喧嘩しない程仲が良い?~皆実の場合~
小話的な。皆実の場合と、圭祐の場合の、2パターンです。
「皆実と圭祐君ってさ、喧嘩とかしないの?」
「へ?」
ある日のランチタイムのこと。あの時以来、杳の口から久しぶりに聞いた圭祐の話題だった。
「だって毎日顔合わせてんのに…喧嘩とか大変じゃん。ないの?」
「ん~…」
考えてみれば。
圭祐と喧嘩したなんて記憶は見つからない。
「幼稚園くらいなら…してたかもだけど覚えてないなあ」
多分次の朝会ったら普通に“おはよう”パターンだろうけど。
「幼稚園ン~?それ以外なかったの?!」
「ん?うーん……」
喧嘩って、そういえば、どんなのを言うんだろう。
相手に腹が立って、もう顔も見たくない!とか?
じゃあ一緒に暮らしてて喧嘩したら、確かに大変だ。
「あのさぁ、あたし、二人が仲良しなのはもう認めたんだけど………、皆実、圭祐君の嫌なトコとかないの?」
「嫌な………?」
少し、考えてみる。
私は彼を幼稚園の頃から知ってるし、女の子の中ではきっと、1番近い存在として彼を見てきたと思っている。
だから誰よりも、分かっているはず。
なのに、嫌なトコって言われても、ぱっと浮かんで来ない。
「…………ゴキブリ?」
「え?」
「ゴキブリ一人で退治出来ないトコは嫌かな」
「圭祐くんゴキブリ駄目なの?」
「うん、凄いよ。多分杳も、100年の恋も覚めるであろう怯えっぷり」
「み、見てみたい………っ」
引くかと思っていたのに、意外にも杳は目をキラキラと輝かせた。
……近いうちに学校でゴキブリを見る予感がした。
「他には?」
「入浴剤をお風呂に入れると怒る」
「………他は?」
「ノックの返事を待たずにドアを開けること。アレ時々ムカつく」
「……………なぁんかさ、皆実」
「ん?」
「全部たいしたことじゃないね」
「うん、私もそう思った」
「………もうホントに何なのよアンタ達…」
杳はわざとらしく、はああと盛大な溜息をついた。
嫌なトコは、きっとあるんだろうけど、いざ言ってみてって言われると、簡単には浮かばない程度である。
それは多分、それ以上にたくさん、良いトコも知ってるから。
だから全部受け入れる、分かってあげられるし、きっと圭祐だって同じなんだと思える。
- 喧嘩しない程仲が良い? -
「…杳、圭祐のこといつ諦めたの?」
「ついさっき、完璧にね!」
(皆実の場合、おしまい)
次は圭祐の場合。




