第12話 レンとの出会い
新登場人物
レン・ナージャ
リョウの弟、魔力を使った射撃を得意とする。純粋な戦闘担当
1
「ギン!!そっちいったぞ!!」
ガイの声が聞こえる、その方向に剣を構えながら振り向くと、小型の魔物『ウルフオウガ』が高々と舞い上がった。
頭上の『オウガウルフ』に剣を腰に構え、両手の力を込め押し上げる力で叩くように斬る。
最後の一匹は、あっけなく地面に横倒しなり、動かなくなった。
「ふぅ、これで最後か」
「仕事、慣れたか?」
「そうだな、最初の依頼はハード過ぎたんだけど」
「ハハハっ!俺なんかボロボロにやられちまったよ」
屈託の無い表情で笑うガイ。
ガイは、黒魔導士に負けて大ケガをしていたが、5日程かかったが回復魔法のおかげで復帰できた。
俺もかなりボロボロで1日ずっと眠っていたらしい。起きたら小さな一軒家に居て、驚いたもんだ。レイザスが国からの口止め料の代わりにギンに家をやってくれ、と頼んだらしい。
それはなかなか快適な家で、この世界で暮らすのも悪くないかもしれない、と思っていた。
それで、禁呪の依頼から一週間、色んな依頼をやってきているという事だ。
今回受けたのはデュルト平原の西側での依頼。獣系の魔物の『オウガウルフ』の群れを討伐する依頼だった。
報酬もなかなかだったので、ひとりで行こうとしたが、新人の内は人命保護優先されているので最低でもパートナーを連れて行かなければ行けない。という事なので復帰したばかりのガイと一緒に行く事になった。
ガイは連携が上手いので、新人育成にもたびたび選ばれるらしい。それでもキャリアは二年程、結構やり手らしい。
他のメンバー達は別の依頼に出かけたり、家でくつろいでいたりする。
ミレウは「修行」とかいって大型の魔物の依頼に出かけていた。
ソフィアは宝石採掘の依頼に出ている。みやげに宝石あげるとかいってたな。
レイザスさんはきっと家でくつろいでいる。
ギンの知ってる方のソフィアを探す事については、世界が広すぎるのでまだ先の話しかもしれない。だが光明は見えた。とある町に、名前登録魔法端末が存在している、名簿が記録された政府管理の端末で、捜索願いを出せばたちまち見つけてくれるかもしれない。しかし簡単には了承してくれない。
名簿には、ジルの街のソフィアしかいないのだ。
出産時には必ず名簿に書き込まれ、魔法端末に管理されている。また住民権をとった人間もそうだ。
ギンもギルド入会時に登録されたから、端末に書き込まれている。
ということは『冷多のウソ』か『ソフィが登録されていない』ということなのだろう。
考えを巡らしているとガイが声をかけてくる。
「まぁ、お疲れさん。あんたなかなかすごいな」
黒魔導士も倒したらしいじゃんか。
「まぁ、おれは自分の世界ではエリートだったからな」
ニヤリ
「お前の方の世界って、ギルドとか魔物とかいないんだっけ?魔法すらないとか」
不便だなぁ、と呟くガイ
俺が異世界からの住人だという事は皆にも周知の事実だ、レイザスがパーティの皆にバラした。皆エリート発言を無視するのはエリートが如何に優れているのかを理解してないからだ!というと
『うわぁ....ドン引き』
ソフィアにそう全否定されても、俺はいつか分からせてやる、エリートの素晴らしさ、というヤツを!!
