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AS(アクターステーション)  作者: ただっち
1章-入部編
5/5

演劇鑑賞その1

 土曜日になりました。

 結局あーだこーだ考えましたが、俺は舞台を見にやってきている。

 場所は中心街の小さな劇場である。

 俺が到着した時には、ほぼ満席に近い状態であった。

 流石は有名校の舞台である。


「えっと……キャストは……」


 と、取りあえず席に座り、パンフレットに目を通している。

 隣に座っている奥さん方はべらべらとしゃべっているし、小さい子が母親の静止を聞かずに走り回ったりしているという、この不思議な空間においても俺は冷静にパンフレットをじっと眺めている。

 正直言えば、周りの状況なんかどうでもよかった。

 周りに関心を持たないのが俺の個性なのかな?と思っているところも少しある。

 とにかく、パンフレットの内容を見ると、主人公は七海先輩(化学科3年)で、ヒロインは伊呂波先輩(化学科3年)という化学科コンビである。

 また、他の出演者は赤留戯先輩(化学科3年)、柊先輩(化学科2年)であったので、今回の劇は化学科による演劇になってしまっている。

 その状況をみて思わず目が点になってしまっているが、演出の欄に雷鳴先輩(電気科3年)の名前があったので、今回の劇はセットにも期待ができると言えよう。

 雷鳴先輩は、”電気科のナイチンゲール”と呼ばれるほど男性でありながら、たぐいまれなる優しさを持つ素晴らしい先輩であるのだが、裏方の仕事をする時の雷鳴先輩は、その異名とは裏腹に、鬼となってしまうのである。さながら、ジキルとハイドのようである。

 しかしながら、演劇部内で唯一、特定の資格を集めたものに与えられる勲章”ジュニアマイスターゴールド”を所持しているので、手先はかなり器用である。

 今回行われる演劇【挑戦者求ム‼ 演劇式ゲームバトル‼】のあらすじは、主人公が友人たちとヒロインを取り合う喜劇となっている。

 その具体的内容と言うのは、パンフレットには【情報解禁スルノハ劇場ニテ】と、古風な書き方になっている。

 これは余計に見てみたくなる感じである。


【ブ――――】


 と公演開始1分前のブザーが会場内に鳴り響いた。

 先ほどまで走り回っていた子供や、ぺちゃくちゃ喋り捲っていた奥様方も、一気に静かになった。

 そして、劇場正面の舞台の方へと顔を向け、丁寧に姿勢正しく座っている。

 俺も同様にきちんと座ることにした。

 そしてもちろん劇場内でのマナーであるので、携帯の電源は切ってある。

 その行動をとった直後にアナウンスが入る。

【本日はご来場いただき、誠にありがとうございます。 劇場内では他のお客様の妨げにならないように、携帯電話の電源をお切りいただき、ビデオ・カメラでの撮影は控えさせていただいております。 誠に申し訳ございませんが、ご配慮いただければ幸いです】

【それでは、挑戦者求ム‼ 演劇式ゲームバトル‼を開演させていただきます。 皆様どうぞお楽しみください】

【ブ―――――】


 と音が鳴り響き、会場が暗転した。

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