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202号室  作者: 紫雨
番外編
9/16

YOU ARE MY FIRST!

番外編が始まります。



「何コレなつかしー!」


 ファイルの整理のため、引越してきた時に色々詰め込んだ段ボールの中をあさっていたある日のこと。

 幼稚園の“卒園文集”為るモノが、その奥から出て来た。


 片付けとか始めると、こうやって懐かしいモノとか面白いモノとか見つけちゃって、読み耽って結局は全然進まないんだよね。

 そんなことを思いながら、勿論その通りに、私はパラパラと文集を開く。

 小学校や中学校の文集とは違って、卒園アルバムも兼ねた数十ページの冊子。

 パラパラとめくっていると一枚の紙きれが挟まっていた。


「―――すき…、きらい…?」


 “すき”と書かれた文字の下には、順位らしき数字が5つとその横に並ぶ5人の名前。



「5い、ひろしくん…」


 ああ、そういえば。

 男の子たちに追いかけられていた時に、“女の子をいじめるなっ!”って、両手を広げて庇うように守ってくれた、ヒーローみたいな男の子がいたっけ。

 それが確かヒロシ君。小学校が違ったから、卒園の時以来会ってないけれど、幼稚園児ながらにときめいてしまったのを覚えてる。どんな大人に、なったのかな。



「きらい 2い せいじくん……」


 この子、覚えてる。組1番の、スカートめくりの常習犯!

 だから女の子たちは毎日、その子から逃げていた。

 私もスカートを股に挟んで、「ズボンだもん!」なんてごまかしたっけ。

 それで騙されてたよなあ、セイジ君。




 他にも色々な子の名前が書いてあった。

 こんな風にエピソードまで思い出せる人もいれば、いたっけ?って子もいた。


 でも、“すき”の1番はやっぱり――――






「皆実ー、入るぞ」


 コンコンとドアを叩く音がして、返事も待たずに圭祐が部屋に入って来た。

 それも割といつものことなので、私もあまり気にしない。



「飯出来たぞ―――…って、何笑ってんの?」

「うん。圭祐ってば、私の1番を総ナメだなーと思って」

「何?あーソレ文集?」

「うん」

「懐かしーな。何が1番って?」

「コレ。この時の私の好きな子嫌いな子ランキングベスト5」



 私は圭祐に、その紙きれを差し出した。

 それを見て、ざっと目を通してから、圭祐は噴き出した。



「何だコレ!こんなん書いてたのかよオマエ」

「可愛いでしょー」

「可愛い可愛い」

「……」

「や、本当だって」



 棒読み+鼻で笑った彼を、じとっ、と睨みつけたら、笑いながらフォローをする。まあいいんだけど。




「おーオレ1位!さすが!」

「まずコレで圭祐は1番でしょー、初恋だからそれも1番。」

「うんうん、そんで?」

「手を繋いだのも1番、ラブレターだって1番多く書いたし、バレンタインデーも1番にあげてた。それに1番泣かされたー」

「そーだっけ?」

「そーだよ!」

「1番殴られた覚えはあるけど…」

「これからも増やせるよ?」

「や、まじ勘弁して下さい。」


 両手をあげて降参のポーズをする彼を見て、優位に立った私は握った拳の力を抜いた。



「1番の親友だし、今1番近くにいる人。」

「総ナメだな。」

「きっと私が誰かと結婚しても、圭祐には“1番”は敵わないんじゃないかなあ。」

「確かにな、殿堂入りだ」

「名誉なことだぞ、自信を持て」

「…何で偉そうなんだよ」


 ポン、と圭祐の肩を叩いたら、不服そうな声が返って来た。


「てかゴメン、何の用だったっけ?」

「はっ!そうだ飯!オレの力作が冷める!」



 ふと時計を見ると1時を回っていた。そういえばお腹も空いてきた。

 リビングから、美味しそうな香りが漂ってることに今更気付いた。


「この匂い!肉じゃが!」

「中々の出来だぞ、早く食おうぜ」

「わーい!」



 両手を高くあげてバンザイをして、私たちは良い香りのする方へと向かった。



「いただきまーす」

「昼飯ちゃんと作るの久しぶりだなー」

「ね。揃ってお昼食べるのも。」

「せっかくの休みだ。そうだ、映画でも行くか?」

「いーねえ!何観る?」

「今といえばアレだろ……」



 あれやこれやと映画のタイトルを言い合って、一つのものに決定する。


 口の中で広がる肉じゃがの味が、幸せを運んでくれるみたい。自然と頬が緩む。



「…あ、あと一個あった」

「んー?」

「圭祐の作る肉じゃがが、世界で1番美味しい。」







これは特に、時系列とか考えずに作ってます。いつの話でしょうか…。

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