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02

 ◇◇

 

 長ズボンがきつくなってきたなあ……

 ヨシコはととの学校用ジャージを持ち上げた。

 入学してからはじめてのマラソン大会では、丈が長すぎるので裾をあげてください、と学校から連絡があり、その時は10cm近くも裾をあげたのだが、それから2年。

 すでに伸ばしきった丈もいっぱいいっぱい。

 子どもの成長は早い。


 ◇◇

 

 それでもまだ、一人でどこかに突っ走ってしまうのは相変わらず。

 秋の公民館ふれあい祭りの時にも、ヨシコは散々走りまくり、ととを追いかけ回していた。

 居住地校の小6のお姉さまがたが、「あ、ととちゃんが!!」と、逃亡を見かけるたびに母より先に追いかけて連れ戻してくれ、ヨシコはその度に深く礼を言った。

 やはり、3年間は地元幼稚園で地域の子どもらと一緒に過ごせたことが大きかったのでは、と今更のように幼稚園の先生方にも感謝かんしゃであった。

 ありがたきは地区の人たちとのご縁、などとしみじみ戻ってきたのも束の間、家でのとと、近頃流行りの「トイレに何でも流し隊」に変身し、母の雷は再び炸裂。

 ガミガミ叱っても、まるで効果なし。

 よく利用する学童預かりでも一度、アンパンマンボールをトイレに詰めてしまっていた。

 この時は、ヨシコが知らされたのが後からで、慌てふためいて飛んできた時にはすでに業者さんに詰まりをとって頂いていた、とのこと、しかも被害請求は無し、ということでひたすら平身低頭のヨシコではあった。

 この時の「いつかとんでもないことがあるやも」の予感は、とんでもない時に現実となるのであった。

 それはもう少し後からじっくりと。


 ◇◇


 ボランティアさんと障がい児とのふれ合いの会があり、ヨシコは実行委員の一人としてととも連れて参加した。


 講習なども終了してから、片付けして図書室に待機していた子どもを引き取って帰ろうとしていたときの話。


 中学生のダイ君のお母さんが、半分ふざけて小学2年のコウ君を

「あんた、かわいい~ね~」

 と軽々抱き上げて、ぎゅっと抱きしめた。

 幼いコウ君はいやがるでもなく、ニコニコとダイ君のお母さんに抱かれている。

 やがてコウ君のお母さんとダイ君本人がやって来た。

 ダイ君は重い自閉症。自分の母が他所の子を抱っこしているのをちらっと目に入れたが、特に気にする様子もなく、近くをウロウロしている。

「ありがとうね~」とコウ君のお母さんは、抱かれたわが子を受け取ろうとした、が、よほど居心地がよかったのか、コウ君はダイ母から離れようとしない。彼女のウエストに足をからませて、どうしても取れてくれなくなった。ダイ母は「やだ~~」といいながらもうれしそうに笑っている。

 それを見ていたダイ君、急に身を翻して母のそばに。

 母を助けようと小さい子の脇を抱え、懸命に前から引っぱって取ろうとする。

 いつもは感情をあまり出さない、コミュニケーション能力も不完全な彼が必死で母を助けようとしている姿に周りははっとした。

 抵抗するコウ君。大好きなおばちゃんの髪を掴んでまで必死にしがみつく。

 それでも大笑いと大騒ぎのうちに、ようやく離れてくれた。

 そこまで済んでから、今まで黙って母の救助活動(?)をしていたダイ君急に、がしっ、と自分の母にしがみつき、ぎゅーっと抱きしめたまま動かなくなった。

「え? 何、アンタ~」

 ダイ君は既に母より背が高い、そんな大きな息子にしがみつかれてダイ母は困ったりおかしがったり。

「今までこんなことしたことなかったのにさ~どうしちゃったの~」

 言葉で言えなくても、気持ちがうまく伝えられなくても、感じていることがいっぱいあるのだなあ、とヨシコたちもちょいと、しんみりする一場面でした。


 その間に、ととは逃げちゃってたけどね。また。



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