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とと五歳・こんなヤツですが何か? 的な春 01

 とと画・はと

挿絵(By みてみん)

 ◇◇


 それはまだ春浅き頃。

 放浪の虫が騒ぎ始めると、もうどうにも収まらない少年・とと、5歳。


 母ヨシコは、少し油断をしておりました。

 幼稚園から一緒に帰ってきて、シャツの少し小さなボタンみっつを20分くらいかけてはめるのを最後まで見届け、しばらくは家の中で落ち着いて遊んでいたところまでは把握していたものの、ほんの束の間注意がそれて気づいた時には

「いない!?」

 放浪の虫は、気まぐれで。


 近ごろのブームはすぐお隣のお宅。

 こっそり出ていったとと、お隣に上がり込み仏壇を拝んできたのだそうな。

 お礼に、なのだろうか。隣家のおばあちゃんから、ふかし芋を大量にいただいてきた。


 数日後。

 ヨシコは庭に飛び出した。

 車のクラクションが長々と鳴っている。

 見ると、放浪の虫に操られたととが、いつの間にか車の中に。

 偶然クラクションにひじが乗ったらしく、気づいてから間もなく音は止んだが自分でもびっくりしている。

 つい

「中に入れぇぇっ」

 とヨシコ、持っていた箒の柄で頭をごつん。

 けんめいに涙をこらえて車から降りるとと。家の中に入ると、こらえていたものがどっと出たらしく、妹のぴかに抱きついて大泣き。3歳のぴかは

「はい、よしよし」と頭を抱えて彼をなぐさめている。


 夜、ととの子守りをじいちゃんにまかせて、ヨシコは6歳の兄・とらと妹のぴかとをお風呂に入れていた。どいつもこいつも「おかーさん、きてー」「あちいのー」などなど。

 ヨシコてんてこまい。そのスキにやられました。

 とと、じいちゃんのわずかな気の緩みをついて、なんと、暗がりの中プチ家出、行き先はまたもやお隣のおうち。

 隣のばあちゃんが手を引いて連れて来てくれたそうな。


 ◇◇


 ヨシコの住むナミキ家は7人家族。

 ヨシコの実の両親・寅蔵と梅、夫・ケイちゃん、子どもは上から6歳長男とら、5歳次男とと、そして長女が3歳のぴか。

 ととは、ダウン症。

 発達は遅く、歩き始めたのは2歳過ぎで、幼稚園の三年保育に入ってからもしばらくはベビーカーで通うほどのノンビリさ。

 しかし特に、心臓が悪いとか大きな合併症があるわけではない。他の子と同じように接し、育てていけばいいとかかりつけのお医者さまや療育関連のスタッフなど、周りからも色々とアドバイスを受けていた。

 ただ少しだけ、ていねいに。そして根気よく。

 それがヨシコにはやや、苦手な分野であった。ていねいに根気よく、というところが。

 健常の子どもならば1度言えば身につくこと、ダウン症児には、100回言って聞かせるのだと、その頃ヨシコは聞いていたが。

 まあ、30回くらいまでは、やってみようかな。と。


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