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ありすアリスAlice

ありす息抜き

作者: 左傘 蕨

ほのぼのとしてのんびりとした、これも有子ちゃんの日常。


 私の友達にものっそい小動物系美少女がいる。

 ふわふわニコニコ家庭的。あの子のお弁当はとても美味しい。お菓子に至ってはお金を取ったっていいと思う。


 そして彼女は……リア充だ。




 ♢




 クリスマスをもう直ぐに控えたある日のこと。


有子(ありす)ちゃん。あのさ……」

「何?」

「もう直ぐ……クリスマスじゃない?」


 私自慢の友人、友子ちゃんは顔を真っ赤にして少し俯いて膝の上に乗せたお弁当箱を握る手に少し力を入れた。勿論お弁当は彼女特製である。

 何だこいつ可愛すぎだろ。


 ちなみに私が箸でつついているのは昨日の夕食の残りの肉じゃが。

 醤油を入れすぎてちょっと辛い。これも、あにどもが料理してる時に暴れ始めるから……‼︎



 ちょっと黒いオーラを飛ばしていると正面に座った彼女がもじもじしながらなんとも可愛らしいことをおっしゃった。


「あのねクリスマスに×××××君(友子ちゃんの彼の名だ)にマフラーあげようと思うだけど……」


 ああもうこいつ可愛いな!


「うん、いいと思うよ。彼マフラーしてないしね」

「でもさ……その、迷惑、とかじゃないかな」


 なんていじらしい!

 こいつ私を悶えさせて殺す気か!


 ……けどきっと私の顔は変わってないんだろうなぁ。半分くらいしかあいてない濁った目に酷いクマ。つまり悲惨。



「迷惑なんかじゃないと思う。第一マフラーが迷惑なら毎日のお弁当はどうなの」


 そう、彼は毎日彼女お手製の愛情たっぷり弁当を食らっている。くそ。羨ましいな。


 彼女は目を見開いて、てれてれしはじめた。今度はなんだ。


「あれは……その。

 そ、それより!ほら、手作りのマフラーって……その、束縛?しちゃうみたいじゃない?」

「なに?そんなこと気にしてたの?」


 寧ろ彼は喜ぶのでは?勘だが。



「違うの。束縛は別にいいの。そうじゃなくて……その……」


 彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまう。

 つまり何が言いたいんだろう。別にいいなら作っちゃえばいいのに。


 すると、彼女は小さく零した。


「どうしたら、彼をもっとしばれるかな……」




 ♢




 やんでれ、とそう言われる人種がいることは知っている。

 好きすぎて相手を殺しちゃったり食べちゃったりする人らしい。まぁきっとこれは極端すぎる例だろうけれど。


 でも、相手が大好きで大好きで仕方なくてしばったり、相手がいないと生きていけなくなったり。そういうのは別に病んでいる、というわけじゃないと私は思う。


 誰だってきっとそう。


 恋をすれば自分以外を見て欲しくない、なんてきっと普通の感情でしょう。相手がいないとどうしょうもないのはきっとその延長線でしかない。所謂当たり前。そう思わない人間が数えうる限り何人いるだろう。


 だから、私は病んでいる、と言って盲目的にそういう人を否定する人にがどうしても滑稽に見えてしょうがない。どうせそういう人だって恋したり誰かを愛せばそうなるっていうのに。





 さて。

 ここまで言って、何が言いたいかというと私の可愛い可愛い友人、友子ちゃんのことだ。ちなみに今日はクリスマスの次の次の日くらい。



 彼女は毎日彼氏にお弁当を作っている。

 これは周りの女子に対する"牽制"でもある。これは私のものだ、と周りに示す行為。

 そして何よりそのお弁当には……彼女のかけらが入っているらしい。血だとか、なんとか?本人曰く。

 可愛い顔してやることは結構本気。


 更にマフラー。クリスマスにあげたの。と幸せそうな声で電話がかかってきた。

 聞くところによるとほんの少しだが彼女の髪の毛が混じっているんだとか。

 ……そこまで好きか友子ちゃん。




 そんなことより、何より特筆すべきなのは……彼女が全くの無意識だということ。

 お弁当を渡すのは、喜んでくれるから。

 お弁当に血が混じるのは、あれだ。eat me 的な。

 マフラーに髪の毛が混じるのはいつでも一緒。


 そういうことを、彼女は当たり前だと思っている。

 好きだから、当たり前だと。



 きっと、端からみたら可笑しい、と言われるのだろう。少なくとも彼女に私の他にあまり友人がいないのはそのせいだ。


 けれど、私はとても一途で可愛らしいただの恋する乙女にしか見えない。

 友子ちゃんマジ可愛い。


 それに……彼女も彼女の彼氏も。どっちも幸せそうだし誰にも迷惑かけてない。もしかしたらリア充の破滅を願う人から見れば殺意を覚えるかもしれないけれど……。

 それなら、別にいまのままで構わないと思うんだよね。



 ……。

 いや、別に、ね。現実逃避してるわけじゃないんだよ。

 背中に張り付いた義兄を思いから邪魔だなぁなんて思ってないし、義兄の背中にこれまた張り付いた兄のせいで私が潰れてしにそうだなんて知らないし。

 うん。ちょっと、あれだな。




 少なくとも、友子ちゃんはらぶとかわけわからんこと叫んで私の夕飯作ってる途中に邪魔してくる迷惑な奴らじゃないし。

 可愛いし、癒しだし。嫁に欲しいし。


 とりあえず友子ちゃん可笑しいとか言っていじめようとした女子とちょっと脅迫(おはなし)して疲れた私にこれ以上負荷をかけるとか……。あにたちまじで果てろ。



「ねぇ二人とも……」


 後ろの二人がぴくり、とかたまる。


「邪魔だああああああああ‼︎」




 ♢




 とりあえず私の邪魔をしない素敵なお嫁さん募集中です。



けれどどうやら彼女の周りにはこういう人が集まりやすいようです。

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