかけてきた。
「よう、にいちゃん」
「気持ち悪い顔して話しかけてくんな、吐きそうだ」
「貴方たち、彼女できたことないでしょう?可哀想ね」
「なっ、なんだとぉ!!!」
簡単な挑発に乗ってくれるとは、楽で助かる。わかりやすく切れてくれた男に、3割程度の殺気を当ててみる。
「その程度の殺気じゃ俺様はびびらねぇーんだよ!!!舐めんな!」
どうやら殺気を感じることができる程の実力者らしい。
なので、遠慮なく8割を当てることにした。
「ひぃ!!お、おまえ、なっ、何者なんだ!!!」
情けない声を出した男の前に、高速で移動する。
「俺たちのショッピングを邪魔しやがって。ん?お前手配写真で見たことある顔だな。確か、生死を問わないって書いてあった。金貨10枚の賞金首だろ?」
だんだん殺気を強める。
恐怖のあまり何も言えなくなり、下からは汚物の匂いが漂ってきた。
「きたねぇーよ。とりあえず死ね」
そういった優は魔法により普通の刀と同等の性能を持った手刀を作り、男の目を切った。
悲鳴をあげる男。その男の首を目掛けて普通の手刀で首を叩き、意識を刈った。周りの男どもは逃げ出していた。そいつらは飛鳥の追撃魔法により、全て気絶していたのだった。
男たちを突き出し、金貨10枚を手に入れた優たちは、アルンの元へ帰るのだった。
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「つくづくお前たちは規格外だな。」
帰ってきた優たちに、一番最初にかける言葉がそれとは。
「おつりどころかプラスにして持ってきたぞ」
「そこ自体がおかしいんだよ。何で7歳の子供達が、B級指定の盗賊を壊滅させてるんだよ!」
そう、あいつらはB級指定の盗賊だった。
盗賊には、D〜S級までのランクが存在している。上に上がれば上がるほど犯罪を犯していて、それだけ危険ということなのだ。その中でも危険なB級盗賊団を、子供が解決したとなると、かなり目立つ結果になってしまうのは火を見るよりも明らかだった。
「ま、やってしまったことを悔やんでも、後の祭りだからな。」
アルンの言葉に頷いて、次からは気をつけようと心に誓ったのであった。