煌めきの洞窟
洞窟からの果てない声に吸い込まれる
静寂と平坦と魅惑の入り口が
今日も高らかにベルカントでうたう
太陽の猛毒は封じられた
妬きコロされる赤い落陽も産まれない
けれどここに闇は存在しない
宝石のようにまばゆい光が大輪の花のようにひらく
木星に浮かびあがったオーロラのように光は揺れる
讃美のうたが、尊崇のうたが、内から鳴り響く
コロラトゥーラの飛沫が透き通る水を転がり拾って弾む
水は眩しさを含み潤いはアダージョに輝きを留めて潜む
冷気がうたを高貴に舞い上がらせしなやかに震わせる
無風は押し付けない優しさとなりただ美しいとうたう
ここには闇はない
とめどなくここに居続ける光
奥深く進めば極彩色はレクイエムをうたうのだろうか
見えない出口
これ以上進めはしないと足が頷く
いつからか誘う、誘われる
いつまでも引きずる、引きずられる
静寂と平坦と魅惑の輝きを、煌めきを、讚美のうたを
入り口から夜更けに這い出す
極々小さな月の明かり
歪な欠片の星屑の光
抱く濃紺の空を見上げる
ぬるい風は悪戯に頬を拭う