とと八歳・何かとメンテな夏 01
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夏休み前に色々とメンテナンス、てなことで、とと、生まれて初めて近所の歯医者へ。
虫歯ができた&8歳過ぎても乳歯が一本も抜けないという状況。
とりあえずどこまで見ていただけるか分からないままお試し感覚でヨシコはととを連れてやって来た。
待合室で絵本でも見せようと思ったが、まずはピンク電話に夢中。ダイヤルをジーコロコロと回して見守っている。
しかしそのうち帰りたくなってきたようで、土間の前に座り込みを始めた。
待合室に動物の布製ブロックパズルがあったので、それで遊ばせながら、ようやく名前を呼ばれて中に。
予め電話予約で
「ダウン症で8歳ですが、簡単な指示は聞き分けができます」
とお伝えしておいて、それでも快く引き受けていただいてはいたがやはりまるきり初めての歯科専門医なので、どうなんでしょ? とヨシコはハラハラしながらととを治療用椅子に座らせ、自分は脇につく。
歯科衛生士のお姉さんも歯医者さんも優しく分かりやすい口調で、何度も辛抱強く指示を出してくれたり、道具の説明をしながらためしにやってみてくれたり、ととにとっても分かりやすくしかも、痛い思いをせずに済んだので、拍子抜けするほどあっさり診療が済んだ。
内容は、歯の状態のチェック(軽い虫歯3箇所、歯茎の軽い腫れ)、乳歯がぐらついてきているかのチェック、フッ素塗布。
合間合間にお医者さんがいなくなると、ととはじっと椅子の上にしゃがんで、口すすぎ用の洗面台にもう夢中! コップを取り上げ、口をすすぎ、水をぷっと吐き出してまたコップをそっと所定の位置に置くと、上の管から水が出てコップを満たし、少し遅れて流し脇の管から水が流れ渦をまいて排水口へ。
ヨシコからやめろと言われても、もうお水ラヴ。止まりまへん。水の流れる過程を心ゆくまで楽しんでいる。
歯医者から水道代を余分に請求されないか、ヨシコはちょっとヒヤヒヤし始めた。
風を送る機械もまず手に当ててくれたり(ととの拒否に、『じゃあ今日これはいいにしようか』とあっさり引き下がってくれた)、椅子を動かす際も声をちゃんとかけてくれたり、ライトもまぶしくて嫌がらないか気を使ってくださり、とにかく歯科衛生士さんが臨機応変に対応してくれる。
こうして無事に歯科はクリア。あとは眼科と整形外科へGO!
◇◇
眼科にてまず裸眼と矯正での視力検査。4つの影絵をみて名前を言わせるもの。
「いにゅ(犬)」「(さ)かな(魚)」「ちょちょ(蝶)」「かーかー(これだけモノマネつき)(鴉)」の4つのシルエットが描かれたボードをみて検査を行なう。
待合室にいた時に、まず検査のお姉さんが「ととくん!」とニコニコやってきた。
中にすぐ呼ばれるかと思ったら、待合の椅子のところでまず、絵をみて予習。
ここで、子どもが物を識別できているかと、その名前をどのように呼ぶかを確認しているらしい。ここでの試練をクリアしてから少しして、中に呼ばれて検査。
丸い回転椅子に座らされ、少し離れた所から次々にカードを見せられる。
見えにくくなると、椅子ごと前に出ようとするとと。なので後ろで椅子を押さえる人もついている。
矯正視力をはかるために、検査用の眼鏡をかける。
はじめはいやがるが、「わー、かっこいい」とおだてられるうちにどうにかかけたまま検査できる。
ととは、見えなくなると無言になってしまうのでヨシコは小声で指示。
「『み、え、な、い』って言っていいよ」
テストか何かと思っているのか、サービス精神なのか、とにかく何でもいいから答えねば、と思うらしく、分からない時でも「い~ちち!」などと叫んでみたり、だんだんふざけてしまう。
判らないことをちゃんと「わからない」と伝えねばならない、ということがまだ解っていない、ヨシコはため息つきながら「すみません、わかんないようです」と脇で代わりに答える。
結果は、特に異常なしとのことでほっと一安心。
眼科も無事クリア。あと整形外科だあ。
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とと、最後は整形外科にて頚椎の検査。
首のレントゲンを4枚とるところを、ちょっと動いてしまったり何だリで 結局、7回も撮影。
被爆防止エプロンをつけてヨシコもいつも付き添うのだが、ととの頭を押さえている手が時々、一緒に写ってしまうので結局被爆しているような気が。
技師さんも最初は離れているが、らちがあかないので結局最後の方ではリモコン持ってととの頭を支えながら撮影。
仕事とは言え、たいへんです、とヨシコは頭を下げる。
何とか撮影も終え、整形外科に戻って診察。
結果としては、頚椎はやや緩めと言えば緩め だが、あまり神経質になる必要はないでしょう、と。
とりあえず、首だけの倒立とかは止めといたほうが無難かと。
朝早くから病院に入っていたのだが、午後1時過ぎにようやく終了。
すっかりお腹ぺこぺこのふたり、食堂で母は冷やしうどん、ととは冷やしラーメンを注文する。
最初にヨシコが注文したうどんがプラの子ども用お椀付きでやって来た。
一緒に食べていてください、ということなのかと思い、仕方なくだがヨシコは少しずつお椀に入れてととに渡す。
だが、とともかなりお腹が空いていたのか、お椀に入れてやる度にあっというまに平らげる。まるでワンコソバでんがな。
4回もお代わりして、うどん終了。私、ほとんど食べてないんですが……とヨシコは涙目。
少ししてようやく冷やしラーメンが。ヨシコが、手元に引き寄せてさあ食べようと思った時、ととの猛烈に抗議に遭う。
「めっ!!と、の!!」
自分のであると主張。そうですか、そうきましたか!
仕方なくヨシコ、ととに向かってプラ椀を差し出す。今度はととがちょっとだけよそっては、はい、と母に手渡してくる。
おかわりは二回まで可でした。