「声に出てるぞ、ギン」
笑われた。
「どっからでてた?」
「俺はいつか分からせてやる!エリー...」
「ちょ、ストップ!!」
帰りの馬車の中で騒ぐふたり、なぜかやるべき事を忘れてしまうギンだった。
2
自宅に帰ったギンは、地球救済│(笑)の方法について考えていた。
地球の崩壊を止める分子か...。
それについては後にやってくるサパート役が来て教えてくれるらしい。
地球から持ってきた端末を眺めながらベットを転がるギン。この端末はクラッドの力を応用して作った携帯で、冷多達から随時連絡がやってくる。
だが、こちらからは連絡は出来ないので、時空を使って改良版を持ったサパート役がもってくるみたいだ。
時空を使うという事は、きっと未来に作った端末を現代に送るという事なんだろう。タイムマシンってヤバ過ぎる。
「未来技術で崩壊は救えないのかは、無理なのか...」
未来からの干渉で、過去を変える事は不可能らしい。だが分子は別らしく、時空間に干渉していないもので、分子を用いれば過去を変えられる。
といった事なんだ。
分子を使って崩壊を止める方法は、崩壊時に分子を投与すれば、崩壊臨界手前で留保できる。
三十年も先の話だが、クラッドのタイムマシン機能を使えばなんて事も無いみたいだ。
きっと俺はやれるだろう。この世界も気に入ったし、まずは帰れるようにさっさとクラッドを見つければ問題ない。
「よし、買い物でもいくか」
考えるのはやめにして、今日の夕飯の食材でも買おうかな?と財布を確認した。
3
まずギンは工房に向かう。
とってきた鉱石や、『オウガウルフ』の皮とかで、防具を強化しようとしていた。
熱気のこもる工房に入り突き当たりのカウンターに行くと、いつもの親分ではなく
「いらっしゃいませ!」
笑顔の受付嬢がいた。かなり暑いので、彼女の頰を汗が滑り落ちている。
「ご注文は、どちらにしましょうか?」
受付嬢の手のひらには、完成品のレシピ書と、加工作成のレシピ書、強化加工のレシピ書が置いてある。
「これで」
ギンは汗を拭いながら強化加工の書を指指す。
ガンガンと鉄を叩く音が聞こえる、ごうごうとした熱気の中、受付嬢はレシピを開く。
ギンは持っている素材を手渡すと、これならどうでしょうと金額を書き込みギンに見せる。
「これでいいです。│(高っ)」
笑顔のままの受付嬢は申し訳なさそうにしていたが気にしない。
「最近、武具の発注が多くて、大変なんですよね」
「なんかあるんですか?」
「それはわかりませんねぇ」
と受付嬢が言った時に、後ろから声がした
「大規模な作戦が展開されるからですね」
後ろを振り向くと、少年が立っていた。
青白い肌、緩やかなウェーブを描く黒髪、オレンジ色で少女の様な大きな瞳。中性的な顔立ち。身長はギンと同じくらいだが、少し低め。
「貴方、ギルドに配属している方ですよね?」
その声も、中性的な声だった。男と言われても女だといっても納得できる。
ファッションも中性的で、なんだが判断がつきにくい。
「最近加入したばかりです」
世界が違っても敬語は心がける、礼儀だ。
「そうなんですか、僕も昨日加入したばかりですので、先輩ですね」
「あっ、自己紹介してませんでしたね。ぼくはレン、レン・ナージャです」
「宮内吟です、よろしく」
ギルドのカードである身分証をレンに差し出す。
「あっ、っと僕も出さないと」
「の前にまずは用事を済ませてからにしましょう」
レンの言葉に従い、防具と武器の強化を依頼しレンも用事を済ませ、カウンター隣のベンチに腰をおろす。
「ここ、とても暑いですよね」
レンの顔を汗が滴る。ギンも体中汗ばんでいる。
身分証を差し出すレン
「改めて、ご一緒する機会があればよろしくお願いします!」
「うん、よろしく」
「ところで、作戦ってのは一体なんなんだ?」
「うーん、まだいろいろ知らないけど、魔物の群れを掃討する集団依頼が発注されたらしいですよ」
「集団依頼?」
「集団依頼はギルドのメンバーほぼ全員に出撃要請が出る国からの依頼の事です」
報酬もひとりひとりに結構いい額払われるらしい。
「へぇ」
「でも一体どんな依頼なんでしょうね。」
「国が動く程って、結構大きな依頼なんじゃないか?」
「きっとそうでしょうね」
受付嬢に呼ばれる、混み合っているのでどうやら完成は明日になるらしく、受注証明のカードを手渡された。
「さて、僕もここにもう用はないので、さよならだね」
「ああ、また」
4
「な、何だッって!?」
「ですから物資不足でして」
「何ぃ!!!?」
ギンは驚愕した、今日はポテトサラダとパスタにしようとしたが。
「なんでポテトとパスタ麺がこんなに高いんですか!!?」
物資不足!?
俺を殺す気か!?
工房で金使ったから、一週間ずっとハードな仕事しないと生きていけねぇ!!
エリートは人生初の金不足に直面していた。
もういっそこの世界でも会社でも起こすべきかもしれない。
それの方が楽かも。
「じゃ、これとこの野菜でいいです....」
ショボショボと自宅に消えていくギン。
パスタはおいしかったけど、いいドレッシッングが買えなくて、エリートのギンにはふさわしくないビミョーな味でした。
レンとは某神速、連撃狩猟ゲーからとってきた子です。
うん、まんまですね。
気をつけます。
それはさておき、新章です。
こちらは全章のようなgdgdな事にならないようにしたいと思います。
応援よろしくお願いします。