03
ととのせいではなく、ヨシコのうっかりであわや大事件、ということもたまに。
それはある秋の日の朝。
幼稚園に二人の子どもを送るべく、ヨシコは子どもらを車に乗せてあわただしく出発しようとしていた。
ととが後ろのドアを開けた音を聞きながら、助手席に妹・ぴかが乗ったのを確認。
バタン、とドアの閉まる音にヨシコは後ろをちらっと振りかえり、ミラーで後方・左右を確認、そして発進。
もうすぐ幼稚園というところで、お友達のお母さんに出会う。
あいさつするためにスピードを緩めたところ、そのお母さんは車をのぞき込んで不思議そうにこうたずねた。
「あれ、ととちゃんは?」
なぬ? ヨシコはがつんとブレーキを踏みこむ。
後ろを振り向くと、なんと車の中に彼がいない。二度見してもいない。本当にいない。
乗り込む時に確かに彼の姿を車内にみた、と思いこんでいた彼女。
何が何やら頭の中が真っ白に。
助手席の妹におそるおそる
「とと、乗ったよね~?」
と訊ねると彼女爽やかに答えていわく
「ううん。(助手席の)ドアを(外から)しめてくれて、バイバーイってしてくれた」
つまり、ヨシコは乗ったのを確認したようで全然確認してなかったのですね。
あせりまくったヨシコ、あわてて家にとってかえし、ととをさがす。
母と妹を見送ったととは、園服のままお隣のワンちゃんとたわむれておりました……。
めでたしめでたし。
ヨシコ猛反省の朝であった。




