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02

 地元の夏祭り。

 今年のとと、浴衣に着替えて妹と手をつなぎ、いそいそと歩いていく。

 だいぶ成長したなあ、と感心していたヨシコであったが、現地で暗がりの中急に爆竹が鳴り響いたのがきっかけになって急にグダグダと崩れ、結局はおんぶで帰ることとなった。



 その後は幼稚園の夏祭り。

 午後三時過ぎからすっかり暗くなるまで、数々の父兄の出店や盆踊りでにぎわうその祭りは毎年子どもらに大人気であった。


 妹も、すでに小2の兄も朝からそわそわ。それがととにも伝染して、昼過ぎにはヨシコの制止もきかず三人して幼稚園まで出かけてしまった。

 開始時間少し前に、バザー係を頼まれていたヨシコもようやく支度が出来て出発。


 夏祭りは盛況であった。

 夕方になって、やはり幼稚園の地元役員をしているじいちゃんがドタバタしていたヨシコに

「ととだけ置いて帰るから」

 と声をかけて帰っていった。

 ととだけ連れて帰る、となぜかご都合主義的に聞こえてしまったヨシコは、すっかり小僧らのことなぞうち忘れまたバザー会場に入る。

 一時間も過ぎた頃、簡単な仕掛花火があって祭りは終了。


 ようやく片付けに入った中、幼稚園の主任先生がニコニコしながらヨシコに言った。

「ととちゃん、花火が怖くて職員室に立てこもってますから~」

 ヨシコ、初めて、ととだけ残されていたのに気づく。

 焦って職員室に走って行き、見ると、しっかり耳をおさえたままのととはソファの上で丸くなってかたまっていた。

 やっと抱き上げると「こわい~」と小さな声。

 ほったらかしでごめんよ~、とぎゅっと抱きしめる。


 それにしてもじいちゃんが帰ってから2時間近く、きょうだいたちも自分の友だちと全然別の場所をほっつき歩いたらしく、ととは一人で一体どこで何してたのやら……

 口の傍にはべたりと焼き鳥のたれ、ケチャップなどついていたし、おもちゃの袋を手放さずに持っていたし、たまにヨシコが見かけた様子でも輪投げやくじもきょうだいと挑戦していたようだ。

 たぶん、その都度兄や妹、出店の担当の方々や通りすがりの顔見知りの人たちにお世話になりながら、いろいろと楽しんで歩いたのだろう。

 田舎ゆえ、周りが知った人ばかりでよかった、とヨシコは改めて安堵。


 十分に礼を述べて、ヨシコは夜道をゆっくりと歩いて帰る。

 背中のととはいつの間にか小さな身体をヨシコの背中に預け、ぐっすり眠っていた。

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