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クラッド  作者: 僕。
序章
2/15

第2話 想いの剣

 俺は待っていたらしい、俺は赴こうとしている、俺を待っている血塗られた運命が…。

ギン

 1

 冷多が剣を構えると風を切り裂く音が響く、この金属音が冷多とギンの戦いの始まりの合図のように、ギンも拾った剣を構える、その剣は濡れた様な輝きを放つ片刃の刀だった。だが刀と言うには少し洋風で様々な所に装飾が付けられている。刃渡り九〇センチ程の刀で少し細身の剣だ。

 剣を観察していると冷多が緊張をほぐす為か話しかけた。 

「ん?どした?」

「あんた、俺と戦ってもイミねぇだろ」

「今ここで戦わなくてもクラッドとやらは使えて、そんで惑星へは行けんだろ」

 まあまだ完全には信じてねぇがな、と言葉を加えた彼の目の前に突然何かが近寄ってくる気配がした。冷多が居て剣をギンの頭目掛けて振り下ろして来ていた。そこから感じたのは強烈な殺気だった。

「くっ!!!!」

 冷や汗が頭から額に滴り落ちていた。辛うじて冷多の剣を自分の剣で受け止められた。だが

「うあっ!!!!!」

 カランと乾いた音がした。細身の剣が地面に落ちていた。それと共に赤黒いものが一滴、二滴、血が剣を握っていた右手からこぼれ落ちている、冷多の一撃で右手の皮膚が裂け血を滴らせていたのだ。

「残念や、まだ…決意は整ってないんやな、そんなんで恋人…救うなんて永劫ムリや」

 剣を落としたギンを冷徹な言葉とともに斬り払った。右肩から脇腹までとても深い斬り口から大量の血が溢れ、倒れる。


 こいつ、強すぎる。


 頭で感じる前に身体の全てがそう感じた。ギンは剣技世界大会でベスト十〇位に入る程の剣豪だった。それほどの自身と余裕があった。だがたった二振りで大量出血し、地面に伏せて転がっているのだ。

「分かった?君の剣は軽すぎる、ボクの剣は重く感じたやろ」

 ギンの視界のなかに冷多の剣が写っていた。その剣に写っていたのは敗北や苦痛に苦しむ自分の顔だった。絶望にも似ていた。そういえばコイツの剣はとても重かった。剣自体の重量の問題ではない。剣の重量なら自分の剣とさほど変わらない筈だ。

「まだ…立つん?キミ理解したんじゃないの?キミの力じゃ絶対勝てないって」

 立ち上がっていた。動かない身体を無理矢理動かして。激痛はまだ身体中を迸り警告をしていた。安息と治療を要求している。それを無理矢理無視して話す。

「理解…はした…決意も…してない、だ…けどこれだけは…言える」

 皮膚の裂けた右手で剣を握る、その手から血が滴る。胸からも血があふれていた。そして全ての力を振り絞り叫んだ。

「お前を倒す!!!!!」

「なんやキミは?もう限界で立ち上がることも」

 そう驚く冷多にギンは間合いを限界まで詰め斬り掛かった。

「うおおおおぉぉぉぉっ!!」

 カキィンと金属音が響き冷多の剣に剣閃を響かせる。斬る事は出来なかったがこれならいけるとボロボロの身体を無理矢理制御しながら思った。だがギンの剣を受け止めた冷多はまた同じ事を言った。

「まだ…軽い」

「なんでキミの剣が軽いか…教えてやろか?」

 ギンの剣を軽々しく振り払った。ギンの身体がこれでまた隙だらけになった。

「その剣でなく」

 ギンはもう一度体勢を整えそして右足を軸にして回転しながら斬りつけるが見事に払われた。

「剣に乗せる想いが軽いからや」

 そして二度目の斬撃を喰らった。だが今回は擦っただけでまだ動く事は出来る。

「ハァ…ハァ、想いだと?…お前を倒す事か?」

「違う…ボクを倒すだけのその場の決意じゃないんや」

 じゃあ何を決意して戦えば良いのか、解らなかった。

「ボクはたった一人の人を護りたい…それを信じて戦ってるんや」

 じゃあギンは何を護れば良いのか苦悶した。

(俺の護りたくて、救いたいのは…)

 四度目、五度目と斬られそのまま倒れそうになり意識を完全に失いかけた時、頭の中をとても大切な人の姿が浮かんだ。


 最初で、最後の恋人


「俺は、必ず!!」

 倒れそうになった身体を元の体勢に戻す為大きく右足を踏み込みつつ、重心が前に乗りかかった所で踏み込んだ右足で地面を蹴り、突進した。その時のスピードは今までで一番速かった。人間が繰り出せるような速さではない。

「っ!!」

冷多は目を見開いた、その速さに対応しきれず身構えた所を、ギンの勢いをのせた最大の一撃が繰り出された。


 助けるんだ!!


 剣と剣が衝突する。今までとは違い鈍い鉄の割れる様な轟音が響いた。火花を散らしながらギンが振り抜くと冷多の剣が破壊しその刃の半分が冷多とギンの間を落ちた。そしてそのままギンの剣が冷多を斬りつけた。冷多は腹から血が飛びそのまま地面に崩れ落ちた。

「試験…合格や」

 その口は笑みをたたえていた。だが冷多の言葉はすでにギンの耳には届いていなかった。

「ホールドルームから出たら全回復するけど。ホンマにボクより重い剣やなぁ」

関心した。と冷多は回復のためホールドルームから出る為に立ち上がる。

「でも…キミの戦いはまだ始まってもないんやで」


「なあ、ハルデュ」

                   


とってもお待たせしました。二話も御付き合いいただき有り難うございます。また三話も読んで頂ければ幸いです。

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