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学年の先生より、近頃の様子をうかがう。
以前より、まわりの子どもと関わろうとする様子がみえてきた、と。クラスの子とふざけあったり、遊ぼうとしたり。
学習面では、やはり文字に対する学習意欲が高まってきたということで、学校で使っているあいうえお表と同じものを早速いただいてきた。
ととにみせたら「あ! がっこう! あった!!」と大喜び。しかししばらくしてからヨシコが見た時にはすでに廊下に捨ててあった。
それでも文字というものは色々気になるらしく、食パンの袋を持ち上げて、端から一生懸命、読むふりをしていたり。
「て、う、すてと~、あちてぱと~、もと、」
小声で、所々を区切って真剣に読んでいる。
しかし相変わらず9割はデタラメ。それでも1割は合ってるので、そのうち……かな?
ことばが少しずつ発達するに従い、他人とのコミュニケーションもことばに頼ることが徐々に増えてきた。
例えば。ヨシコがおやすみのキッスをおでこにしてやった時など、人の両頬を両手でぐっとはさみ、顔をぐいと近づけマジな顔して
「まま~! ちゅっちゅ、ちて~! くち!!」
と訴えて嫌がられたり。
ちなみにしゃべり方は相変わらず一本調子で語尾がだんだん上がっていく、つまりフランス風というか東北弁ぽいというか。
そして口と口で「ちゅ」とした後には必ず自分の口を袖でぬぐう。けっこうセクハラだなオマエ、とヨシコはむっとする。
他にも、テレビのドラマとかで登場人物が
「いって~な~」
と頭をさすっている場面ではすかさず
「(ご)めん」
と謝っちゃうし。
色々おしゃべりできるようになると、楽しいだろうなあ、とヨシコもワクワク。
しかしあまりしゃべれるようになると、今度は何を言い出すか、ハラハラするようになるかもしれない。
小三になったとらも、先日、人ごみの中でたまたま小太りの方とすれ違った時、急に思い出したように
「ねーねーおかあさん、『めたぼりっくしょうこうぐん』てどういう意味なの?」
と真顔で、しかも大声で聞いてきたし。
◇◇
芸術の秋。というわけではあるまいが、ととは絵を色々描いている。とにかく絵も好き。
ヨシコ秘蔵の水性マジックもどこからか引っ張り出してきて、メタメタに使いまくっていた。
ヨシコが自らの趣味に一日一ページずつ描こうと張り切って買ったミニスケッチブックも、見つけ出してあっという間にほとんどのページを埋めてしまった。
まあ、そんな奴ではあったが、先日は校内読書感想画コンクールで何だかの賞をいただいてきた、らしい。ヨシコはまだ作品の実物を見てはいなかったが、賞状だけ持ち帰ったととに、
「えらいね~! で、これ、何なの?」
と聞いてみたらととは
「しょうじょ」
と即答。一応、すごくうれしかったらしい。
やはり将来は画家……ヨシコの妄想は膨らみ続ける。




