02話 小さな変化
杳は、圭祐のことをすきになったみたいだった。
それはこの間の対面の彼女の反応からだけじゃなくても、手にとるようにわかった。
あれからというもの、彼女は圭祐の話ばかりをするから。
「ねえねッ、血液型は?」
「B」
「わァ、あたしB型の男の子って好きだなァ!ねね、ケーキとか好き?クッキーは?」
「―――杳ちゃん、そんなの本人に聞けば?またお昼誘えばいいじゃない。この前一緒に食べたんでしょう?」
止まらない杳の口に、私よりも先にストップをかけたのは親友の真井だった。
この間はいなかったけれど、高校から一緒で、圭祐のこともよく知る人だ。
「そっかァ、!圭祐くん達だッ!呼んで来るねーッ!」
食堂を歩く圭祐たちを見つけた杳は、一目散に彼らの元へ走って行った。
「すごいね、あの子」
「…お尻に尻尾が見えるよね…」
「この前からずっとあんな調子?」
ず…、とストローで音をたてながら頷いた私を見て、私苦手だなぁ…と真井は呟いていた。
私も、あんな杳は得意ではない。ていうか、彼女がああなったのも、あの日からで……それまではこんな子だとは知らなかった。ああ、恋ってオソロシイ。
「皆実、武仲とられちゃうね」
「だーかーらっ、そんなんじゃ――」
「わかってるって。あんた達の仲の良さは十分承知よ。でもどっちにしろ同じことでしょ?あんたたちは今、一緒に暮らしてんだから」
真井が遠回しに、言いたいことはわかる。
圭祐に彼女ができるということは、私のポジションはとても危うい。今まで、ただ仲が良いという関係だけでは、済まされないことだと思うから。
「……………」
ずず…と、氷しか入ってないジュースを吸った。
昔から、圭祐は何かとモテていた。
私はそれをずっと見てきた、彼に1番近い存在として。
あるときはねたまれたり、相談されたり。
だからこういうことには慣れているつもりだったけど、大学に入って一緒に暮らし始めてからは初めてのことだった。
「連れてきたよーっ♪」
杳が戻って来た。圭祐の腕に手を回して、随分とご機嫌な様子だ。
(………そんなにすぐ、くっついちゃわないよね)
そう思って、自分の中で解決をした。心の奥で生まれた、少しの気持ち悪さを押し込めて。